
嘘か真実か陰謀論
自分が何かと恵まれていないのは、何か大きな陰謀によるものではないか?という、ネットではびこる「陰謀論」がテーマの本作。 主人公は、いわゆる社会的に弱者の部類で、それでも自分にも特別な何か(人生大逆転できるようなものが)あるんじゃないかと日夜怪しいセミナーに通いながら過ごす。 そんな中、偶然出会った大学生の女性に恋してしまう。 関係を深めていくなかで、彼女につきまとうFACTという謎の組織の存在を知り、彼女を守るために接触。 そこは、陰謀論に染まった集団で、自分の境遇の悪さも、彼女と出会ったのも全てが大きな陰謀だったと諭され、気づくと彼もまたその思想に染まりはじめてしまう・・。という展開。 社会的な問題を扱う重そうな感じもあれば、コミカルなヌケ感もある。 現実を描いた漫画だから明らかに嘘っぽくも感じつつも、これ実はファンタジー漫画なのでは?と思うと真実のように感じてしまう。 ついつい、陰謀も本当のように感じてしまう。(ちょっと調べればわかるんですけどね) そんな感じで嘘か真実かわからないながら、自分なんかは読んでいたのでめちゃくちゃ楽しめた。 特に2巻。 主人公が上述した恋心を抱いている女性に、付け焼き刃的な稚拙な持論を展開し、一瞬で論破される様は読んでいてホント痛々しく、ゾクゾクした。 共感性羞恥をこれほど感じたシーンはないと思う。 4巻で最終巻らしいけど、どうオチをつけるか気になる。
「チ。」にも通ずる思想を主題にした作品。信じる心の強さと怖さを感じます。マルチのセミナーに参加する人も、福祉サークルやNPOに従事する人も、陰謀論にとらわれる人も、同じ心理状態にあるよう。
渡辺がFACTに近づいて以降、この話はなんなのかよくわからない感覚で読み進めてしまいました。夢オチがくるんじゃないかのような、と疑いながら読んだ印象です。渡辺、本気で言ってんのか!?と。一方で、すべてお金で換算される価値観を否定しているシーンでは、確かにそうだよななんて共感しちゃったりして、という意味で思想の形成過程を体験したようで怖さを感じました。
3巻の終わりに、「次号完結!」とありましたが、ほんとに完結する?あと1冊でこの状態からまとめられる?!というのが率直な感想。1巻最初のシーンなんかいまだに全く繋がり見えてこないし、疑心暗鬼マンガです。
とても面白いです。おすすめです。