情熱大陸への執拗な情熱

やはり大陸はでかかった、という話

情熱大陸への執拗な情熱 宮川サトシ 宮川さとし
nyae
nyae

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。を読んでからこれを読むと「元気そうでよかった」という、読む上でとくに必要のない感情が生まれてしまいました。 それはさておき、この漫画はひとりの(当時)マイナー漫画家が、情熱大陸に強く憧れ、いつか上陸(出演)するときのための準備にいそしむ様子を描いたドキュメンタリー漫画です。 準備というのも、ひとり胸に秘めてというレベルのものではなく、度々家族をゾッとさせるような行き過ぎたものもあり、それが非常に笑えます。彼は本当に「本気」なんだなというのは痛いほど伝わるんですが、大陸のデカさに気付くのに少し時間がかかってしまった。 そしてそんな彼をいたずらに振り回すような要素も多すぎた。 地元の同級生に上陸を先越されたり、上陸済の綾野剛とバイトで一緒だったことがあとから判明したり(遅ッ)、情熱大陸の公式Twitterに漫画に関してコメントされたり… しかし私自身もこんなふうに書いてますが、この漫画が連載されている時には「こんなこと描いてるけど、なんだかんだ話題になってるし、そのうち上陸するでしょ」なんて思っていました。要は私も大陸のデカさを全くわかってなかったんです。改めて読んで、やっぱでっかいなァ…と再認識したところです。

緊縛パッション

イケメンということが思い出せない顔芸。

緊縛パッション 永井三郎
華子
華子

スメルズライクグリーンスピリットは、思春期の少年達が自分の性に向き合うという繊細なお話でしたが、こちらは完全にギャグ漫画です。 緊縛された男を描く絵師になるという、夢を持った美大生武蔵が、友人のマリオ(キノコ)の勧めで、市役所勤めのDTシチサン(あだ名)をモデルに緊縛絵を描き始める。というお話です。 しょっぱな、武蔵がデッサンの授業でラオコーンの緊縛絵を描くところからテンションが高い本作ですが、このテンションの高さは最後まで途切れません。 元々作者は繊細な線画を描くのですが、その崩しっぷりが尋常じゃなく、登場人物の顔芸が凄い。 あらすじには、イケメンの美大生武蔵と記載ありましたが、武蔵がイケメンである描写の方が少なく、常時狂気に満ちておりとにかく怖いのです。 たまーに、ほんとにたまーにイケメンになります。 ただ友人のマリオの見た目のインパクトが強すぎて、武蔵がどんなイケメンなのかを忘れました。 ちなみにマリオはキノコカットでオネエ言葉で、いつも微妙な丈のシャツを着ているヘソ出しですが、ヴァ◯ナマニアのヘテロセクシャルです。 お色気シーンは殆どありませんので、苦手な方でも読めるかも知れません。 とにかく爆笑必至です。 この本に関係ないですが、スメルズライクグリーンスピリットの登場人物の柳田先生を主人公にした後日談、深譚回廊はシリアスなお話なのですが、そちらも面白かったので読んで下さい。

