ビームコミックスの感想・レビュー480件<<1112131415>>りぼん時代の名作集桜の森の満開の下 清原なつの初期ベスト自選傑作集 清原なつの名無しりぼんに描かれた初期作品がまとめられています。最初はりぼん掲載とは思わずに読んでいたので後から知って驚きました。かなり自由ですね!でもこんなにユニークな話を読んで大きくなったりぼんっ子は幸せだなぁと思いました。男の子にフラれて動物園でふてくされてた女の子が30年ぶりに初恋の人と再会してゴジラを観てきたおじいさんと出会う「ゴジラサンド日和」と、朝起きたら男の子の背中に天使みたいな羽が生えていて飛んだり出来るようになったけど実は宇宙人の仕業だったという「飛行少年モッくんの場合」が自分は好きでした。どういう人がこの話を描いたんだろうと気になった方は、自伝的猫コミックエッセイ「じゃあまたね」を読まれるといいと思います。「花岡ちゃんシリーズ」の蓑島くんがなぜハゲ頭なのか理由も分かりますよ。驚くほど多彩な作風 #1巻応援麦酒姫 朝陽昇名無しまるでティンカーベルのような可愛らしいビールの妖精さんが印象的ですが、読んだら作品ごとに絵柄もストーリーも雰囲気が変わるので驚きました。あなたも読んでみたら必ずお気に入りが見つかると思います。私は「雨ののち、晴れののち、」を読めたので本当に単行本を買ってよかったと思いました。戦時中の国立競技場で学徒出陣を見送った女性が、終戦後に同じ場所で東京オリンピックの開会式を見届けるという話です。単なるいい話ではなく、その日を複雑な心境のまま迎えたことが描かれています。あの日が今日に繋がっていることを忘れてはいけないと身に沁みました。ちなみにTwitterバズり漫画に無知な自分でも知っている「金曜日、蟹をのせて」も収録されていました。まるで血の流れないサスペンスアイム・ノット・ヒア やまじえびね作品集 やまじえびね名無しどの話にも心に傷を持った女性が登場します。その傷は簡単に癒えることはありません。もしかしたら一生そのままかもしれません。やまじえびね先生の作品を通して見るとまるで血の流れないサスペンスのようです。そうして尚更に彼女達の痛みを感じることが出来ます。中でも表題作の「I'M NOT HERE」は重みのある話です。主人公は心理カウンセラーですが彼女自身も幼少期に兄から性的いたずらをされ、母に打ち明けても取り合ってもらえなかったことを悩み続けカウンセリングに通っています。優しい恋人と身体の関係を持つことはありますが、いつも行為の途中で意識が飛んでしまうのです。実は数年前に事業の失敗で兄は失踪しており、その心労が重なった為に母が急死します。全ての苦しみから解放されたように思われましたが、恋人との行為の時の症状は治ることはなく、タイトル通りの悲しくてシリアスな結末に終わります。シンプルなようでいて絵にもストーリーにも深みがあります。どちらがきっかけでも構わないので気になった方はぜひ読んでみて下さい。なんかわからないけど前向きになる(気がする)ワガランナァー 羽生生純nyae何度も「何を読んでるんだろう?」という気持ちになったけど不思議とページを捲る手は止まらないし、あのおっさんたちの前向きさに救われるような気がした。唐突に現れたキミオちゃんという小さいおっさんが実は警察署長だったというオチの話がいちばん好きでした。 3人のホームレスと不幸にも巻き込まれるひとりの女性。ジャンプ作家とかが同じ設定で描いたら普通に人気出そうと思いました。 コロナがなければ生まれなかった漫画NEW NORMAL DAYS しりあがり寿名無しという言い方をすると、生まれなければよかったのか、生まれてよかったのか、どっちなんだという話ですが…漫画好きとしては読みたいと思える漫画が多いに越したことはない… ショート・ショートの詰め合わせという感じで、短期集中連載とのことですが、共通しているのはコロナ禍の世界だということ。