小学館マンガの感想・レビュー4596件<<150151152153154>>非日常への扉団地ともお 小田扉ナベテツ以前友人とマンガの話をしていた時に、「無人島に持っていくならこの作品だ」と断言したことがあります。 全32巻というと長く感じるかもしれません。しかし、この作品は飽きることなく読むことが出来るのではないかと思っています。ナチュラルボーン小学生のともおの言葉は時に少年らしく、時には老成した大人のような時もあり、とても上質な笑いが沢山あります(勿論、ストレートなこともあるのですが)。 昔読んだ中島らもさんの小説の中で印象に残っている言葉なのですが、「大賢は大愚に通ず」という言葉があり、ともおは賢なのか愚なのか時に迷ったりします。 忙しい毎日の、日常からふっと離れることが出来る。忙しない生活を送っている人に読んで欲しい。そんな団地ギャグマンガです。生徒を救う優しい先生…!!INCUBUS IN CLASS 田辺狭介たか最初にタイトルを読んだとき「えっ、インキュバスってあのBLによく出てくるインキュバスであってる??」と不安になった作品。 少年サンデーという雑誌と『教室のインキュバス』というタイトルからお色気漫画かなと思いきや、実際は**「女子高・インキュバス・異種族」という要素を入れながらもエロに走らず設定で読ませるすごい読切**でした…!! https://twitter.com/y_suket/status/1148977955957137408?s=20 物語のあらすじは、「人間以外の種族がいる世界の女子高で教師をしているインキュバス(※女性の生気を吸い取る悪魔)の佐久真が、クラスの女子生徒を家庭内暴力から救う」というもの。 途中、主人公がクラスの生徒からインキュバスであることをいじられるシーンがあって、そのいじり方が「ああ〜、女子って若い男の先生をそうやってからかってたよなあ」と思わずしみじみしてしまうほどリアル。 **女子高生にいじられて疲れているらしい先生が、最後に報われる展開には「もっとやってくれ…!!」とテンション爆上がりました。** も〜! これはぜひ連載化してほしい…!! 田辺狭介先生の次回作を楽しみにしています!! (画像は本編より)名人に憧れた普通の青年が落語という世界で自分だけの道を探しだそうとする物語どうらく息子 尾瀬あきら名無し趣味ってのはなんでもそうだと思いますが、身近に先達がいないとなかなか身につきません。誰かが順序よく教えてくれないと、途中でイヤになってしまうのですね。それ以前に、どこから入っていいかわからず手を出せなくなってしまったり…。私が今、手を出そうか躊躇しているのは、Jazz、競輪、そして落語です。 『どうらく息子』は落語家の漫画です。落語を題材とした漫画といえば私の中では『寄席芸人伝』(古谷三敏)が永遠の金字塔であります。『寄席芸人伝』には名人と呼ばれた落語家達の、人間模様が描かれていました。彼ら名人は皆、自分だけの道を探しだし、その道を歩んでいきます。『どうらく息子』で描かれるのは、名人に憧れた普通の青年が落語という世界で自分だけの道を探しだそうとする物語です。 主人公・翔太は親戚の幼稚園でバイトする青年です。どうしたら子どもたちは笑ってくれるだろうか、どうしたら自分の話に引き込めるかを考えていた翔太は、人に進められるまま入った寄席で惜春亭銅楽の「時そば」を観ることに。まるでそこにそばがあるような銅楽の芸にのめり込んだ翔太は、銅楽の弟子になろうと、強く思い始めます…。 やがて、銅楽の弟子になり、銅ら壱という名前をもらった翔太の、金ない、ひまない前座の生活がはじまります。先輩方の生き方を見ながら、少しずつ銅ら壱は落語家としての道を歩んでいくのです。 『どうらく息子』は落語のシーンも魅力的です。落語のシーンは作中作として、登場人物が熊さんや与太郎として登場します。3巻の「牛ほめ」のちょっと抜けた与太郎は、まだまだ駆け出しの銅ら壱が登場しますが、その時の銅ら壱の状況とあわさって、なるほどなあと感じます。 私が特に心に残っているのは10巻で描かれる『紺屋高尾』。とても美しい話です。