まさかな恋になりました。

隣人が魚の顔をしている

まさかな恋になりました。 邑咲奇
ゆゆゆ
ゆゆゆ

35歳、独身、女。 大手企業の子会社に事務員として勤めている。 薄給、多忙。同期どころか若い後輩は結婚しては辞めていく。 でも雇ってもらえるだけいいじゃない、と思っているらしい。 そんな彼女に恋人がいたのは一体いつのことか。 身だしなみは昔から最低限。 高そうなカメラで撮ってもらえば、映し出されたのは、見まごうことなきオバサン。 オバサンとわかっていても、突きつけられると傷つく。 主人公・栞の状況を書いていて辛くなってしまった。 みな、年をとるのだ。どう年を取るのかなのだ。我が身振り返ってダメージ倍増。 そんな栞は夜中に引っ越してきた隣人さん・瑞貴くんの顔が何故か魚に見える。 たまに本来のイケメンに見えるけど、基本は魚に見える。仕組みはわからかいけど、魚に見える。 魚の顔の彼と話しているのはとても気楽らしい。 魚フェイスがなくなると、若くてイケメンで気遣いできてさらに御曹司。 なにかあれば玉の輿である。 でも、魚に見える。 栞の家族がひどいとか、栞の会社の人達がひどいとか、周りの環境も環境なのだけど、魚に見えるおもしろさが上回ってしまう。 栞の性格を考えると、魚の顔をしているくらいがちょうどよいのかもしれない。 魚人間と恋愛??と読み始めたら、おもしろくて読み止まらない。

スーパーストリング -異世界見聞録-

縦読み前提の見開きマンガという挑戦 #1巻応援

スーパーストリング -異世界見聞録- 尹仁完 Boichi
兎来栄寿
兎来栄寿

各社や著名人のwebtoonへの参入が非常に盛んな昨今ですが、その中でも特に注目なのが本作でしょう。 直近まで『週刊少年ジャンプ』で累計発行部数1500万部を超える大人気作品『Dr.STONE』を手掛けていたBoichiさんが、『新暗行御史』や『DEFENSE DEVIL』で知られる尹仁完さんと組んで送り出す新作ファンタジー。 面白いのは、4月から『サンデー』でモノクロ見開きマンガとして連載しながら、6月から『LINEマンガ』でwebtoonとしてフルカラー縦読みマンガとしても連載していることです。そして、すでにWEBTOON Worldwide Serviceを通じて7言語での連載がされているそう。 その単行本1巻が発売となりました。 今までも縦読みマンガを見開きマンガにして単行本化というのはありましたが、本作はベースに見開きマンガがありながら縦読み化前提で作られており、webtoon化・フルカラー化する際には効果音や演出、コマの縦横はもとよりセリフにまで大きく改変が及んでいます。 普通の見開きマンガとして読もうとすると若干違和感があることもあり、読書体験としてはwebtoon版の方がかなり上回っている印象ですが、個人的には面白い試みだなと思います。 かつて『ドラゴンクエスト11』が発売したとき、PS4と3DSどちらでも遊べて、なおかつ旧作に親しんだ人に向けて主流の3Dモードとは別にオールドな2Dドット絵モードでも同じ物語を楽しめるように設計していたのが画期的でした。ファンの絶対数的に馴染み深い形式で触れたい、という人も多かったことでしょう。 それと同様に、どうしてもまだwebtoonには慣れないという人も多いと思います。そういう人には、従来の見開きマンガでも読めるという選択権があり、逆に海外に輸出する際などはより受け入れられやすいwebtoonという形式にすることでより臨場感を持って楽しめる。ある程度大きい作品でないとできないことだと思いますが、価値ある試みだと思います。 私は以前に、webtoonの可能性を探る下記のようなインタビューを行いました。 https://manba.co.jp/manba_magazines/22224 こちらでも述べていますが、webtoonはまさに今が過渡期です。それ故に、これからたくさんの挑戦がなされていくことでしょう。 日本人以外の作家として日本で初めてメジャー誌でのヒット作を出した尹仁完さんが、同じく韓国出身のBoichiさんと共にこうした挑戦を行っているのも意義深いです。 正直、「まだwebtoon作品は面白いものが少ないな」と感じている人も多いと思います。ただこれは見開きマンガの初期と同じで、webtoon制作に対する知見や技術、経験値が溜まっていった先には人々の人生に大きな影響を与えるような名作もどんどん登場してくるはずです。 この作品に触発されて「webtoonはこんな可能性もあるんだ」「自分はこうしてみよう」と思うプレイヤーも現れると思いますし、まさにマルコ・ポーロが見た数多の異文化のように、未知の可能性が溢れているのを感じます。

