すごいの一言
※ネタバレを含むクチコミです。
読切「残響」の感想なのですが、これは書評とか紹介ではなく考察なので、読んでない人はまず本編をお読みください
本作は、主人公であるマコの心の動き、それをどう捉えるのかによって、印象が変わってくる作品のように思います
マコは、カスミについて、笑い声以外は「全部嫌い」「消えてほしい」と言い切っています
これを言葉通りに捉えると、「嫌いなら嫌いなままでいい」という、ダイチのコメントに繋がります
マコが死んでしまったからといって、好きになる必要なんて無くて、罪悪感を感じる必要もなくて、それをそのままに肯定する、という作品です
ただ、それ以外の読み方もできます
そもそも、「全部嫌い」「消えてほしい」というのが、本心なのか、という部分が問題です
だって、マコは、これまで、カスミとずっと仲良くしていたわけですし、その死を受けて、学校にも行かなくなるほどショックを受けています(ダイチは普通に学校に行ってるのに)
それに何より、その人のことは嫌いだけど、「笑い声だけ」好きなんてこと、ありえないのでは?
実は、マコは、カスミのことが大好きで、そのことを恐らく自分の中ですら受け入れることができてなくて、「消えてほしい」と思っているのでは…とも読めます
だからこそ、本当にカスミが消えてしまって、カスミの声だけが残ったのに、そのことをマコは受け入れることができない
その上で、マコは、白髪を染めることを決意します
マコがこれまで白髪染めをしなかったのは、カスミにいじってもらうためだったわけで、白髪染めは、カスミとの決別を意味します
だけど、マコは、白髪染めをしたあと、聞こえてきた近所の子どもたちの笑い声に、カスミの声の「残響」を聞き取り、作中一番の笑顔を浮かべます
カスミは、マコが白髪染めをしたら、それはそれで、そのことをいじるようなキャラクターです。マコは、そのことを思い出してしまったのでしょう
さらに、マコは、同時に、自分の、カスミに対する気持ちにもはっきり気づいてしまい、一方で、もうカスミはいないんだということも再認識して、おそらく、カスミのいるところに向かって走り出す…という終わり方なのかと思います(最終コマの「キャーッ」は悲鳴でしょう)
つまり超鬱百合漫画だったわけですね
全体を通して、「変わる」「変わらない」がキーワードになっているように思います
カスミは小さな頃から変わってない女の子
マコはカスミとの決別のために見た目(白髪)を変えようとする
ダイチはマコに気持ち(嫌いという気持ち)は変わらないままでいいと伝える
マコは髪を染めたのに、カスミとの決別どころか、カスミを好きという気持ちを再確認して、それは変わらないままでいいのだと認識する
…という解釈が可能だと思います。どうなんでしょうね
「カスミのいるところに向かって走り出す」までいくとちょっと読み込みすぎなのでは…?という気もしてます
実際には、残響を通してカスミが好きという気持ちを再確認して、勝手に少し前向きになって微笑んだだけという、エゴの固まりのような女の話だったのかもしれません!
『ガイコツ書店員 本田さん』『ほしとんで』の最旬作家が放つ鮮烈読切40P!(ビッグコミックスペリオール2023年4号)