あらすじ

ひなびた漁村や岬、白浜が魅力的な景色を展開する素朴な西伊豆は松崎での、人々との触れ合い…。そして紅葉を求め、福島県の二岐渓谷で遭遇した大型台風の恐ろしい一夜など、作者の体験を描いた旅マンガ。読む人を摩訶不思議な世界へと誘う鬼才の代表作『ねじ式』の他、長八の宿・二岐渓谷・オンドル小屋・ほんやら洞のべんさん の、全5編を収録。※作品は1968年に発表されました。
賭/おばけ煙突 つげ義春作品集 1巻
ある場所では1本。また別の場所からは4本と、見る場所によって本数が違って見える、おばけ煙突。そのおばけ煙突を掃除した人が、立て続けに3人煙突から落ちて亡くなり、祟りがあると恐れられていく。そんな時、子供が病気になり金に困ったベテラン掃除夫は、悩んだ末、おばけ煙突の掃除を…。(おばけ煙突)/ 他、ある一夜・うぐいすの鳴く夜・クロ・鉄路・賭 の、全6編を収録。※作品は1958年~1959年に発表されました。
非情/怒れる小さな町 つげ義春作品集 2巻
関西の殺し屋として有名な鮫島兄弟の兄が、殺し屋サムに殺害され、兄の仇を討つため地下組織に女装して潜入した弟のケン。だが、正体が暴かれ、地下のガレージに閉じ込められてしまう。そんな時、仇のサムが現れ…。(非情)/ ハードボイル劇画、時代劇など、鬼才の初期作品、非情・忍者狩り・恐れる小さな町 の全3編を収録。※作品は1960年に発表されました。
死にたい気持ち/噂の武士 つげ義春作品集 3巻
世の中には一流以上の才能を持ちながら、世間に認められない者もいる。温泉宿で相部屋になった武士は身の丈六尺におよぶ大男で、異相。播州の牢人だと言う彼は、実は名のある武芸者ではないかと思った平田。しかし、相部屋で生活をするうちに…。(噂の武士)/ 他、行ったり来たり・西瓜酒・死にたい気持ち・運命 の、異色作品全5編を収録。※作品は1965年に発表されました。
チーコ/沼 つげ義春作品集 4巻
買い物から帰って来た妻が文鳥を飼いたいと言う。ケンカばかりの生活だったが、文鳥を飼ってからは笑い声の絶えない日々が続き、幸せの青鳥と思うようになった若夫婦。だがある日、夫はふとしたことから文鳥を死なせてしまい、妻には逃げたとごまかすが…。(チーコ)/ 他、下町の唄・不思議な絵・兄貴は芸術家・沼・初茸がり の、全6編を収録。※作品は1965年~1966年に発表されました。
紅い花/海辺の叙景 つげ義春作品集 5巻
タダ同然の家賃で借りた郊外のボロ家に引っ越してきて1年。広い庭でトマトやキュウリを作り、木々には小鳥が遊びにくる理想の生活を満喫していた青年。だが、いつの間にか2階に李さん一家4人が住みつき、奇妙な同居生活が…。(李さん一家)/ 他、鬼才の問題作、古本と少女・通夜・山椒魚・峠の犬・海辺の叙景・紅い花・西部田村事件 の、全8編を収録。※作品は1966年~1967年に発表されました。
ねじ式/二岐渓谷 つげ義春作品集 6巻
ひなびた漁村や岬、白浜が魅力的な景色を展開する素朴な西伊豆は松崎での、人々との触れ合い…。そして紅葉を求め、福島県の二岐渓谷で遭遇した大型台風の恐ろしい一夜など、作者の体験を描いた旅マンガ。読む人を摩訶不思議な世界へと誘う鬼才の代表作『ねじ式』の他、長八の宿・二岐渓谷・オンドル小屋・ほんやら洞のべんさん の、全5編を収録。※作品は1968年に発表されました。
ゲンセンカン主人/夢の散歩 つげ義春作品集 7巻
寂れ、死んだように静まりかえる温泉町にやって来た一人の男。だが、彼はそんな温泉町に昔から知っていたような親しみを感じる。駄菓子屋を覗いた男は、その店バアさんにゲンセンカンという温泉宿の主人にそっくりと言われるのだが…。(ゲンセンカン主人)/ 他、郷愁感を誘う、もっきり屋の少女・蟹・やなぎ屋主人・夢の散歩 の全5編を収録。※作品は1968年~1972年に発表されました。
リアリズムの宿/下宿の頃 つげ義春作品集 8巻
作品ネタを探しに秋田県能代と青森県の五所川原を結ぶ五能線の沿岸を歩く作者。真冬の景色は暗く冷たい。鯵ヶ沢で泊まった商人宿をネタにしようと思いつくが、リアリズムにあまり触れたくない作者に、宿の人たちは生活臭をさらけ出して…。(リアリズムの宿)/ 他、夏の思い出・下宿の頃・大場電気鍍金工業所・懐かしいひと の全5編を収録。※作品は1972年~1973年に発表されました。
