熊本県黒川温泉。温泉旅館・新明館の長男として生まれ、新明館のために生きた後藤哲也さんの生き様を描いた作品。
竹を切り石を運びわらじを編み……ただひたすら新明館のために働く日々。
家のために身を粉にして働くのが当たり前の時代だったという側面もあるだろうけれど、日当を前借りしては仕事をサボる人も出てくるので、哲也さんは当時の価値観でも勤勉なのだと思う。

哲也さんが凄いのは、嘆いたり迷ったりしないところ。
他の町と比べて見どころがないと思えば、山を切り拓きつつじを植える。ノミ一本で岩を掘り洞窟温泉を作る。どんな木がどんな石が新明館にふさわしいかを考え、常に良いものを作り続ける。
誰に反対されても、協力を得られなくても、嘆かず迷わず淡々と働き続ける。
点滴穿石、磨穿鉄硯とはこういうことを言うのだろう。

小さな努力の積み重ねを淡々と描いているからこそ、現在へ続く歴史の壮大さを感じられた。

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漫画 黒川温泉新明館

もはや1人鉄腕DASH…! 1949年から始まる温泉旅館物語

漫画 黒川温泉新明館 柴田敏明
ぺそ
ぺそ

1949年の熊本県黒川温泉。温泉旅館・新明館の長男である主人公の哲也さん(19)は暮らしを支えるため学校を辞め、家業の他に近所の農作業や土木作業をして働いている。ちなみに19歳というのは数え年なので今で言う17歳です。 道が舗装されていない、バスが通ってない、ズックが貴重だから普段はわらじ、家族10人暮らしで家にラジオがない、林間学校の生徒たちが米を持参してくる、家族で晴れ着で百貨店に出かける…というのが当時の暮らしぶり。 家でわらじを編んだり道がまだアスファルトじゃなかったことは、父や祖父から聞いた昔の話と重なり実感を持って読むことが出来ました。 温泉を引くための配管もまだ竹で高熱に耐えられないので4・5カ月に一度新しいものに替えなくてはならず、山から竹を取ってきて節を抜いて設置するのも哲也さんの役目。 そのことについて「わしは長男じゃからあたりまえばい」というセリフがあり、山道を2俵(120kg)の米や石炭を「おいこ」で運ぶ姿とあいまって「リアル炭治郎だ…」と、なんだか感じ入ってしまいました。 https://togetter.com/li/1612718 常に自分たちの温泉を良くしようと考えている哲也さんは両親に呆れられながらも、露天風呂から見える裏山の竹を切ってツヅジやサツキを植えたり、岩肌をノミで(!)彫って洞窟温泉を作ったり…。 向上心が強く勤勉な哲也さんの姿に頭が下がる思いがします。 新明館そして黒川温泉が今後どうなっていくのか続きが楽しみです。 【現在の新明館の公式サイト】 https://shinmeikan.jp/spa/

まんがくろかわおんせんしんめいかん
漫画 黒川温泉新明館 1巻
漫画 黒川温泉新明館 2巻
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妄想エッセイ その願いマンガで叶えます

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