創作もあれば、会期が延期してしまった著者が参加する展覧会のドキュメント(っぽい)話もあり。 そりゃあ、電車がガラガラだったら流星課長の出番も無しだわな。 しりあがり寿が描くコロナウイルスが思いの外かわいい。死にたい少年少女たちが「世界」を殺すEVOL (イーヴォー) カネコアツシ名無し※ネタバレを含むクチコミです。コテコテの刹那の連打!!連打!!ダークマスター オトナの漫画 完全版 狩撫麻礼 泉晴紀starstarstarstarstarひさぴよ狩撫麻礼&泉晴紀のタッグによる25編、560ページ超に及ぶ分厚い短編集です。 (連載時の名義はダークマター、泉レッドドラゴン) 狩撫麻礼さんの没後に刊行された完全版になります。 中身としてはオチがなくて意味がよく分からない話もありましたが、泉晴紀先生のギャグっぽい作画がハマってる所もあり、楽しめた話とそうでない話が半々くらい。 ーーーー 特に好きな短編 「ダークマスター」 表題作。味は良いが、店主の性格に難があって繁盛しない店を他人に任せることになり、店主の代わりになんでもやらせてしまう話。何を表現しているかは言わずもがなです。オチはないけど面白いっ。 「ミッションあるいは伝道」 高齢化した個人商店とニートをマッチングさせて、寂れた商店街を復活させようとする男の話。発想は凄い良いけどたぶんうまくいかないと思わせてくれる所が良い。 「眠らぬ男」 オチの秀逸さでは「オッパイ説」か、この話が一番好きですね。ネタバレできない面白さ。 ーーーー 話のバリエーションは多いので、昔からの狩撫麻礼ファンに限らず、「世にも奇妙な物語」のような不可思議な話、刹那的なショートストーリーが好きな方なら楽しめる短編集だと思います。マグロの餌として生きる女の奮闘記ギャグ「大漁!まちこ船」大漁! まちこ船 戦え! 北極警備隊 三宅乱丈 Extra Works 三宅乱丈かしこ脱サラして漁師を始めた小川はすれ違ったマグロ漁船に小柄な女の子が乗っているのを見つける。彼女の名前は「まちこ」。実はただのマグロの餌である…。船長から釣り竿の針を口に付けられ海に飛び込みマグロに食われる、それが彼女の仕事、そう!使命なのです。最初はひ弱な都会人の小川に興味がなかったまちこですが、だんだん恋愛モードに入っていきます。なぜなら卵を産んだから。見た目は人間の女の子ですが何故か産卵するんです。自分が産んだ卵に小川から「かけてもらおう」と思い立ってから色んなすれ違いが起きるんですけど、すごいですよ。超爆笑モノです。何を言ってるのか分からないと思いますが、本当にそういう漫画なんです。私にとって「大漁!まちこ船」が理想的な漫画の一つかもしれません。それくらい大好きです。 もう一編の「戦え! 北極警備隊」は三宅乱丈先生の思い入れがものすごくある作品のようです。近未来SFギャグ漫画なんですけど、何が起こるか分からない具合で言えば「大漁!まちこ船」よりすごいです。どちらも傑作であることは間違いありません。大船に乗った気持ちで読んで大丈夫です。ギャグ漫画家が原作付きで挑んだホラー・オムニバス!まほう少女トメ おおひなたごう 武内優樹nyaeホラーというよりは、最後に「実は〇〇は✕✕だった!」的なサスペンス・ミステリー要素が結構強いのかなと思いました。 ギャグ一本でやってきたおおひなた氏も、原作付きとなるとギャグを見事に封印しています。ただ表紙のトメちゃんの、どこか抜けた感じで魔法少女であることをみじんも感じさせない風貌からは、著者のらしさがにじみ出ているように思います。 オムニバスなので話によって怖さに多少ばらつきがあるものの、構成も展開も凝っていて全部面白いです。めちゃくちゃ怖いのが読みたい!