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2022/11/27
利根川もイチサラリーマンだったという話
「賭博黙示録カイジ」で実質ラスボスだった利根川のスピンオフ的作品。 個人的に、 「金は命よりも重い」 とか 「一千万二千万稼ぐことの難しさ」 (受験を勝ち抜き、就職戦争でも勝ち抜いて一流企業に内定をもらい、そこでも遅れずサボらずミスもせず毎日律儀に会社に通って10年経ってようやっと手にする額~のような下り) といった、お金に対する金言が多く、大人になった今新たな魅力が再発見されている利根川。 「1日外出録ハンチョウ」は読んでいたのですが、なぜかこちらは少し読んだだけで食指が動かなかったんですよね。 というのも、上記のように「賭博黙示録カイジ」の中で、利根川って魅力的な敵キャラなんですよ。 悪には悪の正義があるを地でいく感じで、負け方も、一言で言えば武士の切腹のような潔さで、むしろ格好良かったんですよね。 そこらへんがハンチョウと異なっていて、スピンオフでコミカルに描かれていることに違和感があり手が出せなかったんです。 が、そんな考えにとらわれているのがアホでした。 結論からいうと、めっちゃ良かったです。 利根川の日々の会社での生活が描かれているのですが、「中間管理録」とあるように、上司(兵藤会長)と部下(黒服)の板挟みに会いながらも仕事をこなす様は、サラリーマンのそれで、学ぶことが多かったです。 仕事のこなし方、会議の進め方、部下の動かし方、上司のご機嫌とり、などなどサラリーマンとしては一度は悩みそうな点を、しっかり描いているので、社畜な方は読めば共感できると思います。 大体頑張って→結局報われない感じで終わるオチも含めて、現実の仕事の辛さを突きつけられて身につまされます。 基本的にはギャグよりなのですが、所々仕事や人生?に役立つエッセンスがあるので、やっぱり利根川は魅力的なキャラだと痛感しました。
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2022/11/27
色々惜しかった作品
民俗学とかに出てくる「経立(ふったち)」と呼ばれる、長年生きたことで妖怪や魔物といった怪異になってしまった生き物に、人間が襲われるという話。 本作では、主に猿がそれに該当します。 田舎の限界集落。 突如、崩壊する平和。 容赦なく襲ってくる人外たち。 この設定・展開と「食糧人類」の原作者ということもあれば、否が応でも期待値が上がるものですが、残念ながら3巻で終了。 納得半分、惜しいなと思う気持ちが半分なところ。 納得なところは、登場人物に感情移入できなかった点。 おそらく、女子高生・鶴田がヒロインなのかもですが、正直、彼女の立ち位置がよくわからなかった。 というのも、彼女は、祖父とともに猟師をしていた女子高生で、銃も使える設定。 そうであれば、彼女を軸に経立と戦うのか?と考えてしまうのですが、実際はそうではない。 特に山の中での経験から、冷静な立ち居振る舞いをするのですが、育ててくれた祖父が死んだとわかっても、経立に対し激情に駆られたり復讐心に燃えることもない。 村の人間が次々に殺されても、淡々と逃げることを考えるあたりが、どうにも腑に落ちず、応援したくなるような感情移入もできなった感じ。 (リアリティがあると言えばそうかもしれないですが) それ以外にもよくわからない狂キャラ(頭おかしくなったキャラ)が多く出てきて、そんなキャラに対して真っ当な正義感(この場合だと、経立と戦ったり、弱い人を守る意志のある正義)をもっているワケでもない主人公とヒロインがまざって、全体的にまとまりがない印象をうけました。 皆思い思いの行動している感じ。 ただ一方で、経立の残虐描写がエグいので、限界集落のなかで奴らに大勢で囲まれたり、突如目があったりすると、その緊張感が半端なく、次へ次へと読みたくなる仕掛けは凄かったです。 最後、どう終わるのか気になったのですが、全体的に消化不良で終わります。 もう少し続けて、謎だった部分を掘り下げて欲しかったなぁと思えるので、やはり色々惜しかった作品なんだと思いました。