紆余曲折がありながら、二ツ目に昇進が決まった銅ら壱は、『紺屋高尾』という廓噺をものにしようとします。花魁と紺屋の職人の身分違いの恋の話ですが、花魁の了見がわからず苦戦します。しかし、時間をかけ、自身の恋愛も交えていくうちにだんだんと形を出来てきます。そして初見世。熱演する銅ら壱を象徴するように、シリアスに描かれる『紺屋高尾」の物語。そして、美しいクライマックスの後、舞台のシーンが一瞬交錯しそのままラストに…。 読み終わったあともしばらく余韻が残ります。猫の登場によって物語が動き出す。猫で人魚を釣る話 菅原亮きんアファームドB不器用な二人のラヴストーリーが猫をきっかけに動き出す。 ヒロインが色々な表情を見せるようになったり、主人公が行動を起こしたり、逆に話の流れを遮ったり、と。 マンガでしかできない魅せ方が非常に巧く、面白いのもこの作品の特徴。個性的なコマの使い方、ページの使い方をする。それがまた作品に良く合う。 上質のラヴストーリー、名作であり、尚且つマンガという媒体の良さを引き出して、見せてくれた良作。 バケモノ係!バケモノ係! 中嶋ゆか名無し言葉に出来ないぐらい大好きです‼ 中島ゆか先生これからもがんばってください!2巻も、期待してます! 作者の自伝的読切吉祥寺少年! 松江名俊名無しやんちゃな少年シュンは兄弟や近所の友だちと、元々旧国鉄の寮だった廃墟を秘密基地として遊んでいたが、地域が再開発の波にもまれ始めると、古い建物から容赦なく取り壊され、遊び場が無くなってゆく。 住みたい街ランキングで上位に入る吉祥寺の、現在からは想像できない姿をシュン少年の目線から見つめたノスタルジックな自伝的読切です。 人んちの敷地内を勝手に通り道にしたり、落とし穴を掘ったり、廃墟を秘密基地にしたりと、子供の頃の「やりたいこと全部やる」感が懐かしくて震えます。 中身が真っ白のジャンプにみんなでマンガを描こうとしたり、メンバーの頭文字をくっつけてペンネームを決めたりといったやりとりが、漫画家としての原点になったんだろうな。 どこからどこまでが事実かはわかりませんが、シュンの家が引っ越しをすることになり、めちゃ恐いお父さんに中止するよう直談判しに行ったらあっさり取り消しになったのはなんかリアルで、この辺は本当っぽいなと思いました。舞妓さんとまかない食べたい舞妓さんちのまかないさん 小山愛子名無したまたま読んだ話が舞妓さんがお客さんにご飯を注文してもらう回。 お腹が空いても動き回らねばならないお仕事。 食べたい時にご飯食べれないのね… 大変そうだけど漫画の世界の舞妓さんは頑張り屋で屁理屈一個漏らさない。 癒されるし、そんな舞妓さんが飯食ってる様を見るだけで多幸感に包まれます きゃわわ~北極百貨店のコンシェルジュさん 西村ツチカカッサンドラこれまた可愛らしい漫画だなと思って読んでみました。 動物モノはもちろん、コンシェルジュって面白い漫画多い気がする。 良かったです。ほんとに。動物さまの為に人間がご奉仕するなんて最高。 言葉がわかるなら私もボロボロになるまで絶滅危惧種の為に直接的に働きたいです。 かわいい~とかだけじゃなくて、いかにコンシェルジュとして気転を利かせて動くか、広い視野で見ているか、そんなところも少し考えながら読めるので、ちょっと役立つ内容です。これはスゴイ…!!圧倒的なファンタジー流離譚リューリタン 田埜宗一たか週刊少年サンデー2019年31号に掲載された、ガチガチにガチの硬派なファンタジー漫画。これを雑に「異世界漫画」と呼び、一般的な異世界モノと同じカテゴリには絶対入れたくない…! https://twitter.com/tano_so/status/1146183694077456384?s=20 異世界にやってきてしまった女子高生・アールが、「黒いマスク」を手がかりに同じトーキョーからやってきた人間を探しつつ観光を楽しむというストーリー。 ・雨の降りかたで120もの呼び方がある街 ・50年に一度ボードゲームの一手を指す街 ・寝相の悪い街 など、文化や習慣が異なる街が魅力的に描かれていてたまりません…! アールの移動手段「クロ」についての説明をあえてせず省いているところも、世界観を想像する余地を残してくれていてすごく好きです。 