もし、人の心が何かと入れ替わったら? 彼はある日を境に別人になってしまった……。たまたま庭に迷い込んできた猫にエサをあげたことから、景子のまわりでは不思議な現象が起こるようになる。それは徐々に広がっていき、ついには愛する家族までも……。表題作ほか、代々伝わるふたごの呪いに苦しむ一族を描いた『たった1人のふたご』など、人々にしのびよる悪夢のような現実を描く、怪奇と恐怖のミステリー!! 全5作を収録。
紅い帆船と恐れられるカリブ海の海賊の船長は、ある日、海に漂流する小舟から赤ん坊を救う。金髪の可愛らしい女の赤ん坊をエンジェルと名付け、自分の子供として育てた船長だが、成長するに従い、男顔負けの強者になっていくエンジェルに頭を抱える。そのエンジェルは父と信じて疑わない船長の跡を継ぎ、カリブ海の海賊・紅い帆船の船長になることを夢見るが…。
夢魔──。それはスキをみせた弱い人間の夢に入り込み、その人を悪夢でがんじがらめにして死に追いやるという。親友・ユッコの交通事故をきっかけに、恐怖に彩られた悪夢の迷路に踏み込んでしまった17歳の女子高生、可奈。その暗黒世界で出会った少年は“夢魔”の恐ろしさを訴え、消えてしまった。信じられない体験を繰り返す可奈。そして可奈のまわりでは次々と不気味な事件が起きていく……。曽祢まさこが贈る異次元ワールド。
直美の心の底に蘇る、鮮やかに咲く夾竹桃(きょうちくとう)。その花を手にする時、あの人への復讐のドラマが始まる。欠落した直美の記憶、そこには……!?表題作他、「女郎蜘蛛」、三村尚原作「永遠の糸車」を収録。
チンピラチームにケンカを売られた少年・喬(たかし)は、瀕死の状態に陥った時、夢の中で謎の美少女と出会う。その後、病院で意識を取り戻した喬は、自分と一緒にチンピラチームの暴力を受けた先輩・吉住(よしずみ)が、死亡したと知らされて悲しみに暮れる。そして隣の患者から、この病院では幽霊が出ると教えられた喬は、嵐の夜、吉住の幽霊を目撃して……!?
父の会社で働く留奈(るな)は、社員が次々と無気力になっていくのに気がついた。どうやら奥さま方の浮気が原因……と、留奈は独身社員の中村くんと偽装結婚して探ってみるが……!?表題作のほか、思わずゾクッとする「闇の饗宴(きょうえん)」など収録。
病弱な令嬢・露子(つゆこ)に起こる悲劇を描いた表題作と他5作品を収録した宮脇明子の傑作短編集。戦時中の昭和初期、もの悲しいピアノ曲「幻想ポロネーズ」が流れる九条家の前で、インコを捕まえた少年・末広(すえひろ)は、インコを探す九条家当主の孫娘・露子と出会う。そして数日後、九条家当主である祖父を亡くした露子は、祖父の後妻・藤子(とうこ)と一緒に暮らす事になるのだが……!?
優等生のクラス委員・妹尾環(せのお・たまき)は、同級生の都築(つづき)への恋心を隠しながら高校生活を送っていた。そんなある日、同じクラスの武之内小夜子(たけのうち・さよこ)がなんだか気になる環は、体育の時間に倒れて保健室に運ばれた小夜子が、夢にうなされながら「田中さん、危ない、逃げて…」とつぶやくのを聞く。その直後、ボールを追いかけて外に出た田中が、交通事故に遭ってしまい……!?
邪悪な魂に取り憑かれた美少女とそんな彼女を愛した青年の哀しい恋愛を描いた表題作と他2作を収録した柴田昌弘のサスペンス傑作集。土砂降りの中、男達から追われる少女・楢川彩(ならかわ・あや)を匿い、自分のアパートへ連れてきた殿谷周二(とのや・しゅうじ)。そして8人もの人間を殺した殺人鬼に仕立てられ、子々母村の男達から追われていたと告白する彩は、自分を信じてほしいと涙ながらに周二へ訴えるのだが……!?