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2022/11/22
人類VS人外ものの名作
個人的な感想で恐縮なのですが、正直コレ系の作品って冒頭からインパクトのあるテーマ・設定とショッキングなシーンがテンコもりなので、後半はダレる傾向にあると思っているんですよ。 最初の期待値を超えてこないというか。 でも、本作は最後まで読めてしまい、最初から最後まで裏切らない感じが面白かった証拠だと思います。 7巻で短くもないですが、長編ほどでもないのも良かった。 さて内容ですが、 とある星からきた虫みたいな異星人の食欲を満たすために、人間が食料になるという設定。 その異星人は、想像にもれず大きくて凶暴。 そこで国が、核処理場と偽って、人間を家畜のように繁殖・飼育できる施設をつくる。 主人公は、その施設に入れられてしまい、現実離れした世界に恐怖し脱出をはかろうとします。 同じように施設から出ようとする、ないしはこの施設と深い関係のある2人の人間、山引とナツメと出会い・・・という流れ。 この2人の人間が、特殊能力があったり色々いわくつきで、そこから展開されるストーリーは、想像の斜め上をいって飽きないんです。 (若干、ご都合主義的な部分もありますが、それはご愛嬌で。) 特に、最終的に上記の異星人と対峙するのですが、その倒し方が秀逸すぎて・・・ 過去こんな残虐な(色んな意味で)倒し方があったのか?と唸りました。 また、虫みたいな異星人のフォルムがキモい上に残虐で、そのグロ表現も本作の魅力です。 文明が高度に発達した星から来たとか言っているけど、腹減りすぎると共食いはじめるとか、その知性のカケラもない行動に不気味さを加速させます。 人外VS人類、パニックホラー、SFにピンときた人はおすすめしたい作品です。
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2022/11/16
予想つかないスリリングな展開にひきこまれる
4巻なのですが一瞬でとけました。 ミステリーやサスペンスって、自分はちょっとダレることがあるのですが、(注:内容が悪いのではなく、自分のIQが低いので登場人物が多すぎると覚えられない、展開が理解できないといったことがしばしば起きることによる)本作は、全くそんなことなく、4巻まで一気にいってしまった。 とある別荘の地下で見つかった大量の子どもの遺体。 この別荘の主人である「灰川十三」に対して、児童虐待の容疑で捜索依頼が出される。 しかし、捜査を続けていくと、そもそも彼は身寄りのない子供や、実の親から虐待を受けていた子供を預かり育てていたことが判明。 その証言をしたのは、かつて彼に育てられたという子供たち。 皆一様に、父として慕い、子供を殺すようなことはしないと言う。 では一体だれが、何のために? 別荘の死体 灰川十三の正体 彼をかばう子どもたちの真意 とにかく謎が多いまま進むのですが、息もつかせない怒涛の展開で、 特に、灰川を探す→灰川が出頭してくる→!!(※ネタバレなのでふせます)の流れは、予想もつかなくて、何度もみてしまいます。 毎巻ビビらされますし、終わり方も気になって、とにかく先がきになってしょうがないです。 ついに、灰川の生い立ちまでたどり着き、どことなくクライマックス感が高まってきましたが、展開によってはまだまだ続きそうで、早く真相が知りたいような、終わってほしくないようなもどかしい気持ちで読んでおります。 いずれにせよ続きが気になってしょうがないので、一気読みをおすすめします。
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2022/11/15
ギャグなのかホラーなのか漂う狂気に翻弄される
