あらすじ

“陰謀論”を、信じた先にあったのは―― 正義のため、真実のため、勉強を重ね、努力を続けてきた。人生の何よりも、夢中で取り組んできた。そんなものが、もし嘘だったら――― 『チ。』『ひゃくえむ。』の魚豊が紡ぐ、「信念」と「疑惑」の物語―――!
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『チ。』の魚豊が描く、恋と陰謀――!! あの人に、好きな人はいるのかな―― あの時話していた言葉の意味って―― 抱いた恋心が溢れるとき、世界を動かす謎に迫っていく――! 『チ。』『ひゃくえむ。』の魚豊が描く、圧倒的新機軸、前代未聞のラブコメストーリー!!
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片思いの先でたどり着いたのは、“陰謀論” 恋路の中で覚えた違和感。「あの子は俺とイイ感じだったはずじゃ―――」疑念が疑念を呼び、やがて世界そのものを疑うようになっていく。『チ。』『ひゃくえむ。』の魚豊が問いかける、「嘘」と「真実」の物語―――!!
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“陰謀論”を、信じた先にあったのは―― 正義のため、真実のため、勉強を重ね、努力を続けてきた。人生の何よりも、夢中で取り組んできた。そんなものが、もし嘘だったら――― 『チ。』『ひゃくえむ。』の魚豊が紡ぐ、「信念」と「疑惑」の物語―――!
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嘘か真実か陰謀論

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六文銭
六文銭
自分が何かと恵まれていないのは、何か大きな陰謀によるものではないか?という、ネットではびこる「陰謀論」がテーマの本作。 主人公は、いわゆる社会的に弱者の部類で、それでも自分にも特別な何か(人生大逆転できるようなものが)あるんじゃないかと日夜怪しいセミナーに通いながら過ごす。 そんな中、偶然出会った大学生の女性に恋してしまう。 関係を深めていくなかで、彼女につきまとうFACTという謎の組織の存在を知り、彼女を守るために接触。 そこは、陰謀論に染まった集団で、自分の境遇の悪さも、彼女と出会ったのも全てが大きな陰謀だったと諭され、気づくと彼もまたその思想に染まりはじめてしまう・・。という展開。 社会的な問題を扱う重そうな感じもあれば、コミカルなヌケ感もある。 現実を描いた漫画だから明らかに嘘っぽくも感じつつも、これ実はファンタジー漫画なのでは?と思うと真実のように感じてしまう。 ついつい、陰謀も本当のように感じてしまう。(ちょっと調べればわかるんですけどね) そんな感じで嘘か真実かわからないながら、自分なんかは読んでいたのでめちゃくちゃ楽しめた。 特に2巻。 主人公が上述した恋心を抱いている女性に、付け焼き刃的な稚拙な持論を展開し、一瞬で論破される様は読んでいてホント痛々しく、ゾクゾクした。 共感性羞恥をこれほど感じたシーンはないと思う。 4巻で最終巻らしいけど、どうオチをつけるか気になる。
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誰しもが陥る可能性のある陥穽 #1巻応援

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兎来栄寿
兎来栄寿
アニメ化も発表された『チ。』や、『ひゃくえむ』の魚豊さんによる待望の最新作1巻が発売されました。 今回は、いわゆる「陰謀論」マンガです。単体でも挑戦的でまさに現代に相応しいテーマなのですが、それを『チ。』の後にやる。人間の知的探究心がいかにして世界を切り拓き動かしていくかという物語をやった後に、それが間違った方に転がったらどうなるかという危うさを描く。素直にすごいな、と思いながら1話から楽しみに、一方で恐ろしく思いながら読んでいました。 現代社会には、情報が蔓延しています。し過ぎています。現代人が1日に触れる情報の量は江戸時代の人間の1年分・平安時代の一生涯分に相当するとか、2002年のインターネット上の情報を10とすると2020年の時点ですら約60000になっていて今も加速度的に増え続けているなどと言われます。 コロナ禍にあっても、不安や困窮から冷静な判断をしにくくなっている状態で玉石混淆の情報が錯綜し、何が正しく何が間違っているのか多くの人が惑う中で分断や対立が起こってしまいました。最近急速に発達しているAIによるフェイク動画や画像なども今後はより氾濫していき、ますます真実を見極めるのが難しく、大事な時代になっていくでしょう。 そんな情勢下において、この物語で語られることは非常にクリティカルです。人は、他の人が気付いていない真実に自分だけが気付いているという甘美な果実の旨味からはなかなか逃れられません。 本作の主人公である渡辺は非正規雇用のいわゆる社会的弱者ではありますが、小学生のころの成功体験を基に論理的思考をする癖をつけてきた人物です。そんな彼が、いかにして陰謀論に堕していくのか。社会から受け入れられてこなかった人間が、少しでも自分を肯定してもらえるとどうなるのか。 そこには、現代社会や資本主義の、あるいは人間自体の構造的な脆弱性があります。そして、その脆弱性を利用して利益を得ようとする悪意が必ず存在し、そこも実に巧妙に描かれます。 客観的に離れた立場から見ている分には論理的な矛盾なども冷静に指摘できるものですが、いざ自分がその場で肉体的・精神的・経済的に弱まって判断力が低下した状態で同様のことをされた際にどうなるかと考えると、誰しもが自分は絶対大丈夫などとは決して言えないのではないでしょうか。 確かに女の子も出てくるのですが、この作品をラブ「コメ」と言ってしまうのはあまりに救いがなさすぎる気もします。読んでいると、共感性羞恥に近い諸々の感情も生じてきます。それでも、圧倒的に目の離せない筆力は流石の魚豊さんです。 反面教師として、戒めとして、大事なことが記されている物語です。