歴史マンガの感想・レビュー1579件<<4849505152>>ナポレオン 獅子の時代ナポレオン ―獅子の時代― 長谷川哲也名無しいやあ、最近は優しい作品が多いですね。人が人を思いやり、思いやりがゆえに傷つけてしまう……。そんな、ナイーブな作品が話題になるので僕もよく読んでいるのですが、どこか違和感を感じています。プランクトン男子と呼ばれた“俺の中の獣性”(そんなものがあったんだ!)が、ナイーブ作品をどこか鼻で笑っているのです。 この『ナポレオン ―獅子の時代―』を読むと、思いやりとか人を傷つけないとか、どうでもよくなってきますね。ホント。なにしろ男も女も、自分の欲望に忠実な、サイコーにファッキンな野郎しか出てこないのです。 その中でも最も欲望が強いのが主人公のナポレオン・ボナパルト。フランス革命に乗じて徐々に頭角を現す彼は、ぶっちゃけフランスのことなんてどうでもよいと思っています。彼が求めるのは、ただひたすらに名誉と栄華なのです。それまでの王制では決して出世することができなかったナポレオンは、フランス革命の混乱に乗じて出世していくことになりますが、このフランス革命の描写もすごい。 様々な政治派閥が割拠し権力者がくるくる変わる状況のなか、たくさんの血が流されます。みんなが大好きなロベスピエール(童貞)が、その清廉さ故にたくさんの人を殺し、恨まれ、結局は処刑されてしまうテルミドールのクーデターは大スペクタクル。結局その後釜となったのがポール・バラスという、女とお金が大好きというクソ野郎というのも皮肉です。そんな内憂外患なフランスで、ナポレオンは対外戦争の勝利という功績をもって、軍人としても政治家としても出世していくのです。 ナポレオンの覇道を支えるのが一癖も二癖もある将校たちです。「マッセナは奪うのだ!」と略奪大好きなマッセナ。小男のちんちくりんで非常に細かい性格をした参謀・ペルティエ。上半身素っ裸で自分のことを「おり」というオージュロー。ベッドの上と馬の上以外ではボンクラな伊達男の騎兵・ミュラ。重厚な身体と性格、そして禿頭が特徴の「不敗のダヴー」などなど。どいつもこいつも人の生命・財産など、どうでもよいと思っている奴ばかり。そんな人間的にはどうしようもない彼らが、美しい戦争芸術をやってのけるのです。 なかでも惹かれるのがランヌという将校。他の将校と比べて、真面目な性格をしています。しかし、その実直さは度を越していて、一旦糸が切れてしまうとどんな残虐な行為もできてしまう男です。部下からは「絶対この人は変だ」と言われながらも慕われています。 エジプト遠征の時のランヌとナポレオンのエピソードは秀逸です。ナポレオンの妻ジョセフィーヌは敵国イギリスの新聞にも書かれるほど、放蕩生活で有名な女。遠征先のナポレオンは気が気ではありません。ランヌはナポレオンに「俺と女房は 愛で結ばれている 俺にとって女房が世界一いい女だ」と持論を述べます。そんな、彼にも、現地民が反乱を起こし、絶体絶命の最中にさらに最悪な連絡があります。「フランスから……女房に子供ができたそうだ」彼らは戻る手段もないエジプト遠征の最中。1年も会っていません。ナポレオンとランヌは言います「結論――女なんてクソだ」「そうだ」この描写になんともいえない笑いを感じました。 彼らは戦争という大きな国家の問題も自分の女の問題もすべて“自分の欲望”という一つの土俵で考えているのです。この『ナポレオン ―獅子の時代―』が描いているのは個人の欲望です。清廉潔白な思想も、「法律は守れ」と叫ぶ男たちも、「マッセナは奪うのだ」という叫びも、それは彼らの欲望から生まれたもの。だから揺らがないし、魅力的なキャラクターとなっていくのです。 授業では教えてくれない、欲望から見たフランス革命とナポレオン史を学べる稀有な漫画です。