クセのありそうな大人百合「おとなになっても」
※ネタバレを含むクチコミです。
小学校の先生をしている綾乃は、久しぶりに立ち寄った行きつけのバーで、朱里に声をかけられる。二人は初対面ながら意気投合し、そのまま朱里の部屋へ。キスをしてまた会うことを約束する。しかし数日後、朱里のバーに現れた綾乃は「夫」を連れてきて……!? 初めての気持ちに戸惑う綾乃と、そんな綾乃に振り回されながらも惹かれる心を止められない朱里。30代半ばになってもまだ全然おとなじゃない。胸騒ぎが止まらない、少しビターな大人百合、開幕!
あやのさんが分からないながらも、流さずに自分の気持ちに向き合って一歩踏み出そうともがいている姿が素直で、とても丁寧に見えた。
思ってても口にせずに、表に出すのは不適切だろうと空気を読んで仕舞い込んで、自分でも気付かぬうちに無かったことにしてたこととか、その曖昧な中間地点とか、そんな細かな感情の機微を、言葉にして掬い取ってくれる懐の深さが志村さんの漫画にはあるような気がします。
良い面も、悪い面も、どちらも同じ温度感で描かれてある気がして心地が良いというか。
他の本でも何度か思ったのですが、お話の始まりが分かりにくくて、何度か繰り返し読んで気づくことも多く、そのたびにこういうことかなって考えさせられるのが逆に味わい深くて好きです。