という人にはもしかすると少し物足りないかもしれないので、ちょっと苦手だけど怖いもの見たさで読んでみたい、という人に丁度いいかもしれません。ダラダラと馬鹿馬鹿しく面白い悪魔を憐れむ唄 古泉智浩hysysk元葉書職人の売れない芸人が悪魔に嫌がらせを受けながら漫才を頑張る話なのだが、何でこんなことを思いついて、何がやりたいのか全然分からない。謎のシュールな展開や妙に細かい芸人の世界の話を挟みつつ、ひたすらダラダラと馬鹿馬鹿しい出来事が続く。作中の漫才や大喜利は芸人に協力してもらう力の入れよう。同名で話題作があったため(こっちの方が先に描いてたにも関わらず)途中でタイトルが『テラートワイライト』に変わった。心の置きどころの問題だ五色の舟 近藤ようこ 津原泰水漫画を読む女S※ネタバレを含むクチコミです。飄々とした様を見て夢中さ、きみに。 和山やま漫画を読む女S救われたような楽な気持ちになる、そんなマンガでした。 パシらされる彼については、明日以降大丈夫なんかなってすこし心配になりますが、どう転んだとしてもあのかわいい人がいるからきっと大丈夫でしょうね。だめかもしれんが、大丈夫だったかもしれないし。 できれば瑣末ないろいろは軽く超越して日々を過ごしていきたいと思うんですけど、描写される平和な世界をうらやましいと思いました。一種のファンタジーかもしれません。 たとえば沖縄の土産物屋の土産物の箱の包装紙の描き込み方とかがあんまりに好ましいので、この作者の連載は読んでいます。自在に360°ぐるぐる回してどの構図も描けちゃうんだろうな。エピソードもしみじみ楽しくてとてもいいです。透明になってしまった弟と、その姉のはなし #読切応援透明人間 森優nyae絵になる絵を描く人ですね…ファンになりました。 心をこわして透明人間になってしまった(と思われる)弟とその姉の、シリアスになりすぎないユーモアに富んだお話でした。 むりやりこちらへ引っ張り戻そうとするのではなく、いつでも戻っておいでというような、良い距離感の優しさを感じます。どうにもならない夜夕焼け集団リンチ 古泉智浩ムヒ※ネタバレを含むクチコミです。あなたの周りにも、バクちゃんはいる #1巻応援バクちゃん 増村十七ナベテツご縁があり、連載前からバクちゃんを読んでいました。毎月ビームを購入していますが、楽しみにしていましたし、単行本が発売されてとても喜んでいます。 夢の枯れた星から、地球に移民としてやってきたバクちゃん。作者の増村さん自身が海外に住んでいた経験があり、実際に海外で過ごした経験と視点が、日本という国や社会を見る眼差しの根底にあると思っています。 一人暮らしを始めて20年以上になるのですが、故郷にいた頃よりも確実に、海外出身の人や海外にルーツを持つ人は増えていると思います。 あなたの周り、自分の周りにも、バクちゃんやダイフクくんはきっといます。彼らは、共存すべき他者であり、共に社会を構成するメンバーです。 この国には、沢山のバクちゃんがいる。この作品は、そのことを教えてくれます。一人でも多くのバクちゃんが、お腹いっぱい夢を食べられますように。泣いてしまったバクちゃん 増村十七名無し※ネタバレを含むクチコミです。移民として地球にやって来たバクの男の子 #1巻応援バクちゃん 増村十七名無し故郷に食べられる夢がなくなったので地球にやって来たバクちゃんですが、子供ながらに永住権を取るために奮闘してる姿を見ると応援せずにはいられません。とても健気で可愛いです。宇宙と繋がってる東京メトロとか、成人したバク星人は人間に変身できるとか、現代の東京とファンタジーが混ざった世界観も面白いです。オリジナルな設定がとてもユニークなので、現実的に描かれている移民問題についても取っつきやすくなっていると思います。故郷がないってこんなに悲しいことなんだって思いました。