引きこもりの兄、要介護の母、アル中の父、モラハラ気質でバツイチの姉。 そして、都落ちして絶賛失業中の主人公。 この時点で濃度マシマシな家族構成だが、主人公が実家に帰省したところから始まる本作。 田舎出身の自分的には、あながち非現実的とも言えないのが、興味をそそりました。 言葉は一切発しないが、謎の存在感がある兄を軸に物語は展開されるのですが、冒頭でその兄が通り魔殺人を犯している夢を主人公がみていて、それが全話通して、こびりついて離れないんですよね。 兄の容姿も、ちびまる子の永沢くん(玉ねぎ)みたいに一見ギャグっぽい感じなのですが、この最初の光景のせいで逆に狂気すら覚えます。 ところどころ、例えばキャベツを部屋で千切りしてたり(それに血がついていたり)、主人公の同級生(女性)の名札でいかがわしいことしたり、狂気じみたことをしているので、あながち間違いではないのですが、それ以上のことをしそうな雰囲気が、常にある。 引きこもりかつ無口ってのが、否が応でも、その手の妄想をかきたてます。 似たように、父親もヤバいし、唯一家族の中でまともだと思った母親も、意外とキレてやらかすから、もうザワつきっぱなしです。 家族からみたら当たり前だったことが、世間では当たり前じゃないことって少なからずあると思うのですが、それを実際にありそうな絶妙なラインで、まざまざと見せつけられている、そんな作品です。 家族を再構築していく話なのか、それとも崩壊していく話なのか、ぜひ見届けたいです。
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2022/11/14
「週刊少年チャンピオン」を知れる稀有な作品
「ルーザーズ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~」でも書かせていただきましたが、マンガ、広くとって出版業界を知れるマンガが好きなんですよね。 (余談ですが、ルーザーズは双葉社の「漫画アクション」の歴史が知れるので、こちらもおすすめです) マンバさんのレコメンドで紹介され、自分にとってドンズバな内容だっただけに興奮して読ませていただきました。 「週刊少年チャンピオン」の歴代の編集長に、当時のことを語ってもらう形式。 結論からいうとすごく良かった! 秋田書店自らが語るくらいなので、情報として正しさが担保されていることはもちろんですが、何よりこんな本を出すくらいだから皆「週刊少年チャンピオン」の愛に満ちているのがヒシヒシと伝わってきて読んでいて胸が熱くなりました。 特に、名物編集長だった壁村耐三編集長のところは激アツなんです。 「ブラック・ジャック創作秘話」を読んだことある人は、彼の破天荒さ、水虫をマッチで焼く姿が特に記憶に刻まれていると思いますが、本作でも際立ってキャラが濃い。 それだけに、少年漫画雑誌としては後発のチャンピオンを1位まで押し上げた熱量を感じます。 また、当時は終わった人として扱われていた手塚治虫に再起を促し「ブラックジャック」を生み出したのは上述の書籍で知っていましたが、半蔵門病院での手塚治虫との最期のやり取りが本作では載っていて、これには目頭が熱くなりました。(ネタバレなので割愛しますが、あの言葉に人間性の全てが詰まっていると思います。) 暴力的で、破天荒でありながら、情に厚い、ザ・昭和な感じって、自分も昭和な人間なだけに、グッとくるんですよね。 滅茶苦茶な面もありますが、こういう点が、編集部内でいつまで愛されている理由なんだと感じました。 と、壁村編集長の話ばかりしてしまいましたが、他の編集長も特に現代につながる部分は雑誌不況の影響下もあるので、それに抗い試行錯誤していく様は興味深く読ませていただきました。 チャンピオンにかかわらず、漫画、作品づくりに関わる人の思いや情熱に触れたい方はぜひおすすめしたい作品です。 全部「人」がつくっているんだと再認識させてくれます。
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2022/10/29
今後の展開に期待しかない#1巻応援