義男の青春/枯野の宿 つげ義春作品集 9巻
貸本屋向けの漫画を描いて生活をしている津部義男は、最近スランプに陥っていた。一家7人を兄と共に経済的に支える義男は、母親から催促され、焦るばかり。そんな時、先輩の田山に誘われるまま、湯河原温泉に泊まり込んで仕事に没頭しようとするが…。悩める青春の日々を描いた作者の代表作、『義男の青春』の他、事件・枯野の宿 の全3編を収録。※作品は1974年に発表されました。
夜が掴む/庶民御宿 つげ義春作品集 10巻
同居中の女性に暴力をふるい、彼女はアパートの部屋を飛び出してしまう。だが、帰って来た彼女の体には無数のキスマークが…。(夜が掴む)/ 海水浴帰りの若者が知り合った行商人Kさんは、酒を飲みながら泣き出し、自分は悪い男だと言う。5年前、ある夫婦から、子供が欲しいので妻を抱いてほしいと頼まれ…。(庶民御宿)/ 他、退屈な部屋・アルバイト・コマツ岬の生活 の全5編を収録。※作品は1975年~1978年に発表されました。
必殺するめ固め/会津の釣り宿 つげ義春作品集 11巻
必殺するめ固めを得意とする元プロレスラーに技をかけられ、愛妻を奪われた男は、彼女が目の前で犯されるのを見て絶望を感じるのだが…。(必殺するめ固め)/ 会津只見川の支流・野尻川に釣りに出かけた作者だが、旅人の気持ちを察しない無神経な宿に泊まり…。(会津の釣り宿)/ 他、独自の感性を持つ鬼才が描いた、外のふくらみ・ヨシボーの犯罪・魚石・窓の手 の、全6編を収録。※作品は1979年~1980年に発表されました。
近所の景色/少年 つげ義春作品集 12巻
少年の身ながら、生活のためメッキ工場で働く義坊の夢は、漫画家になること。ある晩、本屋の娘から義坊の漫画が雑誌に載っていると教えられ、その雑誌を手にし有頂天に。だが、義父から漫画で食べていけるのかと言われ…。(少年)/ 他、日の戯れ・近所の景色・雨の中の慾情・散歩の日々 の全5編を収録。※作品は1980年~1984年に発表されました。
隣りの女/ある無名作家 つげ義春作品集 13巻
貸本漫画を描いていた安井は生活に困窮し、A氏の仕事を手伝うことに。そこには英文科を出てアシスタントをしている変わり者の奥田がいた。彼はA氏のもとを辞める時、3年も他人の絵を描き、自己表現ができないことに苦しくなったと嘆く。理想と現実のギャップに悩む、貸本漫画の末期を描いた異色作、ある無名作家の他、池袋百点会・隣りの女 の全3編を収録。※作品は1984年に発表されました。
無能の人/石を売る つげ義春作品集 14巻
やることなすこと失敗続きで、元手のかからない石屋になった男が、自分にはまだ夢があると妻に話すが、まったく相手にされず…。(石を売る)/ 派手な色彩の輸入インコが人気の中、飼育の面倒な和鳥ばかりを扱う店があった。名鳥として育て上げる店主の腕は確かだが、そのプライドのせいで店には閑古鳥が鳴き…。(鳥師)/ 大金を夢見る男の怠惰な生活を描いた連作、石を売る・無能の人・鳥師 の、全3編を収録!! ※作品は1985年に発表されました。
やもり/カメラを売る つげ義春作品集 15巻
終戦直後、食べる物にも困っていた時代を生きる少年たち。裕福で優しい夫婦に自分たちの子供にならないかと言われた春だが、どんなに苦しくても子供たちと離れたくないと母親に泣かれ…。(やもり)/ 相変わらず河原で石を拾って石屋を続けている男は、ある時、家族3人で旅行にでかける。しかし、旅先で感じたのは孤独な寂寥感だった…。(探石行)/ 他、カメラを売る の全3編を収録。※作品は1986年に発表されました。
別離/海へ つげ義春作品集 16巻
どんなに頑張っても貸本漫画の収入では生活でないと悟った男は2年間、生活を共にした女性と別居。だが、一人になっても貧乏生活から抜け出せないでいた。一方、別居し働き始めた彼女は生き生きとし、オシャレになった。ある日、その彼女のバッグの中を見た男は避妊具があるのを見て…。(別離)/ 貧しい中にもユーモアを交えた、蒸発・海へ の全3編を収録。※作品は1986年~1987年に発表されました。
改訂版 ねじ式 つげ義春作品集