人々の欲望の連続こそが歴史なんだったんだ!世界史で習ったあれの話片喰と黄金 北野詠一たか「アイルランド移民がアメリカに渡りゴールドラッシュで一攫千金を目指す物語」。 表紙がめちゃくちゃ格好よくて、あらすじだけでもうワクワクする…!「あ〜これ絶対おもしろいやつじゃん!」と思いつつ積読していたところ、人に勧められて読みました。予想通り面白かったです…! 「ジャガイモ飢饉」という、世界史の授業でならったけれど、現代の日本人にはいまいちその恐ろしさがピンとこない災害の凄惨さと、その後主人公たちを待ち受ける恐ろしい船旅がとてもわかりやすく描かれています。 ネタバレを避けると「何も書けねぇ〜〜ッ!!」って感じですが、漫画らしい軽快さと史実を再現しようとするリアルさの両方のバランスが素晴らしいので、とにかく読んでほしいです。 また野田サトル先生が帯で推薦文を書いています。 同じ黄金を巡る物語ということで、ゴールデンカムイの歴史パートが好きな人はぜひ手にとってみてください!アシガールアシガール 森本梢子名無し内容の面白さはもちろん、要所要所の突っ込みが面白すぎて、公共の場で読むと危険⚠️ ラストも納得の終わり方でした。でも、もっと読んでいたかった!アメコミ好きとアクションする女性好きには是非に候恋情デスペラード アントンシクいい漫画読みアクションの画力も惚れ惚れしますが1話1話の完成度も高いと思っています。 アメコミ×和風というみんな描いてみたいと思うものをここまでさらっと描けてしまうのは羨ましい限り! あとスチームパンクと西部も入ってますね。 めちゃくちゃかっこいいです孤高のヒーロー「バネ足ジャック」!黒博物館 スプリンガルド 藤田和日郎ANAGUMAスコットランドヤードの犯罪資料館「黒博物館(ブラック・ミュージアム)」に所蔵された「バネ足」にまつわる数奇な物語を回想形式で振り返る短編。 藤田マンガらしく回想と現在が繋がるクライマックスの快感はバツグンです。 『藤田和日郎短編集 暁の歌』に収録されている「空に羽が…」という作品にも世界を救う孤独な英雄の姿が描かれますが、 殺人鬼と疑われながらも譲れないもののためにひとり立ち上がる、今作の主人公ウォルターも紛れもなく藤田和日郎の描く漢…! 「バネ足ジャック」というヒーローが生まれる瞬間と、そのカッコよさをぜひ味わってほしいです。 後日談の「マザア・グウス」も本編とガラッと雰囲気が変わったボーイ・ミーツ・ガールで味わい深いですよ! あと物語のガイド役の「キュレーターさん」が鉄面皮美人にみえてめちゃくちゃ素直っていう最高のキャラ。 片目隠れカワイイ。キングダムキングダム 原泰久名無しストーリーがとても面白く夢中になって読めるマンガです。人気があるのがわかりました。成長物語鬼滅の刃 吾峠呼世晴名無し成長していく主人公がいい!現代でも江戸でも猫は人間と一緒差配さん 塩川桐子名無し試し読みしていい感じ、と思ったらどうぞそのまま一巻読んでください! 間違いないです。 お江戸の猫漫画! 差配さん(猫)がメインで動くんですがいろんな人間いろんな猫がそれぞれ気ままに生活して動き回ります。 絵がいい、すごくいい。猫の絵もそうですが江戸時代の人間描写もうまい。 江戸×猫漫画たまらん…!!ねづこが可愛い鬼滅の刃 吾峠呼世晴名無し最初数巻読み始めですが面白い。 何をどうやったらこんなのがかけるのか、漫画の会話テンポも独特ですごいなと思ってます。 何よりねづこが可愛い!主人公と張るくらいいいキャラ。江戸時代の検屍の漫画江戸の検屍官 高瀬理恵 川田弥一郎starstarstarstarstar_borderマンガトリツカレ男江戸時代の検屍の本「無冤録述」を元に検死をする漫画。 