名無し
1年以上前
わたくしは、世の皆様に比べれば、まったくゾンビに詳しく無いのです。ロメロがどうした、「28日後…」がどうした、そんな話をされても困ってしまうのです。とはいえ、「もし、世界がゾンビで溢れたら…」という非常事態に対するイメージトレーニングは欠かしません。直下型地震を想定するように、ゾンビ被害を想定する…それが30代オタクなのです。  『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―』は、ある日突然ゾンビが世界に溢れ、日常が崩壊していくゾンビパニック漫画。ただ、ゾンビの性質がほかの作品と違います。この作品に登場する女性のゾンビ(女ンビ)は、知能があり会話もできるのですが、ひたすら生きた男性の肉を求めさまよいます。女ンビに襲われ殺された男性は、女ンビのみを標的とする知能のないゾンビとして蘇るのです(生きている女性や男性は襲わない)。  物語の主人公となるのは、ひたすら女と縁がない生活を送っていたニート&フリーターと女子高生。彼らはあまりにも女性と縁がなかったため、襲われずにすんだのです!リア充どもは真っ先に襲われてゾンビ化ですよ!  日常は完全に崩壊し、逃げ惑う彼らが逃げ込んだのは、あの中野ブロードウェイ。薄暗くてマニアックな店が並ぶ、日本屈指の混沌としたビルが舞台とは…。ゾンビといえばショッピングセンターが定番ですが、この展開に興奮しないオタクがいるだろうか。いや、いない。  今や廃墟となってしまったオタクの城で、痴女のようになってしまった女ンビに股間を狙われながら、彼らは生き残る道を探していいきます。  エロもグロも盛りだくさん、でもそれらを覆い尽くすギャグとスピーディーな展開が非常に興奮するゾンビ漫画なのです。
ナベテツ
ナベテツ
1年以上前
仏教ってなんだろう。多分、ほとんどの人間は気にせずに生きていると思います。お墓参りをする。お葬式で手を合わせる。法事でお坊さんの話を聞く。日常向き合う機会はそんなに多くは無いけど、でも欠かすことは出来ない。 ブッダの説いた教えと、今の日本で日常に溶け込んでいるお坊さんとの距離は、恐ろしく離れています。そして、その距離に対して本気で向き合うお坊さんがいたとしたら―。 作者の朔ユキ蔵先生は、エロスとタナトスを描く作家さんなのですが、この作品は我々の人生に(恐らく)欠くことの出来ない日本の仏教というものを題材にして、自分の持つ作家性とテーマを発揮した作品だと思っています。 主人公の佐伯清玄は日本の坊主としてではなく、仏陀の教えを実践する宗教者として生きていきたいと願っていながら、己の抱える煩悩を捨てることが出来ず、揺れ続けています。 読者は清玄の揺れる心情と、展開される物語に心揺さぶられながら最後まで作品を読み続けることになると思います。 ラストシーンの美しさは、一瞬の時間を永遠のものとした詩のようであり、だからこそ読者の脳裏に忘れ難く刻まれます。最近完結した「神様の横顔」とともに広く読まれて欲しい。そう願って止まない傑作です。