(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し
1年以上前
宮谷一彦は、近年『ライク ア ローリング ストーン』が初単行本化され話題となったが、それをきっかけに再評価されたかと言えば、そうでもないような気がする。 この、「劇画の時代」が生んだ最後にして最強の漫画家を受け入れるには、まだ時代がちょっと追いつけていないのかもしれない。 はっぴいえんどの『風街ろまん』ジャケとか、「スクリーントーンを初めて削った人」とか、いろいろな伝説に彩られた漫画史の重要人物なんですがねえ。 とはいえ、『性蝕記』『とうきょう屠民エレジー』のような代表作が簡単に読めるわけでもないし、だいたい、このあたりを今の読者が読んでも面白いと感じられるかどうかは、なかなかハードルが高いし。 なーんて悩まれているかたは、これですよ、『人魚伝説』! 映画化されたこともあり(池田敏春という異能の監督の代表作でしょう)、何度か単行本化されているので、中古でもそれなりに手に入れやすいのではないでしょうか?(電書は出てないのかな) ストーリーもシンプルでリーダブルだし、なにより提示されるイメージがとても凄い。 例えば、「下顎から上が断ち切られた死者によって操縦されるモーターボートに引きずられ、荒海を地獄へ堕ちていく主人公」とか、極めつけに悪夢的な見開きを、ぜひ見ていただきたい! 現在の読者にも、宮谷一彦という時代を駆け抜けたスペシャルな才能のとんでもなさが、ビンビンに感じられると思いますよ。 (『ライク ア~』は入手が容易です。これは本当に「時代を代表する」ものなので、よろしければ)
名無し
1年以上前
まだ子供で、ウソをつくことは悪いことであり 大人はウソをつかないと思っていたころに読んだ。 ノンフィクションはノンフィクションであり、 フィクションはフィクションだと思っていた。 それで極真空手に入門したわけではないが、 極真空手こそ史上最強だと思っていた。 マス・オオヤマは世界中でリングでも 私闘でも戦いまくったのだと思っていた。 サファーデはコマのように回転し続け、 カポエラは逆立ちし続けるものと思っていた。 李青鵬こそ最強の敵であり決闘の後には わかりあえて良かったなあと思っていた。 芦原英幸は山狩りを跳ね除け、 添野義二は減量苦を跳ね除けたと思っていた。 猪木vsウィリー戦はウィリーが勝つと思っていた。 もっとも大きな衝撃を受けたのは 極真空手は正拳や肘での顔面攻撃アリだと 思っていて、それが禁じ手だと知ったときだった。 初めて空手バカ一代をよんでから、 それが分かったのは20年以上はたってからだ。 そうだといわれて、 え、あれ、でも漫画では使っていたし、と困惑した。 そして漫画の中では正拳や肘打ちでの 顔面攻撃が、試合ではなく私闘でしか 繰り出されていないことを確認して思った。 「なんて上手い漫画なんだ!」と(笑)。 あいかわらず空手の実体験は無く、 漫画や文献、動画でみることしかない 格闘技オタクではあるが、 今は、極真空手も他のフルコン系も、 いわゆる寸止めだったり形重視の空手も それぞれ、分かったようなつもりで それぞれを見させてもらっている。 信じていた、ならそれゆえに 裏切られた、という心の傷を負うかもしれない。 私は信じたわけではない、思った、だ。 なので驚いたけれど傷ついてはいない。 だから空手バカ一代を読んで 「上手いこと騙された」とは思うが、 傷ついたり恨んでやるとは思っていない。 充分すぎるほど楽しんで興奮させてもらったから。 そして騙されたと思いつつも、まだ 極真は最強かもと思わせてくれているから。