またたった1コマだけ描かれているアールの回想シーンで、現在とは違う「まだセーラー服(しかもリボンがない)を着ていたアール」が描かれていて、言葉を使わずに時間の経過を伝えているところが見事でした。 田埜宗一先生が描くファンタジーの世界への「流離譚」。絶対読んだほうがいい読切です…! https://csbs.shogakukan.co.jp/book?comic_id=31113 (画像は本編より)モザイク画のような美しさ魔女 五十嵐大介名無し僕の曾祖母は信州の山奥の村でまじない師をしていました。その村は、とにかくマムシが多く、噛まれて死んでしまう人が後を絶たなかったそうです。ある時、通りかかった旅の僧が、うちの先祖にマムシ毒に効く薬草とまじないを伝えました。その力は確かで(実際、マムシ毒に効果があるアルカロイドは植物由来であるそうです)、血清が普及するまではたくさんの人を救ったそうです。その薬草とまじないは代々長男の嫁に受け継がれてきたのですが、それも、ここ三代続いた嫁姑大戦争によって途絶えてしまいました。 自分のすぐ近く、当たり前の生活の中に、超自然的なものとの繋がりがあるのはとても不思議に感じます。 『魔女』に描かれるのは様々な魔女です。草原に住む魔女もいれば、都市に住む魔女、雪国に住む魔女や、ジャングルに住む魔女がいて、それぞれが違う体系の魔法を使います。ただ、自然と人間を仲立ちする者として魔女が存在するということだけが共通しています。 「KUARUPU」で描かれるのはジャングルに住む魔女。森を破壊し、開発しようとする政府に反対する魔女クマリは最後の手段として自分をエサにして森の強力な精霊を呼び寄せます。政府軍は先も見えない白い霧の中、緑の地獄を見るのですが……。クマリたちの一族は自然と共に生き、森を支配する精霊の力を得てきました。しかし、自然から切り離され精霊を信じない人間たちには、生命の尊厳を問う霊の声も届くことはありません。ただ最後に彼らは畏れるべき精霊の世界を目の当たりにするのです。 『魔女』に登場する精霊や魔術の世界は荘厳だったり、気色の悪い異形だったりさまざまなものが描かれています。そこにはモザイク画のような美しさがあります。細やかなものの集まりが全体を構築していくというモザイク画の美しさはこの作品のテーマそのものを表しているようにも思えます 誰かが生み出したもの、作ってくれたものの実態を知らず、出来上がったものの上でしか生活していない我々と違って、魔女たちの生活はそのどれもが自分で得た経験と行動を根っことした地に足がついたもの。今、目の前にあるものとが全ての宇宙につながっている……そんな宇宙を感じさせてくれる、『魔女』稀有な作品なのです。。 知らなかった!!!喪黒福次郎の仕事 藤子不二雄(A)ふくふく「笑ゥせぇるすまん」に弟がいたなんて!!しかもこんなちょいヤバな見た目で名前が福次郎ですよ!??見つけてすごいテンション上がりました。 内容もね、「笑ゥせぇるすまん」にかなり近い感じで…あらすじ読めばわかりますけど、兄とは違うんです! まさにブラックユーモアですね。短編で少し物足りない感じはありますが、読んでない方はぜひ!陽は沈みまた登る 夜の闇を超えて太陽の黙示録 かわぐちかいじ名無し文字通りに「国が割れてしまう」ドラマ。 そして日本国民の心も散り散りになってしまう。 諸外国の支援という形の侵略。 国外に退避せざるを得ず帰国もままならなくなる人達。 日本を再建したい、日本に帰りたいという様々な思い。 その思いの微妙な違いから集合離散や共闘や裏切りが生まれる。 かわぐちかいじ先生が凄く上手いのは 一途な信念に徹する人も、変節したかに見える人も、 それぞれの信念に基づく生き様であると描くこと。 けして漫画的なストーリーの面白さとして キャラを途中で変えてドンデン返しを 演出しているわけではない。 それぞれの信念に基づく人達が 状況の変化に対応していけば こうなるのが(残念ながら?)