久々に興奮しました。 SFっぽくもあるのですが、ミステリっぽくもある本作。 その内容ですが、、 謎の研究施設・箱庭(ファミリエ)で暮らす少女たち。 彼女たちは10歳になると成績にならって「組み分け」という将来の進路がきまってしまう。 それぞれ「芸術」「学術」「生産」「労働」の4つ。 芸術・学術はまだわかりますが、「生産」は子供を数年おきに産まされる、「労働」は何らかの実験の被検体となる可能性もあるという、なかなかエグい設定。 主人公は、そのファミリエで暮らし、幼なじみで憧れの存在・光里(ひかり)と同じく「芸術」への組み分けを目指す少女・くるみ。 光里と同じ進路にいけるように日夜努力していたが、10歳になる直前、目を覚ますと14年の月日が流れてしまっていた。 傍らにいたのは、ファミリエでくるみに対していつも嫌味を言ってきた成績優秀の清香(さやか)。 なんでも10歳の誕生日直前にファミリエで事故が起き、その衝撃でくるみは眠るたびに記憶がリセットされてしまうのだという。 つまり1日しか記憶がもたない状態。 清香が言うには、上記のファミリエの事故のせいで行われるはずだった「組み分け」が免除されて、ファミリエから出て外の世界で暮らすことが許されたのだという。 戸惑うくるみに、清香が寄り添う。 かつて何かと突っかかってきた姿はそこにはなく、1日で記憶がなくなるわけですから、14年もの間毎日毎日、同じ質問に同じ回答で献身的にくるみに接してきたという。 そこに何か違和感を感じたくるみ。 夜に、飲まされそうになったクスリを飲むフリで飲まなかったら、記憶がなくならなかったことに気づく。 そこから徐々に清香に不信感をいだき、過去の自分が書いたであろうメモ 「清香を信じるな」 と、庭の木の下にあった謎の白骨死体。 清香の真意が何かわからず恐怖し、その家から出ていこうとする、くるみ。 しかし、「組み分け」が免除されたと言われていたはずだが、くるみは、外の世界ではおたずねもので、一般市民から狙われることに・・・という怒涛の展開。(長い) こんな感じで、最初は、ファミリエという強制子育て施設みたいなSFっぽい話かなとおもったら、一気に年数が過ぎて、そこから清香の謎の言動からミステリっぽくなり・・・次から次へと驚く展開に、読む手がとまらなかったです。 今後の展開が全く予想つかない、1巻の終わりもいい。 記憶が都度なくなるループをやっていくのかな? また、タイトルや最初の女性だけの世界に百合っぽさを期待しましたが、その点は現状あまりなかったので、ご留意ください。 何にせよ、SFミステリが好きな人にはおすすめしたい作品です。
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2022/10/29
こういう人社内にいて欲しい・・・
社内で起きるちょっとしたいざこざや社員同士の衝突で落ち込む社員を総務のお局的存在・幸丘の言葉によって良い方向に向かっていく、有り体にいうとそういう話。 基本1話完結形式。 1話ごとに対象人物を変えて、幸丘の金言に自分自身の落ち度や弱みに気付かされ、やる気を回復していく様は見ていて爽快だし、悩む部分はサラリーマンの方なら誰でも共感できると思います。 主に人間関係だったり、キャリアのことだったり、ですね。悩みが尽きない部分です。 そして、そんな幸丘の正体は・・・ 断定はされていませんが、まぁ会社のエライ人です。(ということが容易に想像できるつくりなのでネタバレにはならないと思います) 一見野暮ったい風体で接するけど、出てくる言葉の切れ味で只者ではないことはわかります。 この設定も懐かしいし、自分は好きなんですよね。 社内を掃除していたおっさんが実は社長だったとか。 実際は、偉くなればなるほどそんなことしている暇なんてないのだろうけど、社員のモチベーション維持のためにこういう役回りの人は必須だなぁとか純粋に思ってしまいました。 色んな部署を常日頃からみており、問題ありそうな組織や人にさっと解決するための糸口を与える。 隠密お局とはよく言ったものです。 こういう第3者的監査っぽい人、ホント社内に1人はいて欲しい。
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2022/10/25
『ROUTE END』著者の最新作!
