響子と父さん

「ネムルバカ」(石黒正数)のアナザーストーリー

響子と父さん 石黒正数
六文銭
六文銭

本作を読む前にぜひ「ネムルバカ」を読むことをオススメします。 「ネムルバカ」は1巻完結となっておりますが、自分的には本作とセットで2巻とみなして欲しいッ…とさえ思っております。 小生「石黒正数」作品が好きなのですが、なかでも「ネムルバカ」は名作だと思っておる勢です。 本作は「ネムルバカ」の主人公の一人だった春香の「家族」を描いた作品。 「ネムルバカ」のアナザーストーリーともいえる位置づけ。 ネムルバカの衝撃的なラストで気持ちがロスした人は、この1冊を読めばなんとも救われた感じになるかと思います。 内容としては、春香の姉響子と父との日常を描いた物語。 突飛な行動をした父に響子が振り回される形で進んでいきます。 日常のちょっとした疑問や不思議を織り交ぜて面白くする様は、いつもの石黒節とも言える雰囲気です。 とにかく父が良い味を出しているんですよ。 破天荒な春香によく似た父で、頑固でシニカル、ぶっとんだ発想が「THE・昭和の親父」臭がしてたまらないです。 親父にだって何かと苦労があるのですが、誰もわかってくれない空回り具合と、それでも自分の価値観を曲げずに生きている様は不思議と勇気づけられます。 春香の過去や、ちょっとですが現状の春香も登場します。 あのラストで心配だった「ネムルバカ」ファンの人は一見の価値があると思います。 テーマとしては「家族」的なものなのでしょうが、 家族の暖かさだけでなく、身内故にままならない部分もあって、酸いも甘いも表現されているのが個人的に好きなポイントです。 「ネムルバカ」が思春期の衝動と葛藤的なものだとしたら、こちらの「響子とお父さん」は一歩引いた大人の味なのかもしれません。

結婚するって、本当ですか

青年漫画の偽装結婚ものは珍しい?#1巻応援

結婚するって、本当ですか 若木民喜
六文銭
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少女・女性漫画では、一大ジャンルになっていると思う「偽装結婚」ものだが、青年誌では珍しいなと思い読んでみた。 私、ドツボです。 「モブ子の恋」もそうなんですが、こういう恋愛に対して地味めなカップルが恋愛を意識していく過程みるの好きなんですよ。 それが例え、偽装でも。 特に、恋愛以外に強い価値観があって、それを中心とした生活に満足しているようなカップルーいわゆる恋愛脳ではないので、そこからどうやって発展していくのかが興味津々なのです。 本作も、そんな感じ。 主人公大原は、他人よりもワンテンポ遅れているようなのんびりした性格で、猫と暮らすことに生きがいを感じている。 ヒロインの本城寺は、人をみつめる癖があるのに無表情・無口なため職場で異様な怖さを出しているが、家で一人地図を眺めるのが好き。 二人共、家で過ごすことに喜びと生きがいを感じている。 そんな中、二人の勤務先の旅行会社で海外に出張しなければならない(しかも、ロシア)人員の選抜がはじまる。 候補は独身者。 充実したシングルライフを守るため、大原と本城寺は結婚して(厳密には結婚したことにして)、この選抜から逃れようという流れ。 自分のメリットがなければ結婚しないという、なんとも現代的な価値観だが、納得感のある感じ。 職場の人間に結婚を報告し、祝福されるのを二人が一生懸命取り繕っていく過程で、少しづつお互いの価値観を共有・理解していきます。 まだ1巻なんですが、最後に少し意識しはじめる描写があり、これからの展開に期待しかないです。 続刊楽しみすぎる。 余談ですが、本城寺さんが死ぬほど可愛いです。 年上だからと張り切る姿も、結果空回りして反省するところも、何より1人部屋でスウェットみたいなの着てニコニコ地図を眺める姿・・・普段、無表情だからか、そのギャップにやられてしまいました。 ベタですが、いいものです。

