あらすじ

マル高との激戦を制し、神奈川県大会へとコマを進めたクズ高バスケ部! だが、キャプテンの百春が負傷し、彼を欠いたまま県大会に臨むことになり、厳しい現実を突きつけられる。そんな状況の中、マル高との試合に影響を受けた新入生が入部してくる。百春には及ばないものの、戦力になりそうな彼らから、空たちは強い追い風を感じる。それぞれが胸に秘めた思いを抱え、クズ高バスケ部は、県大会までの日々を過ごしていく!!
あひるの空 1巻

車谷 空、15歳。身長は149cmと低めだけど、バスケが大好き! 入学したばかりの高校でもバスケ部に入部しようと張り切るものの、そこにいたのは学校をしきる凶悪な双子とその仲間達!? こんな部で、空はバスケを続けることができるのか? そして、小柄な空が魅せる大きな翼とは!?

あひるの空 2巻

百春たちとケンカになった新丸子高校が、バスケの試合を申し込んできた! 俺たちのバスケを見せてやると、空たち九頭龍高校バスケチームは必死に練習を重ねていく。そして迎えた試合当日! 初めての試合を純粋に喜ぶ空だったが、対戦相手の丸高のレベルは予想以上に高く、空たちは徐々に苦戦を強いられていくことに!?

あひるの空 3巻

空にとって初めての試合は、ピンチに追い込まれ始めた! 最終クォーター残り5分、試合続行も不可能かと思われたとき、ついに千秋が立ち上がった!! いつの日か、千秋が一緒にバスケをやってくれると信じていた空。そんな彼の期待に、千秋はどう応えるのか!? そして、空たちクズ高に勝利はあるのか!?

あひるの空(4)

すったもんだの挙げ句、無事? クズ高バスケ部員となったトビ。改めて、トビのバスケレベルの高さに驚かされる空たちだったが、マネージャー候補のナオに「このチームでは勝てない」と言われ、女子バスケ部と試合をすることに。男子チームが勝ったらマドカがハダカになるというこの勝負、勝利はどちらの手に!?

あひるの空(5)

奈緒が正式に、クズ高男子バスケ部のマネージャーに決定! やる気も出てきたところで、合宿を行うことに。しかし、今までろくに活動していなかったので、部費がほとんどない状態‥。慌ててバイトに励む空たちだったが、奈緒の秘策?で合宿は無事行われる。これを機に、クズ高バスケ部はレベルアップを計れるか!?

あひるの空(6)

ついに合宿の成果を試す練習試合が開始! ナオのいとこでもある太郎は、かなりくせがあるものの、実力は本物。負けるわけにはいかないと、空たちクズ高バスケ部は大奮闘!! 好スタートを切ったはいいけど、太郎率いる北住におされ始め、クズ高はオリジナルDFを発動させる!!

あひるの空(7)

空率いるクズ高とカバチ率いる北住高の練習試合は、序盤から白熱! 予想以上にクズ高が活躍、同点で最終クオーターを迎えた! が、百春は本調子ではなく、その原因は、どうやら北住にいるかつての後輩・小西にあるらしく‥。それぞれの想いがぶつかりあう試合、勝利はどちらの手に!?

あひるの空(8)

クズ高で球技大会が開催! 意外にも盛り上がるバスケ試合中、身長・198センチ、フックシュートが完璧な少年・茂吉が現れた!! 彼と一緒にバスケがしたいと、空は茂吉にバスケ部入部の誘いをかけるが、茂吉はバスケをやめていた‥‥。なぜ茂吉はバスケをやめてしまったのか!?

あひるの空(9)

茂吉も入部し、最強メンバーが揃ったクズ高。いよいよ始まった地区予選1回戦の対戦相手は、高身長の主将・高橋率いる新城東和学園! 序盤、優位に試合を進めたクズ高だったが、意外なところから崩れ始め‥!? クズ高、1回戦突破なるか!?