必然だ、 そう思わせる群像劇を展開して見せてくれる。愛してやまない佐久間ピンポン 松本大洋名無し僕は高校生入学直後に『ピンポン』を読んで、すぐさま卓球部に入りました。「読めば卓球をプレイしたくなる」というタイプの物語ではないのですが、この作品の圧倒的な画力と悲哀に突き動かされて思わず入部してしまったのです。主人公のひとり、月本と同じ 粒高のラバーまで用意したのに、中学生に負けてしまったのもいい思い出です…。 そういえば、『ピンポン』が『マインド・ゲーム』『ケモノヅメ』の湯浅監督によってアニメ化されます。『ピンポン』も湯浅監督作品もファンである私ですは大変期待しておるわけです。基本的には、漫画のアニメ化には期待をもたないようにしているのですが、今回ばかりはワケが違う。PVを見ただけでも大興奮でございます。 『ピンポン』という作品を、一言でいえば、キラ星のような天才と、天才を妬み、憧れる人びとの物語です。このキラ星のような天才が主人公である星野(ペコ)。卓球に絶対の自信を持つペコは、友人である月本(スマイル)の才能の開花を目の当たりにし、卓球から逃げてしまいます。けれど、逃げても苛立ちはつのるばかり。また一から卓球を志しスマイルが待ち望むヒーローとして復活するという、英雄復活の物語がメインストーリー。 私は、月本とペコ、二人の対照的な天才を見守る、普通の人びとに強い愛着を感じます。 上海ジュニアから脱落して卓球後進国・日本にこなければいけないことを呪う孔文革(チャイナ)。インターハイ二年連覇をしながらも、周囲の期待や、同じレベルで競えない同輩に苛立ちをもち、月本の才能を求める風間(ドラゴン)。若いころに怪我で引退した卓球選手で、月本に執着する老顧問・小泉(バタフライジョー)。 どこか影をもち、自分を変えてくれるヒーローを待ち望んでいる登場人物の中でもとくに僕が愛してやまないのが佐久間(アクマ)。ペコとスマイルの幼なじみの彼には卓球のセンスはありません。しかし、不断の努力でインターハイチャンピオンの風間と海王学園に入学し、レギュラーをつかみます。不器用な努力を重ね、星野を降すまで成長しますが、それでも尊敬する風間はスマイルにしか興味をもちません。佐久間は禁じられている対外試合を月本に挑むのですが……。月本にボロ負けした佐久間は叫びます「どうしてお前なんだよっ!? 一体どうしてっ!! 俺は努力したよっ!! おまえの10倍、いや100倍 1000倍」。それに対して月本はポツリと一言「それはアクマに卓球の才能がないからだよ。」 佐久間は卓球を捨てます。そして、道を諦めた後にも人生は続くことを佐久間は登場人物の誰よりも早く知ります。そんな彼だからこそ、卓球から逃げた星野の復活を促すシーン、大きなプレッシャーから試合前にトイレにこもる風間と話すシーンは本作でも屈指の輝きを放つのです。何度読んでも感動が止まらない。アニメを見る前にまずは漫画を! 至高で究極のツンデレキャラ 芹沢達也ラーメン発見伝 久部緑郎 河合単名無しツンデレって言葉があります。これは、そっけない態度をとる美少女が、好意をもった相手につい、いじわるをしてしまうような、大体そんな意味で使われる言葉です(べ、別にあなたのために解説したわけじゃないんだからね)。ツンが相手へのいじわる、デレは相手への好意ですね僕も御多分にもれず、ツンデレには色々とうるさいのです。さまざま、古今東西のツンデレキャラを思い浮かべ、何が至高で究極のツンデレかと考えると、やはりこれは『ラーメン発見伝』の芹沢達也(42)を挙げざるをえない。 『ラーメン発見伝』はラーメンが趣味の普通のサラリーマン・藤本が、様々なラーメンと出会い、自分自身のオリジナルのラーメンを完成させ独立する、そんな物語です。2000~2009年のラーメントレンドから、ラーメン経営の難しさにまで言及しているので、0年代ラーメン文化の通史ともいえる作品です。主人公・藤本のライバルになるのが、至高のツンデレ芹沢達也(42)。名前からもわかる通り、男。それもスキンヘッドです。芹沢はフードコーディネーターとしても有名ラーメン店の店長としても有名な、ラーメン界のトップ。