現代のリアルなお坊さん事情も分かる
主人公が性欲に溺れるお坊さんという強烈なフックから始まりますが、最後まで読むと印象が変わる漫画です。特にラスト1Pにこの山場を持ってくるか〜!!と興奮しました。 現代のリアルなお坊さん事情も知ることが出来て勉強になりますね。檀家さんとの付き合いはお坊さん側から見ても大変なんだなぁ…。今まで自分も「お経を上げてもらうだけなのにお布施って高いよな〜」と思ってたんですけど、お布施の本当の意味を知ることで気持ちが変わりました。 蘇民祭が中止になるニュースで住職が「お祭りの時だけではなく日々の生活で手を合わせることを心に留めて欲しい」とおっしゃってたのを思い出しました。
仏教ってなんだろう。多分、ほとんどの人間は気にせずに生きていると思います。お墓参りをする。お葬式で手を合わせる。法事でお坊さんの話を聞く。日常向き合う機会はそんなに多くは無いけど、でも欠かすことは出来ない。
ブッダの説いた教えと、今の日本で日常に溶け込んでいるお坊さんとの距離は、恐ろしく離れています。そして、その距離に対して本気で向き合うお坊さんがいたとしたら―。
作者の朔ユキ蔵先生は、エロスとタナトスを描く作家さんなのですが、この作品は我々の人生に(恐らく)欠くことの出来ない日本の仏教というものを題材にして、自分の持つ作家性とテーマを発揮した作品だと思っています。
主人公の佐伯清玄は日本の坊主としてではなく、仏陀の教えを実践する宗教者として生きていきたいと願っていながら、己の抱える煩悩を捨てることが出来ず、揺れ続けています。
読者は清玄の揺れる心情と、展開される物語に心揺さぶられながら最後まで作品を読み続けることになると思います。
ラストシーンの美しさは、一瞬の時間を永遠のものとした詩のようであり、だからこそ読者の脳裏に忘れ難く刻まれます。最近完結した「神様の横顔」とともに広く読まれて欲しい。そう願って止まない傑作です。
気になって読みました。
仏教がテーマだと説教くさいんじゃないかと避けてましたが全然そんな事ない!
幼馴染にお寺の子がいたので仏教の道で働く人のこと、少しは理解してると思ってましたがこの漫画で「ああ、こういうこと教わって考えてるかもしれない」とちょっと知った気になってます。
エロスとタナトスを描かれる作家→わかります。
この漫画とか神様の横顔とか読んでてしっかりとした重みというか、筋が通ってる気がするのは作者の持ち味、作家性、一番表現したい事なんでしょうね。
読んだあとどうこう言えず、名作だ、と唸るのみです。
いい漫画に出会えました、感謝です!
朔先生の作品は結構好き嫌い別れるとこなんですけど、ここで挙げた作品は漫画好きなら読んで損するこたないと胸張って言えるんで、良い出会いだったら何よりです。