あひるの空(10)

インターハイ予選1回戦で、九頭龍高・茂吉がついに出場! それによりクズ高は勢いを増し、新城東和学園に1ゴール差まで追いつき、前半を終了。だが、いったんベンチにひっこんでいた千秋がいなくなってしまった! 千秋はどこへ!? そして後半までに戻ってくるのか!?

あひるの空(11)

インターハイ地区予選・一回戦に臨むクズ高バスケ部! 空の母・由夏も見守る中、試合はラストクォーターに突入!! 順調にリードしていたクズ高だったが、千秋がファウルを取られてしまい、あとひとつで退場という状況に陥ってしまう! それにより試合は対戦相手・新城に流れ始め‥‥!?

あひるの空(12)

インターハイ地区予選、最初はリードしていたクズ高だったが、最後は新城東和学園に逆転されて敗北してしまう! 試合後、空は容態が悪化した母・由夏を見舞いに病院へ急ぐ!! 久しぶりに会う母に、空は負けたことを告げられないまま、別れの時が迫まっていた‥‥。

あひるの空(13)

百春たちが起こした火事により、クズ高バスケ部は廃部になったまま。そんな中、空が神奈川に帰ってきた! 事件を知った空は、茂吉や奈緒と共に新たに同好会としての設立を試みることに!! そして、事件を起こした責任を感じ百春は一人、顧問の五月の元へ向かうが‥‥!?

あひるの空(14)

バスケ部復活を賭けて、横浜大栄高校と練習試合をすることになったクズ高バスケ部。そのため空と奈緒は大栄の試合を偵察することに。その試合とはI・H出場を決定する試合で、大栄の対戦相手はクズ高も試合したことがある、千葉率いるマル高だった! マル高相手に大栄はどんな実力を見せるのか!?

あひるの空(15)

クズ高バスケ部復活を懸けた、横浜大栄との練習試合が近づいてきた!! 「昨日より強くなるために」と、今まで以上にがんばるクズ高メンバーたち。対する横浜大栄も、強豪校ならではのハードな練習や、熾烈なレギュラー争いが繰り広げられていた‥‥!!

あひるの空(16)

バスケ部復活を懸けて、強豪・横浜大栄と試合中のクズ高バスケ部! 第2クォーターに突入し、クズ高は遂にモキチとトビを投入する。ベストメンバーのクズ高は勢いを増すが、逆にこれ以上の力は出せないという現実に直面する! そんなクズ高に勝機はあるのか!?

あひるの空(17)

クズ高バスケ部復活を懸けた大事な一戦! 対戦相手・横浜大栄に大差をつけられたクズ高だが、トビと空が突破口を開き、差が徐々に縮まってきた!! さらに、クズ高バスケ部活動停止の原因を作った百春とヤスの底力と、密かに練習を重ねてきた千秋の活躍で、クズ高の勢いは止まらなくなり‥‥!?

あひるの空(18)

クズ高vs横浜大栄の試合も、いよいよ最終クォーター! モキチに勝つために努力してきたミネタ。豹に一矢報いるため、進化を遂げたトビ。それぞれの想い、すべてを懸けて試合は白熱する!! そして、残り時間が3分を切った時、ついに空がコートに戻ってきた! 折れない心を最大の武器に、空はどんな試合展開を見せるのか!?

あひるの空(19)

同好会として、再び立ち上がったクズ高バスケ部! 顧問がいないため、なかなか自由に活動できないものの、今までの試合経験を生かしての新練習法など、徐々に成長の兆しを見せ始める!! そんな時、ストリートバスケの天才・ニノと知り合った空は、1on1の試合をすることになり‥‥!?

あひるの空(20)

川崎で行われるバスケ大会・モンスターバッシュで、ついに初勝利を手にしたクズ高バスケ部! 次なる相手は、強敵・チバ率いるゴリラズ!! そこには、空と同じくらい小柄で生意気な中学生・行太という選手がいた。彼には絶対に負けられないと、闘志を燃やす空だが、思った以上に行太の実力は本物だった‥‥!!