自分にとって有用な人間には人当たりはよく、無用な人間に対してはとてつもなく冷徹です。多くの客を「舌バカな人間」と馬鹿にし芹沢は邪悪な笑顔と共に名言を吐きまくります。「ヤツらはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ。」この芹沢が、巨大な壁として藤本の前に立ちふさがり続けるのです。それも、26巻にわたって!昨今の、すぐに負け、すぐに味方になってしまう安いライバルに見習ってほしいくらい、骨太です。芹沢は藤本のことを認めながらも、それをおくびにも出さず、「所詮、優秀なラーメン・マニアでしかない」と挑発しつづけます。お前は経営者の苦しみも知らない、ただのマニアでしかないと。芹沢とそれを追う藤本の戦いも、はるばる26巻をかけてようやく終わります。これでついにデレるか?と思ったらそれでもまだデレない。芹沢達也しぶとい!まだデレない。そして最終回。独り立ちをする藤本についに芹沢達也はデレるのです。26巻ずーと藤本のライバルでいつづけた男(42歳)の至高のデレを、是非みなさんにも味わっていただきたいですね。行動理念は武士道道士郎でござる 西森博之名無し「力なき正義は無力なり、正義なき力は暴力なり」という言葉があります。社会的にも肉体的にも力のない僕には全く関係のない言葉ですが、『ザ・ムーン』や『DEATH NOTE』をはじめ、正義を問いかける作品は強くココロに残っています。その中でも、もっと身近な正義を描く『道士郎でござる!』が、僕は大好きなのです。 物語は、12年前にアメリカに渡った桐柳道士郎が、なぜか武士になって日本に帰ってくるところからはじまります。ふと、現代に蘇った憲兵を描く『ケンペーくん』(ならやたかし)を思い出しましたが、道士郎とは全く関係ありません(これもある意味、正義を問いかける作品であります)。道士郎はチートといえるほど強大な力を持つ男です。そして、行動理念は武士道。武士道的観点からクズだと思えば、ヤンキーだろうがヤクザだろうが問答無用で叩き潰します。道士郎が殴ればヤンキーは空中を回転しながら飛んでいき、復讐など考えられないほどのトラウマを植え付けられます。身近にある悪に天誅を下すのが道士郎なのです。 向かう所敵なしの道士郎の代わりに、物語の主役となっていくのが、道士郎に目をつけられ、殿にされてしまった健助です。健助は、小心者で、常識的で、自身に危険のない範囲で優しい、そんな普通の少年です。道士郎に関わったことで、ちょっとした優しさを発揮してしまったがゆえに、どんどん道を踏み外し、高校は退学し、転校した底辺校では級長になってしまい、挙句の果てに、ヤクザと対決するはめになります。 はじめのうちは、健助が巻き込まれたトラブルを道士郎とが解決するという、「水戸黄門」か「いけ、ピカチュウ!」のような展開もあります。しかし強大すぎる道士郎の力と見境のない正義感は、およそ制御できるものではなく、放っておけば無限にトラブルが拡大してしまうのです。社会から完全にはみ出した道士郎という存在に振り回されることなく一般生活を営むために、健助は自分の力で解決を目指すようになっていくのです。 健助はちっぽけな人間でしたが、道士郎によって追い詰められることで身につけたクソ度胸で、強大な敵に立ち向かうことができるようになります。どんな敵でも必ず倒す道士郎と、弱くて殴られても決して折れない健助の姿に、周囲のクズたちも少しずつ変わっていくのです。あの二人がいるから俺は頑張れる――そうやってグズでザコだったモブキャラが頑張る姿には心動かないはずがないのです。 とてつもなく笑えて、グズの所業に心から頭にきて、成長するキャラクターたちに感動する……全8巻の短い物語の中で、あらゆる方向に心が揺さぶられる、王道の名作が『道士郎でござる』なのです。医局の政治と変革医龍 乃木坂太郎 永井明名無し『シグルイ』の冒頭にはこのような言葉があります。「封建社会の完成形は 少数のサディストと多数のマゾヒストによって構成されるのだ」。『医龍』を読んでいて、この言葉を思い出しました。