改訂版 ねじ式 つげ義春作品集

「ガロ」掲載作を全網羅 「ねじ式」(オリジナル2色バージョン)「噂の武士」(4段組バージョン)他、 65~70年発表の代表作を初出誌サイズで一挙に再現。 単行本未収録を含むカットやエッセイも可能な限り収録し、 単行本により微妙に異なっていたセリフもオリジナル無修正版とした定本的集成。 完全作品リストを始めとする最新版年譜を付した決定版!
試し読み
蟻地獄・枯野の宿(新潮文庫)

蟻地獄・枯野の宿(新潮文庫)

ひどい砂嵐だった。観光客は砂漠の大きな穴にはまり、炎天下、水も食糧も尽きてしまう。そんな極限状況下の人間の本性を暴く「蟻地獄」……。遅筆の漫画家が一計を案じた。郊外に安い土地を買い、せめてのんびりくらしたい、と。だが、現実は彼の夢を許さない。逼迫した漫画家、その小さな挫折を描く「枯野の宿」……。貸本時代の作品を中心に17編収録。懐かしさ溢れるつげ漫画集第三弾!
義男の青春・別離(新潮文庫)

義男の青春・別離(新潮文庫)

真綿で首を締められるような毎日だった。一家七人の経済的支柱として、駄菓子にひとしい貸本漫画を描き続ける責苦。芸術的な漫画を志し焦燥する「義男の青春」。浮気した恋人を恨み、ブロバリンを発作的に飲むが死に切れず、我が身のやりきれなさから滂沱の涙を零す、売れない漫画家の自己憐憫「別離」など14編収録。現実と夢、日常と狂気の領域を融通無碍に往還する、つげ漫画集第二弾。
無能の人・日の戯れ(新潮文庫)

無能の人・日の戯れ(新潮文庫)

漫画家として行き詰まった〈私〉は、他人の目にはろくでなしに映るかもしれない。ろくに働かず稼ぎもなく、妻子にさえ罵られ、奇天烈な空想に耽りながら、無為な日々を過ごしているのだから……。甲斐性のない漫画家の悶々とした日常を描く「無能の人」、競輪場の車券売り場窓口越しに仄かに通い合う夫婦の愛「日の戯れ」など、滑稽かつ哀切な人間存在に迫る〈私〉漫画の代表作12編集成。
ねじ式

ねじ式

超現実を描く『ねじ式』など衝撃の名作集! 不安、緊張、そして心地よい無力感を生む、まさしく「夢」の増殖としか呼びようのない衝撃作『ねじ式』の他、『ゲンセンカン主人』『オンドル小屋』等、つげ世界の精髄を結集した必読の一冊。
紅い花

紅い花

しみじみ変で懐しい、つげ世界に導く1冊! 現実と非日常の間を自在に往き来する融通無碍の「つげ世界」は、読む者のそこはかとない憧憬を誘って止むことがない。永遠の詩情を湛える名品『紅い花』をはじめ『もっきり屋の少女』『二岐渓谷』等を収めた短編集。
ヨシボーの犯罪

