曽田正人先生は『昴』と『Change!』は読んだことがあったのですが、一番の代表作である『め組の大吾』は読んだことがありませんでした。そんな中、月マガで『救国のオレンジ』がスタートしたのでいい機会だと思い読んでみました。
まず1巻から巻末の引きがすごい…!! あれよあれよという間に5巻まで読んでしまい、そのままノンストップで20巻読み切ってしまいました。なんなら全30巻だと思っていたので29巻を読み終わったとき、「えっ、ここで終わり!?」となりました。
読む前は「才能を持つ新米消防官の話だけあって、きっと才能にあぐらかいて調子に乗って取り返しのつかないような大きなミスを起こし命を救えず、それがきっかけで改心して成長するんだろうな〜」と思っていたのですが全然違いました。
さすが曽田先生。私ごときが考えるような展開にはしません。
才能(直感)で突っ走ることこそ多々あれど、大吾は要救助者を死亡させることは1回たりともない。
当然、作中で大吾は罰則を受けるんだけど、「命を救ったという一点で間違いなく正しい」という思想が根底にあって、一貫して大吾がハチャメチャな無理をして助け続けるのが白かった。(そこへ神田のように暴走行為を軽蔑する人もいて、ちゃんとバランスがとれているのもいい)
とはいえ最後のスマトラ編はアクロバット過ぎて、今まで真剣に読んできただけにどんな気持ちで読めばいいのか戸惑いました。
休暇を取り、消防の装備である「インパルス」を勝手に持ち出して先生を助けに行く行為すら正当化される。もうここまで「人命第一」を貫かれたら、もう納得するしかないですよね。人命第一だもん……官品を勝手に持ち出してもいいよね。
そしてアクロバットと言えば、20巻の後半では大吾が世界規模のヒーローになって、まさか消防官マンガを読んでてこんなインフレを目にするとは思いませんでした。まあスマトラの大火災を犠牲者ゼロで救ったら、そりゃ世界的な活躍をするようになるよね……なるんだよ。
ともかく、「人命救助を扱う物語で有りながら人死にを描かない」という点で、
め組の大吾はありふれていない。そこがすごい。
死を通じて成長するみたいなありがちな展開が一切なく、大吾が自らの特異性に気づいたり、炎へ恐れを抱いたり精神的な葛藤を繰り返すことで少しずつ成長していく。
人間の精神が生み出す熱量に圧倒される作品です。曽田先生最高!