民主主義な現代日本を舞台にしていながら、『医龍』に描かれる医局はまさに封建社会そのものなのです。 『医龍』で描かれるのは医局の政治。医局の中は完全なる上下関係で、大多数の人間は上から押さえつけられ、自身の弱さにあえぐことになります。この作品内において、絶対的な強者が二名います。一人は胸部心臓外科を支配する医局長の野口。そしてもう一人、圧倒的な腕をもつが故に、組織に属さずにいられる天才外科医・朝田。 そして、最も大事なキャラクターが、医局内で最も地位の低い、研修医の伊集院です。物語は、医局で大過なく過ごすことしか考えていなかった伊集院が、天才・朝田との出会いによってどのように成長していくのかがポイントになっていきます。平凡な伊集院が、どんな道を選びのか…それが医局の変革になっていくのです。 伊集院が朝田というスターを見ながら自分自身の道を探していく過程はとでも面白いのですが、私は彼らの周りにいる弱者に興味が移ってしまいます。 とくに木原と霧島の二人が好きです。伊集院のかつての指導医・木原は、上に媚び、下に強くあたる人間です。医局から追い出されるのを恐れ、よるべき大樹を常にさがしています。そこに野口の推す教授候補として現れたのが霧島。霧島はかつて、朝田に罪をなすりつけ当時いた大学から追い出したことがあります。朝田の天才的な技術に羨望と同時にコンプレックスを感じているのです。 木原は当初、野口の推薦ということで霧島に取り行っていましたが、だんだんと霧島に共感していくのです。14~15巻のエピソードにそれが描かれています。手術中、霧島のミスをかばい、自身が医局から追い出されるかもしれない時、木原は全てを野口に言おうかと思います。けれど木原はそれをしませんでした。あの弱い木原がなぜそうしなかったのか…ここは屈指の名シーンです。その言葉に、霧島は朝田へのコンプレックスから解放され、自分だけの道を見つけることとなります。 ただ、霧島と木原の関係が、これで終わらないのもこの漫画の面白いところ。紆余曲折を越えた最終エピソードでも一番の輝きを放っていたのが、この木原と霧島。平凡で、ずるくて、弱いけれども、それでも前にむかおうとする普通の人々が美しく思える漫画なのです。 Twitterでバズりそう愛出優沙だって恋できるもん 辻島もと名無し愛出優沙(メデューサ)ちゃんと、超地味メン彼氏の可愛らしいやり取り。この2人がどうやってくっついたのか気になりすぎるよ! 愛出優沙ちゃんは自分のことあーしっていうヤンキーなのに、彼のこと蛇ぁー(ダーリンの意だよね)って呼ぶ、めちゃデレじゃん。なんなの。もやもやするねもやもや ちゃんやつ名無しヒロインが最後まで全く振り向く素振りがないところがよかった。 でも好きな女の子のためにわざわざ殴られるほど正義感強いなら覗きしないっしょ 主人公は、もやもやの正体が恋だと気付いて、失恋してもやもやが晴れたみたいだけど、こっちのもやもやはあんまり晴れなかったな独特の絵セッちゃん 大島智子大トロ※ネタバレを含むクチコミです。 響のバトル成績まとめ響~小説家になる方法~ 柳本光晴まくらうど※ネタバレを含むクチコミです。歳を重ねる不安がどこかに吹っ飛ぶその女、ジルバ 有間しのぶ名無しこんな店があったら絶対に通いたい! 40歳の主人公が「若い子」と言われる店で、高齢のホステスたちが毎夜愛のこもった接客をしてくれる。 酸いも甘いも知り尽くした女たちの、明るくて大きく包み込む優しさに、主人公も抱いている不安(40歳独身恋人なし、きつい仕事、貯金なし、田舎の親の心配…)を蹴散らして、これからの生き方を自分で変えてゆく。 読むと年を取ることはちっともマイナスなことではなく、むしろ逆で、プラスでしかないんだと思えます。 アララがホステスたちに影響され新たな生き方を見つけていきながら、同じように将来に希望を見いだせず腐っていた友人をも巻き込んで前を向いて強くなってゆくさまが痛快です。気持ちの変化による見た目の若返りかたも面白い。 後半は店を立ち上げた女性ジルバやくじらママがどのように生きて来たのかを振り返るのがメインです。 