![望郷太郎](https://res.cloudinary.com/hstqcxa7w/image/fetch/c_fit,f_auto,fl_lossy,h_160,q_auto,w_160/https://manba-storage-production.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/uploads/book/regular_thumbnail/301381/b9b8c12e-5957-4d94-b3d8-e3f749a92957.jpg)
「ただそれだけの話です」
一巻無料でなんとなく読んだら、なにこれ、すごくおもしろい。 あはは、でなくて、興味深いほうのおもしろさ。 帰宅した主人公。 玄関を開けて出てきた美人さんに対して主人公のモノローグ。 ――嫁です。 ページをめくって、追加モノローグ。 ――兄の嫁です。 この流れに、グッと心を持っていかれた。 その前に兄が死んだ話をされている。 それでも兄の嫁と、兄との思い出を語り合いつつ暮らしている。 ――両親は昔 死んで 兄も半年前に死んで ――今は 兄の嫁と 暮らしています ――ただ それだけの話です 主人公のモノローグはたんたんとしている。 なんてことない日常が綴られているのに、少し歪な関係が加わるせいで、相手を利用していると罪悪感が端々からこぼれてしまう。 幸せそうにしているのに、どこかうまくいってない。 うまくいってるように思えると、出てくる亡くなった兄の影。 ふたりとも、喪失感を受け入れないといけない。 一巻まで読んだところだと、幸せな日常に見えてどこか欠けていてつらい。 あらすじに「日常センシティブストーリー」と聞き慣れない単語があるのは、この気持ちをあらわしているんだろうか。
近くて遠い、遠いようで近い、義姉との同居を描いたハートフル日常漫画。代表作に「犬神さんと猫山さん」などの百合作品があるので、女子の二人暮らしを描く本作品もそうかと思いきや、心温まる家族愛にがっつり感動させられる話だった。
ヤングガンガンらしい美麗な絵でとても読みやすく、現代的で尊みの深い人物描写はさすが。主人公の女子高生・志乃はしっかり者だが性格的に不器用なところがあり、そのまま男子に置き換えても一見成立しそうではあるが、彼女と兄の嫁(未亡人)の希さんと織りなす柔らかな関係性と雰囲気はなるほど確かに男女もしくは男同士では作れないかもしれない。百合作家ならではの、きらら的萌え漫画にはない味がある。