漫画も実写もいい
一時期落語はまって新宿の寄席に通ったことがありました。 独特の世界観で、ほかのエンターテイメントとは違う、そして落語家さんの力量によって話の世界は無限にひろがるように感じたものでした。 八雲師匠にほれ込んでしまった与太郎の気持ちよくわかります、演目にもよりますが生と死とそこに色気が混ざると・・・。 雲田さんの絵の雰囲気と底知れない魅力のある落語の世界観がマッチしたいい作品だと思います。
満期で出所の模範囚。だれが呼んだか名は与太郎(よたろう)。娑婆に放たれ向かった先は、人生うずまく町の寄席。昭和最後の大名人・八雲(やくも)がムショで演った「死神」が忘れられず、生きる道は噺家と心に決めておりました。弟子など取らぬ八雲師匠。惚れて泣きつく与太郎やいかに……!?昭和元禄落語心中・与太郎放浪篇、いざ幕開け!!
『ちはやふる』とか『ましろのおと』とか、最近は日本の古典芸能を題材に使う漫画が人気のようで。日本人の心に深く根付いているものの若者には縁が薄く、それがかえって新鮮に映るのかもしれません。そして同じように題材として落語を選んでいるこの作品。テレビや雑誌にも取り上げられて、『このマンガがすごい!』のオンナ編第2位にも選ばれるなど評判高く、読んでみるとそんな評価にもちょっと納得してしまいます。一般社会とかけ離れた世界に生きる人々が持っているであろう”情”の部分が色濃く出ていると言えばいいんでしょうか。ムショ帰りの主人公・与太郎はキュートだけどすねに傷もつ元やくざ。その与太郎の師匠となる冷徹な大名人・八雲は同期ですでに他界した助六の芸に思うところがある様子。そして助六の死後に八雲が引き取ったやんちゃ娘・小夏はその死の原因が八雲にあるとにらみ…。そんな人間模様が織りなす人情ストーリー。「真打に女はいない」と小夏にいわせてさりげなく時代を説明するなど、なかなか小粋でもあります。