ヨシボーの犯罪

▼第1話/ある一夜▼第2話/蟻地獄▼第3話/女忍▼第4話/なぜ殺らなかった▼第5話/ねずみ▼第6話/庶民御宿▼第7話/ヨシボーの犯罪▼第8話/魚石▼第9話/窓の手▼第10話/少年▼第11話/近所の景色▼第12話/ある無名作家 ●登場人物/私(語り手。くぼ地の集落に散歩に行く/近所の景色)。李さん(くぼ地にすむ朝鮮人。大きな雷魚を飼っている/近所の景色) ●あらすじ/うまそうな女か、まずそうな女か…、ピンセットで一センチほどさしてみるとほぼわかる。ピンセットの血を洗う。水の中でピンセットを小さく折り曲げ、手中にかくす。五十歳まで拘禁されたら、青春は、とりもどせない。なんとしてもかくし通さなければ…。いつか夢でみたような、どこかなつかしく残酷な超現実の世界(第7話)。▼私の家のそばに、くぼ地にバラック建ての家が並んだ一角があった。今にも朽ち果ててしまいそうだが自然のぬくもりが感じられる、そんな一角に散歩に出向いてぼんやりと過ごすことが好きだった。そうすることで気持ちが安まるのだった。しかし今、集落は立ちのき問題でゆれていた。そこに住む顔見知りの李さんは、一メートルはある大きな雷魚を飼っていて…(第11話)。●本巻の特徴/深層心理に光をあて展開される、印象的な風景を描いた表題作のほか、人間の欲望が関係性をゆがめていく皮肉な結末の作品群や、日常の中の生活の手ざわりを切り取ってみせる一連の作品など、独自の世界観が表現されている。●その他の登場キャラクター/女忍(第3話)、犬丸入道重勝(第3話)、助佐(第3話)、行商人Kさん(第6話)、私(第8話)、T君(第8話)、グロリア(第9話)、義坊(第10話)、カズ子(第10話)、安井(第12話)、奥田伸一(第12話)、木山君(第12話)●その他のデータ/発表された年・月~ある一夜(1958年12月)、蟻地獄(1960年 4月)女忍(1960年5月)、なぜ殺らなかった(1961年4月)、ねずみ(1965年2 月)、庶民御宿(1975年4月)、ヨシボーの犯罪(1979年9月)、魚石(1979年 10月)、窓の手(1980年3月)、少年(1981年7月)、近所の景色(1981年10月)、ある無名作家(1984年9月) 解説 ~川本三郎(評論家)
生きていた幽霊

生きていた幽霊

1956年に貸本出版社の若木書房の「探偵漫画シリーズ」の1冊として刊行された単行本の完全復刻。「に来た男」「生きていた幽霊」「指をたべた男」「罪と罰」「奇人」の5編を収録した短編集です。それぞれは独立した短編となっており、たんなる謎解きにとどまならい人間心理の闇や不可思議さを巧みな語り口で描いている秀作です。子ども向けに描かれたものですが、大人が読んでも十分味わえる「奇妙な味」の作品集といえます。全作がオリジナルフォーマットで復刻されるのは、今回がはじめてです。付録として、著者の4年ぶりの肉声をおさめたインタビューを収録した小冊子付きです。
四つの犯罪

四つの犯罪

1957年に若木書房の「探偵漫画シリーズ」の1冊として刊行された貸本単行本の完全復刻です。「悪人志願」「覗き見奇談」「運地君の不思議な犯罪」「首」の4編を収録した、当時の貸本としては極めて斬新な描きおろしの個人短編集です。前回、復刻された「生きていた幽霊」とともに、不思議な味わいをもつミステリの佳作となっており、当時、白土三平や関西の劇画グループにも注目された作品です。宿場の逗留客がそれぞれ、奇妙な話を披露する形式で物語が語られてゆき、たんなる謎解きに止まらない人間心理の闇や不可思議さを巧みな語り口で描いています。前回の「生きていた幽霊」に続けて、著者の4年ぶりのインタビューを収録した小冊子付き。