『ROUTE END』が控えめに言っても最高だったので、その著者さんの最新作と聞いてすっ飛んできました。 まだ1巻でしたが、良作の香りがプンプンします。 「警察署の駐車場に、12リットルの血液と1本の腕が入ったバケツが置かれる」 という感じではじまる物語。 前作同様、サイコサスペンスは言わずもがなですが、それ以上に美人上司とベテランのシニア刑事のバディという点が、興味をそそり期待値爆上げです。 この手の作品のバディって激アツですよね。 しかもこの美人とシニア刑事に、過去に関係があったようなのですが、 その内容はもっと後半で出すのかな?と思ったのですが、1巻ですぐにわかるのも個人的に良かったです。 出し惜しみしない展開の早さもさることながら、この二人にグッと感情移入できて、ストーリーに深みが増してきます。 1巻の最後が不穏すぎるし、長期的にみてベテラン刑事に何か起きてしまうのかハラハラします。 この手のバディものって何となく、どっちかが死ぬか、近しい展開になるものだと勝手に想像しちゃうので。 強いジジィキャラ好きな自分としては、その点も目が離せません。
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2022/10/16
単行本で繰り返し読むとジワる魅力
一時期ネット界隈で話題になっていたが、単行本になったので読んでみた。 1回目読んだ時、なんでこれがこんなに話題になったのかわからなかったというのが正直な感想。(ディスりとかではなく) ただ、日常系特有の謎の中毒性があって、何回か読むと魅力がジワジワとわかってきた。 個人的には ・主人公がドラゴンになっても受け入れているクラスメイトのゆるい雰囲気 ・それでも時々出てくるドランゴンの現象(火を吐くとか)に漂う緊張感 そして ・お母さんの肝の座り方が格好いい この3点がツボりました。 ドラゴンになったというのに、全体的に会話など日常系っぽくゆる~い空気が流れているのですが、それでも時々、下手したら死に至るようなドラゴンの現象がでて(火を吐くところとか)、それがクラスメイトに影響を与える様は読んでいてヒヤヒヤします。 ただ、次の瞬間、それを受け入れているクラスメイトたち。 この優しい世界に、安堵するとともにほっこりします。 今の子は多様性(?)を重んじるから、いじめとかしないのかねぇ、とおっさんは謎に感心しましたよ。 最後に、お母さんが、超絶魅力的。 ドラゴンのハーフを産むような母だから、まぁ一風変わっているのでしょうが、さりげなく娘がドラゴンであることを学校側に根回ししていたり、特に父親(正真正銘のドラゴン)とのやり取りがスゴい! 主人公のルリも、ちょっとぼんやりしててかわいいのですが、お母さんの豪傑っぷりも魅力。 お母さんとドラゴンの出会いとか掘り下げて欲しいなと強く願います。 何にせよ、ジャンプ新シリーズで話題になった底力を感じました。 何度も読んで見ることをおすすめします。
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2022/09/30
徳川慶喜の孫娘の物語
私事ですが、最近、幕末づいてまして、司馬遼太郎「最後の将軍 徳川慶喜」を読んだばかりなんです。 正直あまり歴史に明るくなかったので、慶喜といえば、今まで「しょっぱい人」として思ってなかったんですよね。 新撰組のほう(つまり幕府側)をよく読んでいたから、慶喜の存在は、 大政奉還して、鳥羽伏見の戦いで逃げた人 くらいのイメージでした。 徳川の時代を終わらせてしまった人という、なんかショボいイメージでした。 しかし、上述の本を読んで自分の無知を恥じました。 慶喜、マジすごいっす。 政治的な駆け引きと、暴れん坊の尊皇攘夷思想(というか、単に幕府がうっとおしいだけ)の薩長土肥に代表する各藩主を論破する力、そして先見の明。 時代がそうでなければ間違いなく、優れた名君だったと感じました。 大政奉還をしたのも、そのタイミング朝廷に政治の主権を渡しても、構図は変わらず結局徳川に頼ることになるのを見越した判断で、単に尊王思想の志士たちの矛先をずらすためだったとかすごい判断ですよね。 鳥羽伏見の戦いに逃げたのも、徳川一族がその後の朝敵になることを恐れたのと、単に国内で争うことが国力の低下を招くこと見越したという英断だったとか。 どこまで真実なのかは不明ですが、少なくとも、その後の日本が力強く発展したのも、慶喜がよくある旧体制の君主として抵抗し続けなかったことも多いにあると思います。 