セメルパルス semelparous

並行世界からの侵略防衛百合 #1巻応援

セメルパルス semelparous 荻野純
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

並行世界からの侵略者「壊獣」を、緩衝地帯の「壁の中」で殱滅する「防壁師」。共に防壁師を目指していた親友を壊獣によって喪った新更命乃は、親友の為に壊獣と闘うと決める。 闘い続けるうちに明らかになる事実、隠された秘密。バディを組む隊長が口にする「地獄」とは……? ♡♡♡♡♡ 『γ―ガンマ―』で悩めるヒーロー達×怪獣・怪人の闘いと姉妹百合を描いた荻野純先生。今作では並行世界からの侵略との闘いに相棒百合を掛け合わせて、最初から重い世界観を描いている。 人間と似た体型の巨大な「壊獣」、人工的で無機質な地形の「壁の中」、人知れず戦う防壁師……そこはかとなく暗く、冷徹な世界観に、悲観的な先行きを想起せざるを得ない。 世界や敵に関する重要な事は、毎話少しずつ明かされる。プロの防壁師になった命乃にも、少しずつしか事実は明かされない。そしてふと辿り着いてしまった真相が、命乃を混乱させる。 思いがけない事実に苦悩する命乃に、寄り添う隊長も何かを胸に秘めている。力を合わせて闘う、重い物を背負った二人の関係は、切ない程に尊い。 この先の世界と二人の関係に待ち受けるのは、悲劇か、それとも幸福か……命乃と共に秘された世界の全てを見るまで、気持ちが落ち着かなそうだ。 (個人的には、やはりタイトルの「セメルパルス(semelparous)という言葉が気になるところ。一回結実性、つまり多年草植物が生涯に一度だけ花を咲かせ、枯れてしまうこと。竹やリュウゼツランが有名。この言葉は世界観に関わるのか、防壁師の能力に関わるのか、それとも女性同士の関係性に関わることなのか……。他にも色々なワードから作品世界の空想・予想を楽しめる作品だと思います。絶対考察ブログとか書きたくなるやつです!)

愛しています、キョーコさん。

この愛は歪すぎる!! #1巻応援

愛しています、キョーコさん。 藤村緋二 のざわたけし
名無し

最初は、彼女を異常に溺愛している男が主人公で、主従関係がある変なカップルの話だなと思って読んでいたら、実は彼女のキョーコさんの方にヤバすぎる秘密がありました。 新興宗教、かどうかはわからないけど、キョーコさんは地球滅亡を止めるため「太陽神」に捧げる生贄を10人集めないといけないという使命を背負っていることが判明します。さすがの岡田くんも「何言ってるんだこいつらは」とドン引きするも、結局はキョーコさんの為に自分が「生贄」を集めることになってしまう。 岡田くんからすると、自分はキョーコさんと2人だけで一生仲良く暮らしていければそれで良かったのに、厄介な事に巻き込まれてしまったなという思いかもしれません。ただ客観的に見れば、キョーコさんは太陽神を崇めている。そしてそのキョーコさんのことを、岡田くんは崇め奉っている(愛し方が恋人のそれとはかけ離れているように見えるので)。完全なる信仰の一方通行が出来上がっています。 これから、岡田くんはキョーコさんのために生贄を集めなければいけないわけですが、同意があったとしてもやってることは誘拐・監禁という立派な犯罪です。 どこかで我に返ってキョーコさんと縁を切る…なんてことはおそらくなさそうなので、気が済むまでキョーコさんのために突っ走って頑張ってほしいな。 一番笑ったのは、大家さんの圧倒的なパワー。2巻以降も出てきてくれるのかな。あと岡田くんの正気なのか正気じゃないのか判別の難しい表情が地味にツボ。

修羅の門

最強が決まるまでの興奮

修羅の門 川原正敏
名無し

最強の男は誰か? 最強の格闘技は何か? 格闘技をする者がなりたいと思い、 見る者が見たいと思う、 「世界最強」 だが、現役格闘家は別として、 果たして、マニアが見たいのは本当に 最強の男、格闘技が決まる瞬間だろうか。 成績とか結果とか結論を知る瞬間だろうか。 そうでは無いと思う。 その結論に至るまでの過程が重要なのだ。 それが決まるまでの経過を、ドラマを見たいのだ。 極端に言えば、最強の戦士・格闘技が決定して、 勝者の手がレフリーに掴み挙げられる瞬間より、 最強候補がリングにあがって対峙してゴングがなる瞬間、 試合が決着するまでにいたる攻防、 それらを見て興奮して味わいたいのだ。 「修羅の門」はそれが判っている。 だから、神武館のオープントーナメントや ボクシングの統一戦、ブラジルでのバーリトゥード、 それらの開催に至るまでの過程や、 各試合が始まるまでのストーリーも入念に描いているし、 その話がとても面白い。 そしてそれゆえに本番の試合がまた盛り上がる。 「最強」を決定するのに必要なのは 虚飾を排除したリアルな展開かもしれないが、 それをしすぎて単なるデータの抽出提示の過程に なってしまったのでは 「世界最強」という男のロマンが無味で色あせてしまう。 だから主人公の陸奥九十九は 無謀な連戦もしたりする。 互いに万全な体調で戦いましょう、 公正明大にどちらが強いか確認しましょう、 とか必ずしもそうではない。 だから神武館のトーナメント戦でも キックボクシング、シュートボクシング、プロレス、古武道、 それぞれの最強戦士とあえて戦う立場を自ら選ぶ。 そして大会主催者も相手の選手もそれを了承する。 その流れはリアリティに徹するならありえない流れだが、 格闘リアリティと格闘ロマンの両方を損なわず増幅させてくれた。 このシーンが描かれたとき、 「あ、この漫画、絶対に面白くなる」 と思った。

