自殺保育園 子を亡くした女
まだ2歳半だった息子が死んだのは一瞬の出来事だった。そして夫とも離婚。両親を早くに亡くし、親戚をたらい回しにされてきた「なずな」にとって、息子の翼(つばさ)は全てだった。翼のいない人生など考えられない、…だから私は今日死にます…。死に場所を求め、昔住んでいた町にやってきたなずなは、ひょんなことからある、古びた保育園に迷い込む。目を輝かせて走り回る天使のような子供たちを見ると、心が締め付けられる。翼を思い出してしまう。早く天国の翼に会いに行こう…と、その時、なずなの人生を変える出会いが――。生と死の間で揺れる母性の葛藤を感動の筆致で描く傑作ヒューマンドラマ!
奴隷嫁 20年無給労働地獄
「嫁に給料を払うバカがどこにいる――」それがこの家を支配する姑の口癖。呉服商「ときわ」の美しい若女将がまさかすべての自由を奪われた“奴隷”だとは誰も気づかない…。姑に借金をしている実家を救うため、生贄として嫁いできて20年、家計はすべて姑が管理し、佐也子(さやこ)には1円のお金も、1時間の自由もない。夫は毎晩、女たちと遊びほうけ、この家に佐也子の味方は娘の理佳子(りかこ)だけ。だが、ついに姑の魔の手は理佳子にも迫り……。愛する娘を守るため、佐也子の周到に準備された反撃が始まる――! 爽快で痛快なドンデン返しストーリー!
東日本大震災と少年 寄っとでんせ
岩手県宮古市に祖母と母と三人で暮らす11歳の少年・育(いく)は幸せな日々を送っていた――その日までは! 2011年3月11日午後2時46分、激しく、そして永遠に続くのかというほど長い大地震がその地を襲った。大人たちは過去の被害から「津波」が来ることも予見し速やかに非難を始めた、宮古の町はぐるりと頑丈な「防潮堤」に守られてもいた。すべては大丈夫なはずだった…しかし! 38.9メートル、ビル10階分もの大津波がそれらの対策を嘲笑うかのように街を、人を、大切なすべてを飲み込んでしまう――。自身も被災した作家が当時の体験を元に衝撃の現場と、苦難に立ち向かおうとする少年の姿を描く傑作!