長くなりましたが・・・そんな慶喜ブームが起きている私に、この本が目に入り矢も盾もたまらず読んでしまいまいた。 本作は、そんな私が激推中の慶喜の孫娘久美子の物語。 姉の喜久子は、高松宮宣仁親王(昭和天皇の弟)妃。 当たり前だけど中々の家柄。 上記の慶喜のことや、江戸から明治にかけての政治的な動きを理解しているとより面白いです。 慶喜に似ていると言われていた久美子氏だが、好奇心で何でも自分でやりたがるところや、極めようとする姿勢を似せたり(慶喜は多趣味でこだわりも凄かったらしい)、女中やクラスメイトがどこ藩出身だとかでいざこざがあったり、随所に、歴史を知っているとにんまりするポイントがあるのが読んでいて楽しいです。 また、あの時代特有の上流階級の雰囲気も、また素敵ですね。 おてんばでありながら芯を通す主人公も魅力的で、周囲の人間たちも振り回されながらもその魅力に惹きつけられているのも、またグッド。 自分もそのうちの一人です。 子孫であることから先祖の因縁で物語も動き、山縣有朋(有りていにいうと倒幕側の人)の娘とすったもんだあって、今後もどうなるのか? 非常に楽しみです。
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2022/09/30
こんなの泣いちゃうよ
結婚して10年以上経った仲良し夫婦。 ある夜中、夫が急に心肺停止し、一命はとりとめたが、いわゆる植物状態になってしまう。 その病院生活を描いた作品。 もうね、泣きますよ。奥さんの愛情の深さに。 温かい絵柄とマッチして、もうボロボロです。 意思疎通もロクにできない旦那さんのために病院に通い、世話をするだけでも並大抵のことではないと思うんです。 しかも、この奥さんの場合、植物状態の旦那さんのちょっとした変化、例えばちょっと動いたとか、あくびしたとかですごい喜んだりして。 「推し」と表現して大事に慈しんでいる。 愛した人の変わり果てた姿に、そうでもしないとやっていられないのかもしれませんが、見捨てたり、自身の辛さを嘆いたりせず この気丈とも言える姿に私感動しっぱなしですよ。 「ただ毎日一緒にいたい」から側にいる。 そのピュアな思いに、これが本当の愛なのかなぁとか思ってしまった。 家に帰れば、寂しくなり泣いてしまうのも、またリアル。 まじりっけなしのノンフィクションなので、2巻現在で奇跡なんて起きませんが、どうか末永くお二人が一緒に過ごせることを祈っています。
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2022/09/29
恐怖の猿軍団#1巻応援
猿って怖くないですか? 猿好きな方には申し訳ないのですが、 自分、小さい頃から猿ってあんまカワイイと思ったことないんですよ。 リスザルやメガネザルは多少愛嬌があるとか言う人もいたけど、全然理解できなかったす。 たぶん、微妙に顔が人間似ているところとか、愛嬌どころか打算的というか小賢しい感じが好きくない理由なんだと捉えてます。 日光さる軍団の猿回しとか正気の沙汰じゃないっすよ。(なんでだよ) そして、まさに自分の気持を投影し、逆撫でしてくるような作品がでました。 それが、この作品です。 猿が人間のマネをして、人間の道具や武器を使いこなし襲ってくる話。 その習得の仕方なんですが、目をギョロギョロして道具を眺めるんですけど、それが見ていて心底腹立つんです。 なんだ、その目は!と昔の体育教師ばりに顔面平手打ちしたい。 すぐにマネできるくらい知性はあるんですけど、基本理性がないので、本能で行動している感じも余計に腹立つ。 対策として、マネされないよう武器を使う姿を見せてはいけないようなので、何もしない、我慢するだけなのですが、それも歯がゆい。 とまぁ、腹がたってばっかですが、実際内容は結構ホラーで全然笑えないです。 マネできたこと(投石や棒で殴るなど)で襲ってくる猿の容赦ない行動に村人はどんどん犠牲になっていきます。 また、舞台が江戸時代なので、火縄銃みたいな猟銃くらいしかなく、近代的な武器がないのも恐怖ポイント。 ライフルがあれば、ぶっ放したい。 主人公は温厚で優しすぎるきらいがあるようですが腕はたつよう。 まだ1巻では戦っておらず、彼が今後猿とどう戦っていくのか?気になります。 息子とか奥さん、主人公の家族が危機的な状況なのも不安です。 もし家族がこの猿たちに殺されてしまい、その怒りで、山にこもり、音を置き去りにしながら祈る時間が増えた状態まで仕上げてきて、 「この腕力までは真似できまい」 と、この世から猿達を駆逐する復讐鬼と化したら最高だと夢想します
