美味しいとこだけ見えないから美味しい漫画
今まで食べた中で一番うまい飯の話を語り、思わず唾を飲みこんだ人が多ければ多いほど勝ち。 今そこに飯があるわけじゃないからこそ面白い、それを漫画でやるのがこれまた面白い。 落語とか怪談とか民話とか、語りの良さってやっぱり語りにあると思うんです。語られてる事象や世界はそこに存在しなくて、でも語り口であったり表情だったりがその世界に引き入れてくれる。想像の余地があるからこそ面白い。 漫画は絵と文字だからある意味想像の余地がない…美味しそうな料理も、それを食べたときの表情も、見た瞬間にわかる。 でも、味は想像するしかないんですよねえ…。 想像の余地がないって言ったけど、いっちばん知りたくて知りたくて仕方ないところだけ想像するしかないっていうのがたまらなく面白い。 さらに、語りにおいて重要な声も聞くことができない。唾を飲みこむ音ももちろん聞こえない。 凄いなあ。漫画的面白さ詰め込んでるなあ。 料理における味、語りにおける音、この2つがわからないから余計に面白いんだなあ…。 なんてことを考えてもう一周読んだら面白かったです。漫画って面白いですね。
スネに傷があるような囚人たちが、年に1度の「おせち料理」をかけて自慢の飯バナをする。
そして、一番美味しそうな話をした人が、他の人のおせち料理を1つもらえるという飯バナバトル漫画。
設定がとにかく面白い。
まず、囚人というところ。
本作にも記載あるが、とにかく彼らは食事以外に楽しみがない。
別に、刑務所の料理が特段美味しいわけでもなく、なんなら白米100%ではなく麦が入ったり、貧相なものだったりする。
そんな極限状態で、昔シャバで食べ、塀の中ではなかなか食べれない料理を情感たっぷりに伝える様が、滑稽だったりする。
そして、その語る料理が、ありふれた平凡な料理なのに、心ときめく様が非常に共感できる。
たぶん、地球最後の日に食べたい料理は?
と言われて、きっと多くの人が馴染みのあるものを選択すると思うが、それに近しい感じ。
読んでて、あーこういうのでいいんだよって気分になる。
何より男くさい感じが、読んでて惹かれる。
ご飯というより、飯!って感じ。
グルメ漫画の巨匠と呼ばれるだけのパワーある作品です。