砂漠の野球部

最高の魔球漫画

砂漠の野球部 コージィ城倉
toyoneko
toyoneko

「砂漠の野球部」は、コージィ城倉先生が、週刊少年サンデーで連載していた野球漫画です 超強豪校の落ちこぼれ野球部員たちが、鳥取の高校に転校して甲子園出場を目指す、というのがストーリーの骨格で(日本でもっとも地区予選出場校が少ないのが鳥取だそうです)、初期はわりとコメディ&お色気色が強い漫画でした(1巻の表紙参照) ある意味サンデーらしい漫画ですね しかしストーリーが進むに連れシリアス度が増し、ド根性熱血野球漫画になっていきます そのうえで、このマンガ一番の見どころは、やはり恐るべき魔球「サイレントカーブ」でしょう!(コミック8巻~) 魔球には、謎と、(屁)理屈が必要で、それが魔球の魅力を基礎づけます この点、「サイレントカーブ」は、一見地味なのに、実は恐るべき謎が隠されていて、しかもそれを裏付ける理屈が、なんというかサイコーに無茶で、それでいながらカッコよいのです。私は大好きです さらに、物語最終盤には、サイレントカーブとは異なる、最終最後の大魔球が登場します 「サイレントカーブ」と、最後の魔球! この二つの魔球が存在することで、「砂漠の野球部」は、(私の中で)最高の「魔球漫画」となったのでした 癖のある野球漫画が好きな方、昔のコージィ(又は森高夕次)の漫画が読みたい方にオススメです

女だから、とパーティを追放されたので伝説の魔女と最強タッグを組みました

女性差別社会をブン殴れ! #1巻応援

女だから、とパーティを追放されたので伝説の魔女と最強タッグを組みました 三弥カズトモ 蛙田アメコ りりうら世都
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

女性差別がはびこる異世界で、パーティに理不尽な扱いを受けた魔導士の主人公は、八つ当たりの中で伝説の魔女の封印を解いてしまう。二人が手を組みパーティへの復讐を目指す物語は、現実世界にもある女性差別を数多く描き出す。 現実世界での女性差別は、とても見えにくい。例えば〈女性議員が少ない〉という問題意識に「実力のある女性議員希望者が少ない」「そもそも議員になりたがる女性が少ない」という、もっともらしい反論がある。しかしこれは女性に対する教育の不平等(女性に教育は要らないという意識、入試不正等)や女性は表に出るべきではない(=女性は男性に庇護されるべきだ、女性は家庭を守る人だ)という意識等、社会構造に練り込まれた多様な通念、しきたりが起因していて、それは男性にも、そして多くの女性にも気付かれない。 本作の異世界でも、現実世界で行われる差別が全く同じ形で表現される。主人公は身に降りかかった決定的な差別をきっかけとして、社会にある差別構造を伝説の魔女に教わりながら少しずつ自覚するようになる。主人公と一緒に、私もいちいちハッとさせられる。 魔女に肯定される主人公、主人公が肯定する女性達。世の中のおかしな構図に武力で立ち向かう二人の進撃は痛快だ。難しく考えずに勧善懲悪をなしてゆく水戸黄門的なカタルシスを与えながら、差別構造を分かりやすく描いて「女性差別はこんなに分かりやすく〈悪〉なんだ」と気付かせてくれる。 二人が社会をギッタギタにするのを期待したい。