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2022/09/25
実践的なエッセイコミック
タイトルどおり、平凡な主婦である主人公が浮気され、探偵など活用し旦那とそして不倫相手と戦うという話。 もっとドロドロしているかと思ったら、どっこい、たんたんと処理が進む感じが「あ、ホントの不倫っぽい」と感じさせてくれます。 探偵の活用方法、探偵の動きかた、不倫相手への対応、そして処理の仕方・・・などなど、知見に基づいたものが目白押しで読んでいて興味深い内容が多かったです。 特に、誓約書や公正証書というものの存在意義などしっかりと記載されてあって、エッセイというよりは実践的なHowto本に近い感じです。 また、浮気した旦那や不倫相手の行動のあるある。つまり1回謝ったくらいでは悪いと思ってないから何度も繰り返す的なところ。 人間の心理面なんかもきちんと説明があって、なおのこと誓約書って大事なんだなと気付かされます。 「夫の扶養からぬけだしたい」の著者さんだけに、エッセイの妙味するすると読める感じは残しつつも、非常に学ぶことの多い作品でした。 あ、学ぶとかいって、別に、自分が浮気しているされているとかではないっすよ。 そういう方にぜひ、この本が参考になるかと思います。 (あまり、そういう状況になって欲しくないですが・・・)
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2022/09/25
これは恋なのか?
三白眼、ジト目、メカクレ、などなど目にまつわるキャラクター描写は数あれど、どれも自分は好きだったりします。 特に三白眼や、猫目とかジト目なんかは、ツボだったりします。 総じて、目つきが悪いキャラが好きなんですが、本作はマンマ自分の性癖を刺激して最高でした。 そして、そういう目つきの悪いキャラって、基本、性格が良くて。キツくみえるけど実は優しかったりするもんじゃないですか? でも、本作は、意外と性格もキツいというから、まずココが面白い。 最初は、そのままヤンキー路線にいくかと思ったら、実はタダのアホの子だったようで、一周回って新しい感じになってます。 強気にこられても、ちょっと注意すると 「え?そうなの?」 みたいな感じで、誰もが知っていることをただ知らなかっただけ、みたいなアホの子な感じ。嫌いじゃないです。 性格がキツくなる背景なども、少しずつにじませてきて、結局、目つき悪くても良い子へと戻るかな?という感じで進んでいきます。 主人公もストレートに告白をするなど、こっちも大概変わっていて面白い。 本当に好きなのか?不明な感じが、恋なのか何なのか気になります。 なんにせよ、目にまつわる新しいキャラクターとして、私の中で刻まれるのでした。 この関係も見逃せません。
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2022/09/24
なかなかの泥沼劇
両親の教えにより自己肯定感皆無な主人公。 彼女がバイト先のスーパーの店長と不倫をし、その店長の息子から好意をもたれ、その息子にも好意というか狂気じみた愛情(ストーカーっぽい感じ)で接してくる幼馴染みがいる。 そして、店長の奥さんは鬱病で家庭にも問題がある状況。 もうこの時点でお腹いっぱいなほど、こってりした人間関係なんですが、どれも目が離せなくてグイグイ読ませてくれます。 とりわけ主人公が、上述のように自己肯定感皆無だから、色々トリッキーな動きをします。 スーパーのバイトを辞めて、カウンセリングまがいなことをはじめて、店長の奥さんに接近します。 接近して何するかといえば、奥さんを治そうとする。 店長に幸せになって欲しい一心で、家族を助けようとする。 普通、不倫関係の相手の家庭がボロボロだったら、そこに付けこんで奪いにいくもんですが、治す方向にいく。 この斜め上をいく行動に、どこか狂気すら感じます。 店長の息子・ハルキに好意を持たれ、彼に好意を寄せる幼馴染み・みふゆとの複雑な関係も、物語を面白くしてくれます。 特に二人共、店長との不貞を知っており、それをネタにかき回していく感じがゾクゾクします。 ただの泥沼不倫劇以上の奥行きをみせてくれて、まだ3巻ですが、どの方向にいくのか今後も予想がつかず楽しみな作品です。