過疎の村に移住してきた「金アレルギー」の若者
この作品を読む前にいがらしみきお先生の「Sink」と「羊の木」を読んだので、コメディっぽいけど途中から怖い話になるんじゃないかとヒヤヒヤしながら読んでましたが、怖い話ではありませんでした。読後に先生のインタビューを読んだら連載前に担当さんから「限定された場所でのファンタジーを描いて欲しい」と提案されて描いたとおっしゃていたのでなるほどな〜と思いました。これはファンタジーですね。そうと分かると松尾スズキ監督の映画がめっちゃ観たくなってきました。私は前半の雪かきしたら屋根が抜けちゃった場面で大笑いしました。
東北のとある秘密の隠された村に、都会育ちの主人公が移住してみた〜というノリのお話です。主人公をはじめ、とにかく癖の強い人ばかり出てくるので、読み進める内に登場人物たちの人となりや過去の出来事が気になり、いつの間にか作品世界に引き込まれていきます。一人ひとりに過去があり、それぞれが悩みを抱えながら生きているんだな〜という、非常にありきたりな感想になってしまいますが、これだけの人間模様を正面から描き切ったいがらしみきお先生に脱帽です。読み終えると、小さな悩みがまとめてどこかに行ってしまったような、少し心が広くなったような気持ちになれました。漫画に登場する”神様”の意味とかも、あまり深く考察せずに読むことをおすすめします。