動物研究所の中で、仲の良い兄妹のように育った蒼(そう)と羽純(はずみ)。アイススケートが得意な蒼と、人形が好きな羽純は、平凡ながら幸せな日々を過ごしていた。だが、ある晩に蒼の瞳が得体の知れない光を宿し、研究所で飼育されていた犬たちが突然暴れ出す。その騒ぎの中で蒼は行方不明になり、羽純の父親は命を落としてしまった。それから4年、高校生になった羽純は雑誌記事でフィギュアスケートの新鋭「佐野夢解(さのゆめとき)」の顔写真を見つけた。その顔、その眼差しは探していた蒼とうりふたつ。なぜ、あの時姿を消したのか。どうして、別の名前で生きているのか。謎を解くべく、羽純は人形師からもらった不思議なキツネ型パペットと一緒に、運命が待つ東京へと向かった……。名作サスペンスシリーズ、第1巻(全6巻)!!哀しい家族の物語「波の告白」を巻末に同時収録!
おとなしくて真面目な少女・ヒロミと凶悪な不良少女・ユミ、二つの人格を持つ少女が巻き起こす恐ろしい出来事を描いた学園サイコ・サスペンス。親友の純子(じゅんこ)へ幼い頃に遊んでいた鏡の中の友達・ユミの話をした、内気な高校生・ヒロミこと小沢裕美(おざわ・ひろみ)。そしてその後、ユミに興味を抱く純子に、髪をほどかれて真っ赤な口紅を塗られたヒロミは、鏡に映った自分がまったく違う人間になった気がして……!?
平和な日常をおくりながらも、不思議な夢にうなされる少年オン。どこかで見覚えのあるこの記憶は、いつ見たものだろうか……「原野へ」。思春期をむかえ幼いころの気持ちを失っていく少年を叙情的に描く「さよならインプ」。白亜紀にまよいこんでしまった少年たちが見たものは、侵略者におびえる恐竜人だった……「白亜紀の少年」など、ベテラン・木村直巳のデビュー作「最後の妖精」を含む5編の短編集。
靴をボロボロにしながら事件の核心へと近づいていくベテラン刑事の活躍を描いたポリスアクション。靴がダメになった大道警察署の刑事・中富(なかとみ)は、爆発事件の通報を受ける。そこへやってきた新人女性刑事・星加(ほしか)に靴を買いに行かせて、爆発現場へと急行した中富は、これは一連の手投げ爆弾抗争だと判断するが、事件はますますエスカレートしていき……!?
普段は浮浪者だが、その正体は復活しようとする「鬼」を退治する「鬼狩り」族の末裔である山上獣吾。ある日、鬼に襲われた少女 佐伯真菜を助ける。真菜は偶然鬼の血族の秘宝を手に入れており、それにより命を狙われていた。個人的な恨みにより「鬼」を退治していた獣吾だが、真菜と共に世界の破滅と戦う事に…!
虚弱体質だが頭脳明晰な安堂一意と、パワーがすべての三輪青午という凸凹探偵コンビが大活躍! 作者独特の三頭身と八頭身のキャラが入り混じる画風も魅力のひとつ。「とつぜん圭子は消えてしまった」「明日墓村」「されど愛しき女よ」他収録。
デビュー作「最後の妖精」を含む、木村直己の初期短編集がこれ。「監察医朝顔」や「天涯の武士」など、青年誌掲載の木村作品を読んだことのある人には、あまりに現在と作風も絵柄も違うことに、ちょっとした驚きを感じると思います。この本に収められているのは、すべてSFファンタジー。そして絵柄は手塚治虫や石ノ森章太郎に近い、柔らかなタッチ。漫画家の絵柄は、何年も描き続けていくうちに変わってくるものですが、それにしても現在と比べるとまるで別人のよう。また一方ではそれ以外の絵も描けるんだといわんばかりの、劇画タッチの作品「小雪鬼」なんて作品もあり、将来花開く才能の片鱗も見受けられます。これら5編の短編が中学三年から高校三年の間に発表され、単行本にまとめられていたということにもびっくり。木村直己という漫画家に興味をもった人は、一度読んでおくべきかと思います。