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私、そばは大好きです。ですのでこの作品はおさえねばと勢い込んで読んだら、旗本のセカンドライフなんて想像すらしませんでした。かといって期待外れかというとそんなことはありません。そば好きが高じて担ぎ屋台の親爺になってしまった、牧野玄太郎という旗本の若隠居で元勘定方が主人公。彼がこの屋台・幻庵に顔を出す人の困りごとを解決するためにひと肌脱ぐという人情時代劇で、時代物にありがちな説教くささもなく、登場人物がわいわい楽しみながら人助けをしているのがいい。元役人だと遠山の金さんみたいな展開になりそうですが、玄太郎は見栄は気っても大暴れするようなタイプではなく、肝心なところは元同僚や後輩にお任せ。お願いするときのお土産はもちろんそば。権力乱用?もあったりして適度に力が抜けたところが良い味出してます。表紙にも描かれているそばばっかり食ってる芸奴は濃厚な玉子、端正な顔立ちの息子はほろ苦い薬味、といった風情。シンプルな話で後味よく、いつでもどこでも味わえる品。一度ご賞味ください。