ON THE ROAD GIRLS

この物語が"フィクション"ではない人に届いてほしい #1巻応援

ON THE ROAD GIRLS ISAKA
sogor25
sogor25

そこは田舎とも都会とも言えない、でもとても"閉鎖的"な町。男は外で稼いで来るのが仕事で、共働きだろうと女が家事育児をするのが当たり前、そんな今や化石のような前時代的な考えが蔓延る町。そんな町が嫌で東京に就職し、東京のしがらみの中で疲弊してまたこの町に舞い戻ってきた38歳の女性が主人公。 現代の感覚でいうと主人公の考え方はもっともらしく見えるのだけど、それはその町の"普通"とはあまりにかけ離れていて、そこに38歳という年齢、そして一旦町の外に出たにも拘らず戻ってくることになってしまったという状況が重ね合わさって、主人公の苦悩は重くなり、しかし打開策の選択肢は少ないという息苦しさが作品全体にのしかかってくる。痛々しいまでの心理描写が心をえぐってくる、でも目が離せない作品。 この作品のテーマとなる部分はかつての少女マンガでは大きな主題として存在していたのかもしれないが、最近では直接的に扱われることが少し減ってきているように思う。"男性性・女性性"という概念のに対する閉塞感の打破がゴールだったものが、そこから一歩外へと踏み出し、"多様性"というより自由度の高い問題に触れることができるようになってきてるのではないかと感じている。 私自身にとってもこの物語は"フィクション"で、主人公に感情移入はできるものの、この町の"普通"に現実感を得ることができずにいる。でも、この主人公と同じような悩みを抱えている、この物語が"フィクション"ではない人も間違いなくいるはずで、そういう人にこそ届いてほしいと思う作品。 1巻まで読了

ウダウダやってるヒマはねェ!

主役でもないのに、いちいちかっこ良すぎる天草銀。

ウダウダやってるヒマはねェ! 米原秀幸
華子
華子

ヤンキーマンガと言えば同じチャンピオンで連載されていた、クローズが若手俳優総出演で人気をはくしましたが、ワタシはこちら派でした。 箕輪道伝説が好きだったので、一巻が発売されていると知ったその日に近所の本屋へ走って予約に行った程です。 受け付けたのが凄いおばあちゃんだったので、タイトルを聞き取って貰えず、五回ぐらいレジで復唱した遠い記憶。 二回目くらいから、半笑いでした。 ヤンキーバディと言えばトオルとヒロシが定番ですが、こちらはナオミとアキ。 名前がオシャレ(?)。 かたや硬派で案外真面目なナオミと、ちゃらちゃら軟派だけど、本当は真面目なアキのコンビがヤンキー相手に全国喧嘩行脚(?) というかヤンキーなのか?最後は巨悪と闘うヒーローへとなって行きます。 喧嘩強すぎて。 ちょっと暑苦しい部分はご愛敬。 一番お気に入りだったのはアマギンです。 古いベンツのカブリオレに乗ってるし、ハーレーに乗ってるし、グリーングリーングラスオブホームがテーマソングなところも十九ごときで渋すぎる。 作者が一番思い入れのある登場人物なのかも知れませんね。 最終巻の最後のページは感涙しました。