あらすじ

木の上で節子と語らう中、突如吐血した清徹。清玄、節子、そして家族が見守る中、刻一刻と近づく最期の“その刻”──。「友よ、さようなら」颯爽と走り抜けた清徹のその足跡は、周囲に大きな波紋を遺していく。清玄の道、節子の道、家族の道…。それぞれの心の行き着く先は──?お寺系、恋愛&無常ストーリー、ついに完結!
お慕い申し上げます(1)

望んで(?)望まれて(?)実家の副住職となった佐伯清玄29歳。僧として妻を娶らないと心に決めている清玄の生活は、言葉とは裏腹に色欲に負けっぱなしで…。今日もまた、“言い訳たっぷり悶々ライフ”が始まります!!

お慕い申し上げます(2)

僧としての高い志と色欲の狭間で悩む、実家のお寺の副住職・佐伯清玄。断ったはずのお見合い相手の女性・節子が寺に弟子入りしてきて、清玄の悶々ライフはさらに加速!そんな中、同僚の清徹と節子の距離が一気に縮まりココロ穏やかでない清玄が大失態を…!?お寺の中の三角関係、急展開です!

お慕い申し上げます(3)

色欲に負けっぱなしで、暴走&空回りする清玄。粛々と己の仏道を貫き通す清徹。ココロの闇と向き合いながらも、清徹への想いが深まる節子…。お寺の中の三角関係は、想いが絡まり行ったり来たり。そんな三人のもとへ、突然現れたのは節子の兄で…?ますます波乱の予感です!

お慕い申し上げます(4)

清徹への想いが止められず、ついにあふれ出てしまった節子。そんな突然の節子の告白に清徹が返した言葉とは…?一方、悩める節子を見守る清玄は、相変わらず悶々ライフを抑えられずにいて…。そんな中、峰博和尚に異変が起き祥願寺に予期せぬ出来事が!?さらなる波乱が起こります!

お慕い申し上げます(5)

「余命三か月。末期癌です。」突然、清徹から病気と余命の告白を受けた節子──。自分を見届けて欲しいという清徹に、節子は大胆にも“ともに寝る”ことをお願いするが…?一方、己の定まらない信念に悩む清玄は、言いようのない胸騒ぎを抑えられずにいて……。あまりにも突然に動き出した三人の運命は、急速に、大きく坂道を駆け抜けていく。そしてついに、物語は佳境へ──。

お慕い申し上げます(6)

木の上で節子と語らう中、突如吐血した清徹。清玄、節子、そして家族が見守る中、刻一刻と近づく最期の“その刻”──。「友よ、さようなら」颯爽と走り抜けた清徹のその足跡は、周囲に大きな波紋を遺していく。清玄の道、節子の道、家族の道…。それぞれの心の行き着く先は──?お寺系、恋愛&無常ストーリー、ついに完結!

お慕い申し上げます

魂の行く先

お慕い申し上げます 朔ユキ蔵
ナベテツ
ナベテツ

仏教ってなんだろう。多分、ほとんどの人間は気にせずに生きていると思います。お墓参りをする。お葬式で手を合わせる。法事でお坊さんの話を聞く。日常向き合う機会はそんなに多くは無いけど、でも欠かすことは出来ない。 ブッダの説いた教えと、今の日本で日常に溶け込んでいるお坊さんとの距離は、恐ろしく離れています。そして、その距離に対して本気で向き合うお坊さんがいたとしたら―。 作者の朔ユキ蔵先生は、エロスとタナトスを描く作家さんなのですが、この作品は我々の人生に(恐らく)欠くことの出来ない日本の仏教というものを題材にして、自分の持つ作家性とテーマを発揮した作品だと思っています。 主人公の佐伯清玄は日本の坊主としてではなく、仏陀の教えを実践する宗教者として生きていきたいと願っていながら、己の抱える煩悩を捨てることが出来ず、揺れ続けています。 読者は清玄の揺れる心情と、展開される物語に心揺さぶられながら最後まで作品を読み続けることになると思います。 ラストシーンの美しさは、一瞬の時間を永遠のものとした詩のようであり、だからこそ読者の脳裏に忘れ難く刻まれます。最近完結した「神様の横顔」とともに広く読まれて欲しい。そう願って止まない傑作です。