あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前
文明の断絶、野生の侵攻……変わり果てた世界に取り残された、父と小・中・高の三姉妹。どうやったら元に戻れる……いやそれより、どうやってここで生きていこう? ……と言いつつ、家族の他に誰もいないこの世界。どこに入っても、何をお借りしても自由!残された文明を遊ぶ家族は、基本楽しそうで、明るい。この自由感、例えば『地球の放課後』(吉富昭仁先生)と同等か、さらにゆるい。 父は「まずは食が大事!」と方針を定め、残された加工食品を費やしつつ、少しずつ野生からの食材調達を試みるが、次第に家族は、ある事に気付く。 「自然旨っ!」 娘達は、素材の味と父の調理技術で大地の恵みを満喫しながら、少しずつ新たな食材を求めて努力を始める。 それはすぐに上手くはいかないが、苦心と労力にはリアルが感じられ、少しずつ新たな挑戦が実る喜びも、共に感じられる。 そして家族が乗り出す世界は、文明の残骸に自然が侵食してきた退行世界。時が止まった寂しさと、巨大な文明を飲み込む自然の雄大さ。この魅力を理解するとしたら…… 恐らく、廃墟マニア。 荒廃した世界に圧倒される子供たちの小ささと、咎める者のない自由の中で躍動する、若い身体を交互に描写し、世界を生き生きと輝かせるこの作品。 絶望なんか追いやって、今を生きることを「ゆるく」満喫する家族と共に、退行世界を楽しみたい。 3巻までの感想。
名無し
1年以上前
最強の男は誰か、最強の格闘技は何か、を追求するなら 個々人の資質やセンスや体格や体力や修練度を 最高レベルで均一化したうえで、 打・投・極の全てをいかんなく発揮できるルールを作り、 身分や立場や金銭的なメリットデメリットなどのしがらみを 無くして平均化して、 多数が同時に心身ともにベストコンディションで 戦える場に選手一同を終結さけなければならない。 そんなことは現実には不可能だ。 だからこそ古今東西、漫画・小説・TV・映画という 夢を現実化できる世界で、数え切れないほどに テーマにされて作品化されている。 だがそれでいて、いまだに これが最高、これが究極、これこそがリアルだと 万人を納得させる作品は出現していない。 リアルとドリーミイのバランス取りが難しすぎるのだろう。 ある意味で作品化、描写が不可能レベルな難題で 「最強論漫画」は永遠の夢なのかもしれない。 その最強論漫画への挑戦・証明のための手法として、 リアリティとドリーミイをいい感じにミックスして 凄くいい感じに魅せてくれているのが 原作・夢枕獏、作画・板垣恵介の「餓狼伝」だと思う。 矛盾した言い方になるがリアリティとドリーミイが それぞれに充分に共存した漫画になっている。 空手・柔術・プロレス・ボクシングなどの 各種格闘技の(前記した条件を満たした)精鋭が 一同に会して闘うという 「現実にはありえんだろ」という世界を 小説(原作)や漫画だからドリーミイをある程度まで 魅せてくれている作品は他にも少なからずある。 「餓狼伝」もそういった、漫画だからこそ成立している ドリーミイな面はあるし、その面での描き方も凄く面白いのだが、 それだけではない板垣先生ならではの上手い描き方が 「餓狼伝」では、なされていると思う。 添付画像は第三巻からの抜粋だが、 夜の公園で闘っている二人の攻防のポイントを 的確に判りやすくコマ割りして絵にしている。 そしてそれだけでなく、 「電灯が揺れる」 シーンを間に挿入している。 たった一つのコマではあるが、 普通に格闘場面を描き、そこにリアリティを強調しようと だけ考えたら、なかなか揺れる電灯のコマなんて この流れの中に挿入出来ない、描かない。 だがこの一見、たいした意味のなさそうな一コマで 単純に技に入り決める動作を連続写真的に 絵にするだけの漫画よりも、 投げ、電灯、絶息、手のクラッチという流れにすることで リアルとドリーミイが判りやすく漫画として成立している。 こんな感じの、ただリアルを追求するだけの 絵やコマ割りだけではない、漫画手法としての ドリーミイがあちこちに描かれている。 それはもともとの夢枕獏先生の原作にそれだけの 要素が詰まっていたのだろうけれど それをまた板垣先生が上手く漫画化したんだな、 と感じている。
最強の男は誰か、最強の格闘技は何か、を追求するなら
個々人の資質やセンスや体格や体力や修練度...
TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫
1年以上前
まず、度肝を抜かれるのが巻頭にフルカラーで収録されている「おなもみ」です。 遠くに引っ越してしまう幼なじみの少女に対する未練を少年の視点から極限にまで削ぎ落とされた台詞と洗練された演出、メタファーを使うことでわずか8ページで描写しきった傑作です。初めて読んだのは何年も前ですが今だにその時の衝撃が忘れられません。特に見開きの一枚絵の構図と吹き出しの位置はこれまでの自分漫画体験には全くないもので「こんな漫画の見せ方があったのか!?」とパニック状態になりました。 また、色彩センスも抜群で少女漫画らしい水彩メインのパステルカラーで実在感がありながらもどこか幻想的な空間を描き切っています。 かわかみ先生の作品、特にこの本に収録されている作品には、女性作家でありながら男性目線のモノローグで男性が女性に対して密かに抱いている感情を暴き出しています。一見すると男性に対して厳しい目線が向けられているように見えますが、逆にそこまで理解してくれた上でこのような作品を書いて世間の男性に対して接しているのだと考えると非常に慈愛に満ちた作品として捉えることができる作品が多いです。 なので、女性はもちろんですが、男性にも読んでいただきたい一冊です。