そこは田舎とも都会とも言えない、でもとても"閉鎖的"な町。男は外で稼いで来るのが仕事で、共働きだろうと女が家事育児をするのが当たり前、そんな今や化石のような前時代的な考えが蔓延る町。そんな町が嫌で東京に就職し、東京のしがらみの中で疲弊してまたこの町に舞い戻ってきた38歳の女性が主人公。
現代の感覚でいうと主人公の考え方はもっともらしく見えるのだけど、それはその町の"普通"とはあまりにかけ離れていて、そこに38歳という年齢、そして一旦町の外に出たにも拘らず戻ってくることになってしまったという状況が重ね合わさって、主人公の苦悩は重くなり、しかし打開策の選択肢は少ないという息苦しさが作品全体にのしかかってくる。痛々しいまでの心理描写が心をえぐってくる、でも目が離せない作品。

この作品のテーマとなる部分はかつての少女マンガでは大きな主題として存在していたのかもしれないが、最近では直接的に扱われることが少し減ってきているように思う。"男性性・女性性"という概念のに対する閉塞感の打破がゴールだったものが、そこから一歩外へと踏み出し、"多様性"というより自由度の高い問題に触れることができるようになってきてるのではないかと感じている。

私自身にとってもこの物語は"フィクション"で、主人公に感情移入はできるものの、この町の"普通"に現実感を得ることができずにいる。でも、この主人公と同じような悩みを抱えている、この物語が"フィクション"ではない人も間違いなくいるはずで、そういう人にこそ届いてほしいと思う作品。

1巻まで読了

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井口純平は今日もやれない

井口純平は今日もやれない

仮想通貨投資に失敗し、奨学金に加えて多額の借金を背負うことになってしまった井口純平。彼が副業に選んだのは…女性用風俗のセラピスト!? 酔った勢いで応募してしまったため、面接を断るために店舗に赴いたのが運の尽き。断るつもりが店長・高林の口車に乗せられて、なぜか実技研修を受けることになってしまう。しかも、純平には元カノとの別れ話のせいで、あるトラウマがあり……。こうして、女性用風俗「ハイドランジア」のセラピスト・ジュンペイとなった彼は、数多の女性の性欲を目の当たりにして、その奥深さと不可解さに戸惑いながらも、成長していく。果たして、ジュンペイは「女性にとってSEXとは何か?」という命題に答えを出せるのか?

青嵐

青嵐

この町の夏は 五月蝿くて あの頃と何も変わらない (Kiss WAVE TOP作品賞 Kiss 2018年11月号/2018年9月25日発売)

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