無冤録述が思ってたより科学的だったし、江戸時代の文化もわかって面白い 絵が上手く丁寧書かれている分だけ、取り調べや死体が妙に怖いときがある この作者が書く漫画はどれも、色々小ネタがあって好きだな。「公家侍秘録」もよかった。 完全な横山光輝エンターテイメント作品ウイグル無頼 横山光輝starstarstarstarstarマンガトリツカレ男旅人・ヘロデが大ウイグル帝国を建国するまでの話。多分実際の歴史とはかなり違うので歴史を学ぶというよりも「横山光輝が書く物語の楽しむ」のがメインの作品だと思う。 横山光輝の作品に登場する主人公にある「割り切り」「合理性」「一貫した行動理念」が溢れていてラストも含め最高だった。 ただ読む順番がよくなかったのか、同じ横山光輝の「長征」を読んだ後だったので同じようなネタを見ることになってしまったのが残念掲載雑誌休刊で続きが読めないのが残念竜神伝説 横山光輝starstarstarstarstarマンガトリツカレ男横山光輝の作品が好きだから「これほど面白そうなところで終わった漫画も少ないんじゃない?」と思ってしまう。 時代背景は応仁あたりの戦国時代で落ち武者狩りに主人公が追われるところが始まる。琵琶湖を根城とする龍神組の頭目 幻也斉と水に潜れる亀甲船のようなものでこれから天下統一を始めようというところで終わる。最後は亀甲船で水に潜るところで終わってるせいか、成功せずに沈んで完結という見方もできてしまうがせっかく面白いので続いて欲しかった。またはリメイクとかして欲しい ゴールデンカムイゴールデンカムイ 野田サトルおかか囚人の話から始まってすごく引き込まれました。早く次読みたい泣ける鬼滅の刃 吾峠呼世晴おかかさびととまこもの話すごく好き、 グッとくるよ戦国時代好きにおススメセンゴク権兵衛 宮下英樹名無し通説を否定して歴史考証をアレンジしたシナリオ展開が面白い。 マイナー武将の活躍が描かれるところも面白い。持ってる男、田中角栄の成り上がり人生譚角栄に花束を 大和田秀樹名無しこの物語は、角栄の終生の友である入内島金一氏の語りで始まる。 1話目はふたりの出会いの話。 昭和9年、15歳の角栄は新潟より単身上京。ツテを頼って書生になり勉学に励む予定だったが、なぜか話が通っておらずいきなり頓挫。 しかし、入内島が働く井上工業で働きながら工学校にも通わせてもらえることになるという強運ぶりを発揮。そんな角栄が上京した本当の目的とはもちろん……… 『宰相』になることだッッッッッッッッ!!!!唯一無二、だなあ。俺の新選組 望月三起也(とりあえず)名無し望月三起也で一番好きな漫画、というと、どうしてもこれが思い浮かんでしまう。 キャリアの長いかたで、ぶっ飛んだ名作・傑作・異色作がたくさんありますし、なんと言っても自動拳銃の排莢を描かせたら、まったくもって誰もマネが出来ないほどカッコイイ漫画家さんですから、そりゃあ『ワイルド7』も最高に決まっているのですが(「排莢の瞬間」がカッコイイんですよ。これは映画とか他媒体では描写不能。漫画だけに、望月三起也だけに可能だった絶品のアクション描写です。鳥山明も排莢描くの上手いけど、別にカッコよくはない)、なんか、この、銃も戦車もバイクも出てこない「チャンバラ時代劇」が、すごく好きなのです。 ぞろっとした新選組の段だら模様に、ギラっと冷たく光る本身…いやあ、良いなあ、チャンバラだなあ! 巻数も5巻で長くないですし(いや、打ち切りなんですけどね)、癌で余命宣告された時、「『新撰組』のつづきを描く!」と宣言なさっていたくらいですから、ご本人としても思いの強い作品だったのだと思います。(その望みが果たされることは、残念ながらありませんでしたが) 唯一無二の望月ワールドを堪能するのに、実に好適な名作ですよ。 