宮沢賢治の高貴な魂がそのまま漫画に #1巻応援ひかりの素足 宮沢賢治傑作集 二星まゆ野愛宮沢賢治の世界、イーハトーブの世界がそのまま目の前に広がります。 自然豊かな景色は美しく、キャラクターは表情豊かで素朴に描かれた絵柄が宮沢賢治の世界観とぴったりで、違和感なく物語に入り込めます。 収録されている『雪渡り』『よだかの星』『ひかりの素足』は子どもの頃に教科書などで読んだことがある方も多いと思います。大人になってから読んでみると、自然との調和、自己犠牲の精神など宮沢賢治の高貴な魂に改めて深い感銘を受けました。 幻想的かつ土着的で、優しいだけではないイーハトーブの世界に是非浸ってみてください。心に残る演出がとても上手い坂の町 嵜山弓甘いか太郎絵がとにかく綺麗でうわ〜こんな素敵な作家さんを今まで知らずにいたなんてワシの目はフシ穴じゃ〜!と思ったのですが、最後のページに「本書は、自費出版として発表された作品に描き下ろしを加え、一冊に編集したものです。」の一文があり、どうやら雑誌に掲載された作品はないようです…。こんなにプロ級の腕を持った方がアマチュアで活躍されていたということでしょうか?世界ってすごいですね! ある日突然かぐや姫になっちゃった恋人の話とか普通じゃない設定の短編もありましたが、片思いしてる先生と相合傘したいけど言い出せない女の子の話みたいに、よくある展開でもハッとするような見せ場があるので面白かったです。他の作品も読んでみたくなった作家さんでした。人に歴史ありな一冊山田参助の桃色メモリー 山田参助名無し2000年代に実話誌に掲載されたエロ漫画が収録されています。ストーリーもほぼなくていい意味でアホらしい。底抜けに明るくて笑えるようなエロばかりです。参助先生も遊びながら描いてますね。どんだけふざけてるかは読んで確かめて頂きたい。漫画雑誌じゃないものに載った漫画って独特なものが多くて自分は好きです。混沌のナンセンスギャグ漫画不死身探偵オルロック 完全版 G=ヒコロウ名無し不条理ギャグにつっこむ暇なく、次の不条理ギャグが襲ってくるような漫画。マニアックなパロディネタもかなりあるらしいけど、全然拾えていない。面白いとはなにか混乱してくるが、それもまた楽しいヒトの形をしたナニカたちの神話みたいな物語偽史山人伝 詩野うらにわか現実の世界にすっと不思議なナニカが溶け込んでいるような作風が魅力的。とりわけ人魚川の点景は、これまでの人魚観をいっぺんさせるような物語だ。有罪無害玩具のころから人魚というテーマを面白く扱ってるなと思っていたが、今回はより身近な未知として描いている。 タイトルにもなっている偽史山人伝は民俗学や害獣から着想を得た物語らしい。現実世界にあるをすこしだけスライドさせ、異空間をつくりあげる。素晴らしい作家だと思う。 先生のホームページ http://tirasimanga.web.fc2.com/TUM/TUM.htmlみんな好きな人の見た…彼女と彼氏の明るい未来 谷口菜津子まさおみんな好きな人の見たい部分しか見ない。と言うか見たくない。でも本当の人間関係って「自分の理想」って色眼鏡を外した所にあるって気がつかされる漫画。ポップな絵が少し重いテーマを軽く読ませてくれるいい漫画。ていねいに紡ぐ、雑な生活 #1巻応援雑な生活 中憲人nyae主人公・ゆう子の生活はたしかに雑ではあるんですが、個人的には親しみがわきます。自分が快適に暮らすためにたどり着いた結果だと思えば、雑でも彼女が幸せならそれでいいんじゃない?という気持ちに。 友人の佐々木(雑じゃない)も、ゆう子の雑さに文句を言ったりもするけど、楽しそうに雑な生活を送るゆう子を全否定したりしないし、それなりに尊重しているバランスの良い関係が読んでいてほっこり。 ハロウィンの仮装で、何かしらのキャラになるだろうといってパーカーを雑に重ね着するアイデアは、普通にいいなと思いました。<<1112131415>>