あらすじ

手術によって膵臓のがんは除去したものの、主治医・庄司の指示で抗がん剤による治療を続ける主婦・辻本。彼女は「がんが治った人はすべてがんと闘った人たちなのです」という言葉を信じ、激しい副作用に耐え続けたが、がんは肺にも転移、既に「完治」の望みは絶たれていた。そのことを知った斉藤は「告知」の是非に思い悩む。そんな斉藤を見て、庄司はある医師たちの昔話を始めるのだった。
ブラックジャックによろしく(1)

永禄大学付属病院の研修医・斉藤英二郎。その月収はわずか3万8千円――。生活のためには他の病院でのアルバイトは欠かすことができない。ある日の夜、アルバイトとして訪れた誠同病院で当直を任された斉藤の元に、交通事故で瀕死の患者が運び込まれる。他に医者はおらず、いるのは経験も何もない“研修医”である自分と看護師だけ――。剥き出しの“命”に対面したその時、斉藤は…?

ブラックジャックによろしく(2)

研修の場を循環器内科へと移した斉藤。そこで受け持つことになったのは、不安定狭心症という心臓の病を抱えた患者・宮村和男。宮村の心臓は、すぐにでも手術が必要な状態なのだが、宮村は肝硬変を併発しており、手術の成功率は極めて低いという。指導医から「本当の事を言うな」と言われていた斉藤だが、苦悩の末、宮村に真実を話してしまう…!!

ブラックジャックによろしく(3)

永禄大学付属病院へと戻ってきた斉藤。しかし彼を待ち受けていたのは同僚らの冷たい視線と、嫌がらせだった。そんな折、他大学から永大病院へと研修に来ていた道場が、突然病院から逃げ出してしまった。その背景にあったのは、医者の過剰な特権意識と仲間意識――それを目の当たりにした斉藤は…。

ブラックジャックによろしく(4)

長い間不妊治療を続け、やっと授かった双子――。しかし二人は未熟児で、うち一人はダウン症と腸閉塞を併発していた。一刻も早い手術が必要な状況にもかかわらず、手術を拒否して「このまま死なせてくれ」という田辺夫妻。斉藤はそれに強く反発するも、指導医の高砂は「オレ達は結局他人だ…」と意に介さない。どうしても子供を助けたい斉藤は、ある人物に相談を持ちかける。

ブラックジャックによろしく(5)

NICUから小児科医へと移った斉藤。そこで斉藤が目の当たりにしたのは、医師不足が招く、小児科医の残酷な現実――。急患がいても受け入れを拒否せざるを得ない現在の体制に異議を唱える斉藤だが、何かを変えられるわけではない。小さな命を前に、斉藤は己の無力さを痛感することとなる。

ブラックジャックによろしく(6)

手術によって膵臓のがんは除去したものの、主治医・庄司の指示で抗がん剤による治療を続ける主婦・辻本。彼女は「がんが治った人はすべてがんと闘った人たちなのです」という言葉を信じ、激しい副作用に耐え続けたが、がんは肺にも転移、既に「完治」の望みは絶たれていた。そのことを知った斉藤は「告知」の是非に思い悩む。そんな斉藤を見て、庄司はある医師たちの昔話を始めるのだった。

ブラックジャックによろしく(7)

それぞれの理想と信念を抱き、がん患者・児玉の治療を続けた若き庄司と宇佐美。しかしその先に待っていたのは、児玉の死と、二人の道の決定的な離別だった。斉藤はその話を聞いたうえでなお、辻本への告知を決意する。「何かが変わるなら、告知に意味はあるはずです」斉藤の決意は、彼女に、そして彼女の家族に何をもたらすのか。

ブラックジャックによろしく(8)

斉藤が辻本に提示した、未承認薬「TS-1」を使用するという選択――。自分のがんが治ることはもはや無いと知った辻本は、自らの「死」と向き合うために、そして残りの「生」を全うするためにその提案を受け入れた。「死は敗北ですか?死は絶望ですか?死とは不幸で否定されるべきものでしかないのですか?」――人間の誰しもが向かい合わなければならない「死」。葛藤の果てに斉藤は何を見る。「がん医療編」、ここに完結。

ブラックジャックによろしく(9)

斉藤の次なる研修は“精神科”。そこで斉藤が出会ったのは、アルコール依存症で入院中の、門脇という新聞記者だった。しかし門脇に疾患は無く、斉藤の指導医である伊勢谷と組み、取材のための体験入院をしているのだった。門脇の口から語られたのは、“精神病”と“世間”、そして両者の間にある“差別”の真実。全日本人必読の「精神科編」、開始。

ブラックジャックによろしく(10)

斉藤が担当している統合失調症患者・小沢が、同じ病気で入院している女性患者・早川に恋をした。そのことで小沢が病院に依存してしまうのではないか、と心配する斉藤だが、小沢は退院へ向けて確実に歩を進めていく。しかし、小沢の退院を翌日に控えたその日、精神科への通院歴を持つ男が小学校で大量殺傷事件を起こす。精神病患者は危険である、と無根拠のままに喧伝するマスコミと、それに同調する世論。斉藤には何が出来るのか――。

ブラックジャックによろしく(11)

「精神障害者を装えば無罪になると思ったんでしょうね」。伊勢谷が門脇に話したのは、とある推論に基づく“詐病”の可能性。門脇は取材を開始するも、「マスコミの論理」の前に、彼は無力であった。その頃、永大病院では早川がニュースによる事件報道を目の当たりにし、精神の変調を来していた。――悪いのは患者なのか?世間なのか?マスコミなのか?行政なのか?

ブラックジャックによろしく(12)

退院したその日、小沢は世間の冷酷な目線と悪意に晒された。「自分には居場所が無い」と感じた彼は、斉藤の目の前で永大病院の屋上から虚空へとその足を踏み出してしまう。狂奔するマスコミ報道と、それによって苦しめられる患者たち。彼らのために、医師である斉藤、そして新聞記者である門脇は、己のフィールドで闘い続ける。

ブラックジャックによろしく(13)

「僕の目的は小沢さんの生きる場所を作ることです」「僕は医者でありつづけたいです」――一連の騒動の渦中にあってなお、自らの信念を貫く斉藤。新聞記者・門脇が魂を刻みつけた記事『精神医療の未来』が世間に発表されても、この世界の景色は昨日と何も変わらない。しかし、それでも、人は人を肯定して生き続けていく。昨日と何も変わらない世界の中で、斉藤はまた新たな一歩を踏み出していく――。「精神科編」、終幕。