あひるの空(21)

モンスターバッシュ準決勝で、ニノたち菊川高校と対戦することになったクズ高バスケ部!! 最初は優勢だったものの、トビが負傷のため途中退場した途端、あっという間に逆転されてしまう。これまでほとんど試合に出ることがなかった安永たちは、“シックスマン”として、どこまで活躍できるのか!? そして、空はニノとの1on1に勝つことができるのか!?

あひるの空(22)

夏休み最後の練習試合! 今まで練習してきたことすべてを懸けて、クズ高バスケ部が挑む相手は、里実西高校!!  クズ高が同好会と聞いて、最初はバカにしていた里実西高も、試合開始後、予想以上のレベルの高さに愕然! 前半、何とクズ高が20点リードと絶好調!! そんなクズ高に対し、里実西高監督が立てた策とは‥‥!?

あひるの空(23)

2学期に突入し、部に昇格するため頑張るクズ高バスケ部だが、体育館が使えず、思ったように練習できないことに焦る毎日。でも、女子バスケ部が体育館での合同練習を提案してくれたり、顧問の五月が早朝練習の許可を取ってくれたりと、徐々に光が見え始める‥‥!!

あひるの空(24)

部昇格を目指し、毎日ひたすら頑張る空たち。練習試合で10勝のノルマに向け、バスケ素人だったチャッキーも成長の兆しをみせる。そして、遂に、怪我をしていたトビがクズ高バスケ部に復帰! 怪我をしたことで、改めてわかった自分の弱点を克服するため、努力していたトビが見せるプレーとは!

あひるの空(25)

廃部騒動から半年、空達には告げられていなかった部昇格の条件を、彼らは無事クリア! だが、一部の教師から反対にあい、再び暗礁に乗り上げてしまうものの、空の父でバスケ部監督・智久の一言がきっかけで、部として復活!! ひたすら上がっていくために、空達の新たな挑戦が始まる!!

あひるの空(26)

冬休み合宿第2部をスタートさせた、クズ高バスケ部! 1回目の合宿よりもさらにキツくなり、音を上げる者も出たが、無事に合宿を乗り切り、川崎地区地域交流戦に挑むことに!! 「強くなった」と、実感するクズ高バスケ部は、男女共に勝利を手にすることができるのか!?

あひるの空(27)

冬合宿の集大成である地区大会で、北住吉と試合をするクズ高! 大差をつけられるクズ高だが、空のスリーポイントで、徐々に追いつき始める!! 個々の実力が発揮されるクズ高に対し、北住も、太郎と小西を中心に反撃を開始!  勝利はどちらの手に!?

あひるの空(28)

季節が流れ、新入生が入ってくるまで、あと2か月。“絶対にうまくなってやる!”と決意し、正統派PGを目指すチャッキー。だが、監督である智久から非情な通告を受け、チャッキーは前に進めなくなってしまう‥‥。今まで一丸となり頑張ってきたチームは、大きな転機を迎える!!

あひるの空(29)

五十嵐行太が、クズ高に入学してきた! 早速バスケ部に誘う空だが、行太にいい返事がもらえない。なぜ彼は、新城東和に行かずクズ高に入学したのか!? そして彼以外にも、個性豊かな新入生がバスケ部に入部!! いよいよ始まる関東大会、クズ高は真の勝利を掴むことができるのか!?

あひるの空(30)

関東大会地区予選、クズ高の試合前に、菊川vs.北住の対戦が行われる。最初は負けていたものの、ニノの活躍で流れは菊川に傾き始めるが、北住も真の強さを見せる。両校の試合後、いよいよクズ高の試合開始!! 他会場で、すでに試合を行っている女子と共に、クズ高バスケ部は勝利できるのか!? そして、関東大会後のインターハイへ向けて、どう成長するのか!?