もしそれで気に入ったら、そこから先は、『ワイルド』でも『JA』でも『JJ』でもヨーロッパ戦線物でも『ジャパッシュ』でも、なんでもドンドンいっちゃいましょう!今読むべきバトルロイヤルアクション地獄楽 賀来ゆうじANAGUMA謎の生命体が跋扈する孤島に送り込まれたのは大量の死刑囚とそれを監視する処刑人! 幕府の恩赦を勝ち取るために、島に眠る不老不死の秘薬を巡って待ったなしのデス・レースがスタート!! 2,3巻くらいで島の状況が大まかに分かってバトルロイヤルの勢力図が定まってくるんですが、とにかくテンポが良くて展開の出し惜しみがないです。 その辺りで一度落ち着くかと思ったら圧倒的なボス敵が出たり、新キャラを大量投入したりと緊張感を持続させる仕掛けが絶妙。 主人公コンビも魅力的です。 死刑囚と処刑人という立場を超えて共闘する最強の忍・画眉丸と凄腕剣士・佐切…完璧な組み合わせだ! 画眉丸の戦う理由も少年マンガとしては珍しい気がするんですが、これもまた渋い…。 アクションよし・群像劇よし・テンポよしの快作だと思います。 ドンドン次が読みたくなる!人はなぜ漫画家になるのか旧約聖書 創世記編 笹野洋子 ロバート・クラム(とりあえず)名無しロバート・クラムの漫画のことを初めて知ったのは、寺山修司の文章だった。 いや、正確に言うと、寺山の文章を読んだ時には、それがクラムだとは分かっていない。 寺山は、「オランダから出ている地下新聞「SUCK」にのった「JOE BLOW」という漫画」として、作者名も記さずそのストーリーを書いていて(「サザエさんの性生活」)、それが記憶に残っており、後に原書のクラム単行本を読んでいて、「あれ? これ知ってる…寺山が書いてたヤツじゃん」となったのだ。 当然、クラムは、アメリカはサンフランシスコで活動してた漫画家なのだから、オランダのわけがない。「Joe Blow」の初出は寡聞にして知らないが、たぶん自らが発行に参画していた「ZAP」あたりだと思う。それが、回り回ってオランダのアンダーグラウンド・メディアに転載され、それをたまたま寺山が見た、ということだろう。 (「Joe Blow」に興味があるかたは、河出書房新社刊『ロバート・クラムBEST』柳下毅一郎編訳に収録されているので、古本で探してみてください) 要するに、ロバート・クラムの作品は、ミッドセンチュリーのアンダーグラウンド・シーンで一際目立つアイコン的存在だった、ということだろう。 (寺山は、「Joe Blow」の作者がフリッツ・ザ・キャットの生みの親だったり、ジャニス・ジョプリン『チープ・スリル』のジャケットを担当しているとか、全然知らなかったみたいだが) 本書『旧約聖書 創世記編』は、クラムがフランスに移住して後、今世紀になってから描かれた作品で、日本版はなんでか知らないがハリポタの静山社から出ている。 クラムの執拗で変態的かつとても味のある描線で、聖書を「一字一句、できる限り忠実に再現」したもので、この稀代の表現者のテイストを味わうには格好の一冊だし、なに気に、「創世記」読んでみようかなあ…と思う人にとって最適のコミカライズだったりします。 それはともかく。 ロバート・クラム本人を追ったドキュメンタリー映画『クラム』(テリー・ツワイゴフ監督)というのがありまして、これを観ると、「ああ、漫画家というのは、本っ当っにっ因果な商売なんだなあ」と思います。 もちろん、アンダーグラウンド・コミック・シーンの巨匠であるクラムですから、実にエクストリームに悲惨かつユニークで、それを普通の漫画家と一緒にしちゃあかんとは思うのですが、その生まれ育った家庭環境(いや、本当にすごいですよ、母とか兄ふたりとか)を思うとき、そこに「なぜ人は漫画を描くのかということの真実」を、どうしても感じてしまうのです。 