野原ひろし 昼メシの流儀

中年男性に響く安定した面白さ2

野原ひろし 昼メシの流儀 臼井儀人 塚原洋一
六文銭
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中年男性に響くといえば『1日外出録ハンチョウ』と2大巨頭だと思っている本作。 正直、言います。最初読んだ時 「野原ひろしである必要あるか?」 と思いましたし、最新刊読んだ今もその思いは変わらないです。 野原家の設定、必要あるのだろうか? しんちゃんも、ひまわりも、みさえも、シロも一切出てこないです。 セリフか、手とか体の一部しか出てこない。 そうなってくると、これはもう我々が知っている「野原ひろし」じゃない別の人間なんじゃないかと思えてくる。 というか、そう思えても、別に何の問題ないです。 有りていに言えば、おっさんが一人昼飯を食べるだけの漫画だからだ。 これが何故か面白い。 「孤独のグルメ」も、そうなのですが、ちょっとした料理の豆知識とともに、ひたすらおっさんが食べたいものを美味しそうに食べている。 ただ、それだけなのに不思議と面白い。 料理をどう食べていくかの順番を、思考で組み立てていく感じが読んでいて楽しいのか、いまいち言語化できないので、もう読んで欲しいとさえ思う。 孤独のグルメが好きなら、たぶん好きになると思います。 何も考えずに読めて気づけば全部終わっているという、するする読めて、そのわりに何度も読みたくなるクセになる作品です。

1日外出録ハンチョウ

中年男性に響く安定した面白さ

1日外出録ハンチョウ 福本伸行 萩原天晴 上原求 新井和也
六文銭
六文銭

年齢のせいか、どんなに面白くても、3ヶ月後とか下手したら半年後の刊行速度についていけず脱落する漫画が多々ある私ですが(カイジも堕天録までのヘタレです。)本作だけは新刊を見落とさず購入してしまう謎の魅力がある。 内容は、カイジの破壊録で出てきた班長・大槻とその部下沼川と石和の3人の休日を描いた作品。 3人のおっさんの休日を描いただけ、と言われればそうなのですが、これが絶妙に面白い。 そもそも、破壊録を読むとわかるが、普段は債務者の集まり通称「地下牢獄」にいて、そこで3Kも裸足で逃げる過酷な重労働をしている3人。 そして、そこの制度で「1日外出券」というのがあるのだが、これが、べらぼうに高い値段で、安々と外には出れないようになっている。 だからこそ、この「休日の外出」というのは彼らにとって超がつくほど貴重なのだ。 貴重な外出を有意義に過ごすために、1食ですら手を抜かず試行錯誤し、 突き詰めて実行している様は、日々の生活にちょとした工夫で楽しくなるエッセンスが盛りだくさんだったりします。 ただの日常というよりは、おっさん世代が興味ありそうなもの(食とか大人の趣味とか)を中心に取り上げ、持論を展開してく様は興味深く読めます。大したことないテーマでも、熱量あれば面白い。 特に昔話など微妙に自分とかぶる話題があって、おっさんあるあるも個人的にはツボなんですよね。 (余談ですが、5巻にZoneの「secret base」を歌うシーンがあって、「君と夏の終り~ 将来の夢~ フンフフフフン ~」 とフンでごまかす姿は腹抱えて笑いました。昔、全く同じシーンを経験したので。皆そこ忘れるんだと。) ハンチョウだけでなく、平日労働している我々にとっても休日は重要なはずなんです。 これ読んで、もっと休日を、ひいては1日1日を大事にしようと思いました(大げさ)

ハコヅメ~交番女子の逆襲~

ギャグとシリアスが絶妙な警察漫画

ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 泰三子
六文銭
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元警察官が著者が描く、実録?警察漫画。 基本1話完結形式。 ぬるりとしたギャグ中心かと思えば、かなりシリアスな展開もあり、その配分が絶妙です。 警察官を見ると、何もしてなくても反応してしまいますよね。 警察手帳出されて 「・・・わかっているな?」 と言われれば、 「はい・・・申し訳ありません。」 と、誰だって言ってしまうと思うんです。(言わないか?) それくらい、権力というか存在感があると思うんです。 言ってしまえば「嫌われ役」を一手に担っている感じ。 そんな風に思っていましたが、本作を読んで、警察官が厳しく口うるさく取り締まる背景には、凄惨な事件の現場に立ち会ったことがあるんだと、痛感しました。 同じような事件を二度と起こしたくないし、我々市民に同じような経験をしてほしくないという強い思いがあるのだと。 取り締まられてグチグチ文句言われても、そんなことをおくびにも出さず対応していく様に格好良ささえ覚えました。 ちょっとした不注意が大事故になったり、ちょっとした見落としが大事件になったり。 解決したことよりも、解決できなかったことばかりマスコミに取り上げられたり。 労働基準法なんてあってないような労働環境だったり、だけど言うほど給料高いわけでもない。 読めば読むほど、警察官の実態がわかり、襟元正す思いでいっぱいです。 特に、ギャグを交えながら飄々とすすむので、説得力が増すんですよね。 「こんなに大変なんですよ」と言いまくるような感じがなく、説教臭くないところもグッときます。 あと、1・2巻の表紙が変わったように、どんどん絵もうまくなるし、どんどん面白くなってきます。 ドラマ化とかしたら映えそうだな。

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