この店で働く以上、ジルバという人間のことを知る必要があるのでしょうが、壮絶な生き様を追体験するような感覚があるので読む手が少々重くなります。 40を越えたら自分もこんな店をつくりたいな〜…。当代随一のデコ貧乳マエストロくノ一ツバキの胸の内 山本崇一朗mampuku 男を見たことがないくノ一だけの里で悶々と暮らすラブ未満コメディ。「からかい上手の高木さん」作者だけあってチャームポイントのおでこ、ぺったんこの胸、少女性の中に仄かに香るバブみ、素晴らしいです。「美少女」という概念に頼らずに可愛い女の子を描く天才。 ムッツリスケベな主人公ツバキが妄想逞しくしているだけの話かと思いきや、個性豊かな同僚のくノ一たちとの切磋琢磨も微笑ましく描かれています。 巻末のオマケ漫画に高木さんがゲスト出演していますが、さすがナイスからかいでした。 人生つらいけどサンバ歯のマンガ カトちゃんの花嫁hysysk友達が授業中に描いたような、それでいてマンガであることが既にギャグになっている(マンガやトレンディドラマで使われがちなセリフや智恵子抄のコミカライズ)、高度なギャグマンガ。これをやれと言われても実際は難しいのだが、これでいいんだ、と錯覚させてくれる。3馬鹿トリオこそ真の主人公ガンバ! Fly high 菊田洋之 森末慎二名無しスポーツで汗を流す青春って妬ましいですね。僕が一人きりの部屋で不健康な汗をかいていたとき、グランドや体育館で健康的な汗をかいていた彼らは、きっと美人マネージャーと幸せな関係になっていったのでしょう。僕は2次元な彼女と不適切な関係になっていたというのに……。ああ妬ましい。今回紹介する『ガンバ! Fly high』も“スポーツ”と“ねたみ”というキーワードは欠かせません。「オリンピックで金メダルをとりたい」と、逆立ちもできない運動音痴の藤巻駿が飛び込んだのは、県最弱の平成学園体操部。そこには、一芸だけは秀でた三馬鹿トリオの先輩、内田、真田、東がいた。藤巻のひたむきな姿に3人も影響されて――。そんなプロローグから始まる『ガンバ~』の主人公・藤巻駿は典型的な少年漫画の主人公です。はじめはどんくさいけれど、眠った大きな才能をもち、努力を厭わない。あっと言う間に日本代表になり、世界初のオリジナル技を発明するまでになります。しかしこうなると、なんとも感情移入できなっなくなってしまいます。「努力とかいいながらも、結局“天才”の物語かよ」と。ああ妬ましい。しかし、『ガンバ~』はひとあじ違う。後半になると、完璧超人となった藤巻から、藤巻に追いこされてしまった3馬鹿トリオにフォーカスが移るのです。身近にいる天才・藤巻が世界の舞台で活躍するのをみて、感動しながらも焦りを感じた内田と真田は、自分なりの努力を重ねます。しかし、どうしても、どうしても、藤巻の背に追いつくことができない。藤巻に逆立ちを教えた内田は言います。 「俺はあいつに負けたくねえのよ! 体操の技術がどうとか得点がどうとかじゃなく、一生懸命ガンバるってことにおいて!」 決定的に実力の違う天才の背中を見ながらも、そんな気持ちをストレートに吐きだし踏ん張り続ける3馬鹿トリオこそ、読者が感情移入に足る、真の主人公だと思えてならないのです。これは、ひとつの【凡人萌え】マンガの極みと言えるではないでしょうか。そうジメジメした部屋の中で思うのです。<<150151152153154>>
以前友人とマンガの話をしていた時に、「無人島に持っていくならこの作品だ」と断言したことがあります。 全32巻というと長く感じるかもしれません。しかし、この作品は飽きることなく読むことが出来るのではないかと思っています。ナチュラルボーン小学生のともおの言葉は時に少年らしく、時には老成した大人のような時もあり、とても上質な笑いが沢山あります(勿論、ストレートなこともあるのですが)。 昔読んだ中島らもさんの小説の中で印象に残っている言葉なのですが、「大賢は大愚に通ず」という言葉があり、ともおは賢なのか愚なのか時に迷ったりします。 忙しい毎日の、日常からふっと離れることが出来る。忙しない生活を送っている人に読んで欲しい。そんな団地ギャグマンガです。