丁寧に描かれた関係性に浸れる漫画にコメントする
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花と頬

小説が好きな女の子と、音楽が好きな男の子の物語

花と頬 イトイ圭
兎来栄寿
兎来栄寿

どちらかと言えば大人しい性格の二人を軸に静かに描かれる、夏の終わりにあるような物言えぬ寂寥感漂うガールミーツボーイ。 帯で柴田ヨクサルさんが述べている通り、純文学的な作品です(なぜ柴田ヨクサルさんが帯文を寄稿したかは本文を読むと解り、ファンはニヤリとできます)。音も無く動き出す電気自動車のように物語は始まり、丁寧に丁寧に心情の揺れ動く様が描かれていきます。 心地良い時間、新しい扉を開いていく様、生じる葛藤、苦い後悔……。決して派手さはありませんが、しっとりと沁みる物語です。好きなものを媒介に繋がりを深めていくのですが、お互いに同じ物を最初に好きだった訳ではなく相手の好きなものに触れて理解しようとする、その素朴な普遍性に共感と愛着を覚えました。 しかし、あとがきによると複数の出版社の編集者から「商品として成り立っていない」と言われてしまったそうです。キャッチーさが無ければ売れ難い。事実として理解できることではありますが、それによってこういった作品が消えていき世界の物語から豊かさが喪失していくことを考えると寂しさが募りました。楽園の懐の深さに感謝です。

宝石の国

重さと軽さが同居する、命の話

宝石の国
アフリカ象とインド象
アフリカ象とインド象

大好きな漫画です。 学生の頃、この漫画に狂っていた時期がありました。 友人全員にこれを読めとしつこく勧めて、 読んだ人に対してはお前はこの漫画の何もわかってない!と浅い考察を語る最悪のオタクでした。黒歴史です。 つまり、人を狂わせるほど魅力ある漫画ということとも言えます。言えますね。 とはいえ、こちらは既に多方面で紹介され尽くした人気作でもあります。 今さら自分の稚拙な語彙でレビューしても読むに耐えませんので、 ネットの海に散乱した情報に少しだけ補足をして、読むことを迷っている方の壁を取り払えればと思います。 この漫画が話に上がる時についてくるのが、とんでもない鬱漫画だという話題。 これが読み手の1つのハードルになってしまっていると思います。もったいない! 大丈夫。救いはあります。怖くないです。 確かに取り扱うテーマは重く、展開に心が締め付けられることはありますが、この作品の魅力はそこだけではないです。 素晴らしいのは重厚な世界観の中に、ポップさのエッセンスを忘れず組み込んでいること。 (ここで言うポップさとは、いわゆる大衆に寄り添う心のこと) 会話のテンポ、 キャラの関わり、 かわいらしいジョークのセンス。 そういう要素の節々に、作者である市川春子氏の人柄を感じられます。 そしてその人柄から読み取れるのは、 この人は読者の心をズタズタにしたい訳ではないよ〜。 ということ。 きっと最後まで読み切った方なら共感してくれると思います。 苦しさの先に希望がある。 これは人間の話。命の話。生と死の話。愛の話。宇宙の話。 火の鳥超えてます。ガチ。

はなとほほ
花と頬
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