あひるの空

昨今のきれいごと主義に一石を投じる刹那的青春ドラマ

あひるの空 日向武史
mampuku
mampuku

 スラムダンク以後のバスケットボール漫画で最高傑作はと聞かれたら、未完ではあるものの多くの人がこの作品を挙げると思います。バスケットボールという競技だけでなく、青春を、人生を、人生で最も濃密で輝きに満ちた三年間をテーマに描き、その意味を50巻以上にわたる長い物語の中で常に問い続け、キャラクターたちは思い悩み抜いた先に彼らの信じた道をひた走っていきます。そしてその道は永遠につづいていくものでは必ずしもなく、明日には終わってしまうかもしれない、という刹那性こそがこの作品の裏のテーマであることは間違いないと思われます。  ちなみに表のテーマは挫折や逆境からの再生みたいな感じでしょうか。低身長で馬鹿にされ活躍の場が得られなかった主人公が、正確無比の3Pシュートを武器に、不良や虚弱体質といった「逆境仲間」とともに下馬評を覆しライバルたちをなぎ倒していく…のがまぁ普通のスポーツ漫画だと思うんですが(そういうカタルシスが無いわけではないですが)挫折や苦悩、恋慕、失恋、嫉妬、確執…などなど、ジ○ンプではとてもとても味わえないようなビター&スパイスたっぷりなところが「あひるの空」の心揺さぶられるところなんですね。  作者があとがきで語っていますが、以前にも何度か映像化のオファーがあったもののそのいずれも「空(主人公)がNBAの舞台に…!」というラストを提案されたそうで、そのたび作者は「あひるの空という作品をわかってもらえていない」と落胆したそうです。  主人公の空を含め九頭竜高校メンバーは多分エースのトビを除いて誰もプロにはならないでしょうし、他校の強敵も進学せずインターハイ敗退=バスケット引退となる選手が少なくないはずです。そこに「キセキの世代」みたいなドリーミングさはなく、全日本に選ばれた流川やそれを追いかける天才もおらず、現実的だからこそ何よりもドラマチックな生々しい青春物語があるだけです。  膝を痛めながら奮闘するエース・トビは、彼の膝の具合を案じた先生にこう言い放ちました。 「自分たちに未来があると思わないでくれ」  これには色々な意味が込められています。無名ながら快進撃を続けるクズ高だが全国を狙えるのは今年しかない(だから怪我を押してでも出場させてくれ)というトビの意図とは別に、物語においても「ここで燃え尽きてもかまわない」というキャプテン・百春の発言や、空の大活躍は成長途中の色々な条件が重なったことによる偶発的なものであるという監督の見解などともリンクしてきます。彼らは「未来」なんてもののために青春をかけているのではないのです。それでも彼らの将来を案じて怪我などから守ることが大人の役目です。クズ高の監督も勝利と生徒の将来との両天秤に悩まされることになります。 「甲子園は暑すぎるので別会場でやるべき」「選手の将来を考えて球数制限をすべき」  というような昨今の風潮に抗うかのように「あひるの空」の登場人物たちはスポコンにのめり込んでいきます。  もちろん高校野球のマネージャーが熱中症で亡くなったりそれを美談仕立てで報じたりする今のスポーツ界の在り方は議論の余地なく「悪い」ですし、スパルタ的練習法の効率性がスポーツ科学の観点から疑問視されているこのご時世ではあるものの、一方で、最大限安全への考慮をした上でという条件つきですがぶったおれるまで足がつるまで灰になるまで走り切った先にしか見られない景色があって、その刹那の輝きが後の人生において掛け替えのない宝になるであろうことを信じて疑わない、ある意味宗教みたいなものかもしれませんが…そういう世界があること自体は否定されるべきではないのではないかなと思うのです。  私事ですが学生時代はバンドに打ち込んでいたので、その刹那の輝き教の信者たる彼らの気持ちはよくわかります。一方でスポーツに青春をかけていた人たちを眩しい目で見ていたというのも事実なので、彼らをやっかんで「高校野球なんて危険だやめちまえ」みたいに言っちゃう人の気持ちもまったくわからないでもないわけです。「あひるの空」はそういう複雑でないまぜの感情をリアルに感じられる稀有な漫画です。多感なあの頃がよみがえる…色んな意味で心のリフレッシュになる作品かもしれません。