『クラム』はすごい(ヤバい)映画なので観ていただければと思うのですが、要するに、 “狂った家族(世界)の中で、唯一ほんの少しだけまともだったロバート・クラムだけが、漫画を描くことでその狂気を外在化し、世界と戦い得た” ということで、そしてそれは、多かれ少なかれすべての漫画家にある「描く理由」だ、と私は思わざるをえないのですね。 いやあ、漫画家ってすごい。最期死ぬ前に何を食うか最後のレストラン 藤栄道彦名無し最初読んでドリフターズ思い出しました。 偉人たちが死ぬ前にレストランへと飛ばされる… 織田信長、マリーアントワネット、カエサルその他諸々 もう死んでしまってこの世にいない有名偉人が最後に食いたい料理を食えるというもの。 粋だな…と!!! マリーアントワネットの話で「よく死ぬ前に何が食べたい?というけれど病気で衰弱してしまっていたら食べられるものじゃない。食べることができたらちょっとは救われる気がする」というセリフが出てくるんですけど、きっとその通りなんですよね。 最後のご飯ってその人の人生を語るには相応しい時間、それぞれがそれぞれのご飯を食べて納得して戻っていく。 不思議ですが作風が明るいので読んだ後ほっこりします。 表紙がミュシャのポスター調に統一されてるのでレストランポスターっぽくておしゃれ。 なかなか奥が深い料理漫画です。世界よ、これがお色気サスペンス(男同士)だ!艶漢 尚月地たかとにかく表紙が全部良すぎる…!画力と色使いの暴力(褒め言葉) 何事にもゆるくて美貌の主人公と、真面目熱血警察官のスリルたっぷりアクションサスペンスで、なんと主人公(男)がお色気を担当します! 耽美な絵、幻想的な怪奇事件、暗器を用いた迫力あるアクション…。この3つが一体となった他にはない唯一の読み味。 読めば高い画力で緻密に描かれるアジア風の世界観に魅了されること間違いなし…!本当にうっとりしてしまいます🤤 (画像は2巻8話より。主人公・詩郎が自ら作って売る花傘)いいよいいよーレイリ 岩明均 室井大資いつもの名無しすごい面白かった~ 岩明均原作の時点で高まったハードルも余裕で超えていく面白さ。テンポの良さ。 悪意あるとしか思えない信長の顔も最高。鬼畜感が出てる。剣術愛と人間愛に溢れ過ぎている剣術抄 新宿もみじ池 とみ新蔵マンガトリツカレ男表題作の「剣術抄 新宿もみじ池」は単純に書くかな仇討ち相手を探していたら、実は釣り仲間で剣術の師匠だったという内容。たださすがとみ新蔵という感じでいつも通りの剣術話と人間愛に溢れた短編だった。 ただ個人的には「虎vs人間」を書いた「孤高の虎」の方を強く推したい。虎に対して憐憫や尊敬を持ちつつも状況の変化で戦う必要が出てくる。まさかあのような戦い方で終わり感動的なラストになるとは思わなかった 美と実用の究極・日本刀水の剣 火の刀 あおきてつお 麻木遼 桜小路むつみ名無し人を殺すための道具、日本刀。 生殺与奪の究極の実用品にして美的な存在。 天下泰平の世を経て、武器としてよりも 侍の権威の象徴であり美的な存在になりつつあった日本刀が 幕末・維新の時代に武器として再評価された時代。 それは日本刀が最期の輝きを示した時代でもあった。 人を斬るために、命を守るために、 美の追求のために、金儲けのために、 様々な目的と思惑で日本刀が扱われた時代。 そんな時代に生まれた女性刀鍛冶師・お涼。 刀鍛冶師であった父が残した玉鋼・青玉砂の存在と 自身が刀を打つ意味、打ちたい刀の姿、 それらを自問自答しながらたどりついたのが 「水の剣 火の刀」 お涼は、その刀を打てるのか? 悩むお涼を追い越すように時代は流れ動き、 人は生きて死んでいく。 <<4849505152>>
