喪失感に取り残された人を描いた力作
「喪失」の出口。とても上手いことを言うなと思う。 大事な人を喪った時に、実感が訪れずに悲しめないというのは、度々、漫画の題材となっている。本作はそれをガラパゴス携帯を使って、上手く表現している。主人公は母から送られてきた過去のメールを見ることで、母のいた世界に取り残されていたのだろう。そうすることで母の死の実感を薄めていた。 だからこそ未送信のまま送られなかった下らないメールに初めて涙を流す。悲しめない人の抱える「喪失の出口」をうまく描いた。とてもいい作品だったと思う
自分は中学生の時に母親を亡くしたのだけど、その時の気分にとても近くて、救われた感じがした。悲しいのは当然だけど、くだらないことも考えるし息抜きだってしたい(感情の浮き沈みが激しく、色んなことを考えるので1週間の長さが平常時とは違う)。
悲劇が単に悲劇としか描かれなかったり、「逆境」を「跳ね返す」みたいな話を読むたびに、「そういう感じでもないんだけどな」と軽い絶望を覚える。この作品は複雑な感情を複雑なまま表現していて、初めてに近い共感があった。