大友克洋処女短編集
処女短編集だが最初の作品ばかりを集めたというわけではない。 巻末に収録されている大友克洋作品集によると76年〜78年の作品が多い。デビューは74年で童夢が始まるのが80年、AKIRAが82年だからそれよりちょっと前って感じ。 『宇宙パトロール・シゲマ』『大麻峡』なんかは冴えない大学生?が集まっておバカなことをするっていうコメディタッチ。『School-boy on good time』とか『任侠シネマ』は高校生の切なさを少し感じる青春系。『NOTHIN WILL BE AS IT WAS』はサイコホラー感のある感じとかなり幅が広いし、どれもそれぞれいい味わいがあって面白い。 個人的に一番好きだった『夢の蒼穹』は前線で今にも敵兵に殺されそうになっている兵士とサラリーマンを夢で行き来する話だった。 現在も双葉社から発売されているようなので手に入りやすい
大友克洋は、ダメでダラダラした若者を描く漫画家だったのだ。
それこそが、大友克洋だったのだ。
馬鹿話をしながら延々と麻雀を打ったり、暇で暇でしようがなくて山の中に大麻草を捜しに行ったり、シンナー売ろうとしてヤクザにボコられたり、なんとなく人を殺しちゃったり女を犯そうとしちゃったり、とにかく、ダメでダラダラしたクソみたいに不細工な若者たちを、これでもかと丁寧にヒリヒリと描き出す漫画家だったのだ。
小生意気なガキと、皺くちゃな年寄りを、やけにリアルに描く漫画家でもあった。
そして、「現在の漫画」のすべては「ここ」から始まり、やがて世界を変えてしまったのだ。
奇想天外社版のこの本を読んで自分は、マイルス・デイビスのLP『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』を買った。それが初めて聴いたジャズのアルバムだった。
もう一度言う。
すべては、ここから始まったんだ。