いやあ、最近は優しい作品が多いですね。人が人を思いやり、思いやりがゆえに傷つけてしまう……。そんな、ナイーブな作品が話題になるので僕もよく読んでいるのですが、どこか違和感を感じています。プランクトン男子と呼ばれた“俺の中の獣性”(そんなものがあったんだ!)が、ナイーブ作品をどこか鼻で笑っているのです。 この『ナポレオン ―獅子の時代―』を読むと、思いやりとか人を傷つけないとか、どうでもよくなってきますね。ホント。なにしろ男も女も、自分の欲望に忠実な、サイコーにファッキンな野郎しか出てこないのです。 その中でも最も欲望が強いのが主人公のナポレオン・ボナパルト。フランス革命に乗じて徐々に頭角を現す彼は、ぶっちゃけフランスのことなんてどうでもよいと思っています。彼が求めるのは、ただひたすらに名誉と栄華なのです。それまでの王制では決して出世することができなかったナポレオンは、フランス革命の混乱に乗じて出世していくことになりますが、このフランス革命の描写もすごい。 様々な政治派閥が割拠し権力者がくるくる変わる状況のなか、たくさんの血が流されます。みんなが大好きなロベスピエール(童貞)が、その清廉さ故にたくさんの人を殺し、恨まれ、結局は処刑されてしまうテルミドールのクーデターは大スペクタクル。結局その後釜となったのがポール・バラスという、女とお金が大好きというクソ野郎というのも皮肉です。そんな内憂外患なフランスで、ナポレオンは対外戦争の勝利という功績をもって、軍人としても政治家としても出世していくのです。 ナポレオンの覇道を支えるのが一癖も二癖もある将校たちです。「マッセナは奪うのだ!」と略奪大好きなマッセナ。小男のちんちくりんで非常に細かい性格をした参謀・ペルティエ。上半身素っ裸で自分のことを「おり」というオージュロー。ベッドの上と馬の上以外ではボンクラな伊達男の騎兵・ミュラ。重厚な身体と性格、そして禿頭が特徴の「不敗のダヴー」などなど。どいつもこいつも人の生命・財産など、どうでもよいと思っている奴ばかり。そんな人間的にはどうしようもない彼らが、美しい戦争芸術をやってのけるのです。 なかでも惹かれるのがランヌという将校。他の将校と比べて、真面目な性格をしています。しかし、その実直さは度を越していて、一旦糸が切れてしまうとどんな残虐な行為もできてしまう男です。部下からは「絶対この人は変だ」と言われながらも慕われています。 エジプト遠征の時のランヌとナポレオンのエピソードは秀逸です。ナポレオンの妻ジョセフィーヌは敵国イギリスの新聞にも書かれるほど、放蕩生活で有名な女。遠征先のナポレオンは気が気ではありません。ランヌはナポレオンに「俺と女房は 愛で結ばれている 俺にとって女房が世界一いい女だ」と持論を述べます。そんな、彼にも、現地民が反乱を起こし、絶体絶命の最中にさらに最悪な連絡があります。「フランスから……女房に子供ができたそうだ」彼らは戻る手段もないエジプト遠征の最中。1年も会っていません。ナポレオンとランヌは言います「結論――女なんてクソだ」「そうだ」この描写になんともいえない笑いを感じました。 彼らは戦争という大きな国家の問題も自分の女の問題もすべて“自分の欲望”という一つの土俵で考えているのです。この『ナポレオン ―獅子の時代―』が描いているのは個人の欲望です。清廉潔白な思想も、「法律は守れ」と叫ぶ男たちも、「マッセナは奪うのだ」という叫びも、それは彼らの欲望から生まれたもの。だから揺らがないし、魅力的なキャラクターとなっていくのです。 授業では教えてくれない、欲望から見たフランス革命とナポレオン史を学べる稀有な漫画です。人々の欲望の連続こそが歴史なんだったんだ!