名無し

学生の頃、友達の家にものすごいヨレヨレのエロ本の切れ端が置いてありました。あまりにも使用感丸出しで、若干引きながらも聞いてみると、「ひと夏の思い出なんだ」と彼は遠い目をしながら言うのでした。後からわかったのですが、それは山岳部の一月続く縦走の際に持っていたものとのこと。危険な山では、水と食料が最優先。一冊まるごとエロ本を持っていくことができないので、お気に入りのページを切り取って隙間に詰め込んでいたとのことです。なんだか、エロ本の切れ端が崇高なものにみえてくるではないですか!普段の生活で、我々はすぐ物が手に入る状況にいるのだなあと思い知った経験です。
 戦争という極限状況で、何よりも大事な物資を手配する兵站を描いたのが『大砲とスタンプ』という作品です。この作品を読むと、補給線の大事さと、正論をタテに物事をうまく進める方法が同時に身につきます。
 兵站軍は、輸送や補給を主な任務とし、直接戦闘に参加することはそう多くありません。ひたすらデスクワークの連続で他の部隊からは「紙の兵隊」と揶揄されています。
 主人公はマルチナ・M・マヤコフスカヤ。アゲゾコ要塞補給廠管理部第二中隊に配属された女性少尉です。
 戦場ではしばしば、現地の状況とかけ離れた命令を、少しの不正で上手く回らせていたりもしますが、彼女はそれを許しません。たとえ食糧が尽きた非常事態だろうが、奇襲をうけた戦闘状態だろうが「責任問題ですよ!」といってかき回していく四角四面の女。実際にいればかなりイヤなタイプです。 
 彼女のその並外れたクソ真面目さと融通のきかなさが騒動の素となり、時には武器になっていくのです。
 あるとき、憲兵隊に睨まれた第二中隊は、ついに彼女に本気をださせることにします。「手を抜かず存分にやれ」といわれた彼女は、書類のつづりの間違い、書式の違い、ハンコの薄さなど、ありとあらゆる普通の人はどうでもいいことを指摘し伝票を突っ返し続けます。マルチナの言うことは言い返すことのできない正論。やがて憲兵隊の仕事はマヒしてしまうのです。ついに憲兵隊から「あの女は悪魔です!」と呼ばれるマルチナには悪意はなにもないのです。ただルールを守ることが彼女にとっての正しさなのです。
 伝わっているいるはずの話が伝わってないとか、現場でいつのまにか独自ルールができていたりとか、やたら官僚的な人間によって引っ掻き回されてしまうとか、組織である以上、軍隊も会社となにもかわりません。ガタガタしながらもなんとなく組織が機能してしまうんですね。
 戦場という極限状況でも、今の我々と変わらず命令ひとつで右往左往してしまう、そんな滑稽さがこの漫画にはあるのです。

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架空の国、架空の戦争ではありますが、戦場の後方で戦う人たちの物語です。 撃ち合い、殴り合いでなく、紙の上で戦闘をする兵站部「紙の兵隊」たちの生活が、主人公を中心に描かれています。 あらすじいわく、「ミリタリー法螺漫画」です。 主人公の母国、大公国の軍には、陸海空にくわえて、兵站が存在します。  主人公は、ショートヘアなめがねっ子・マルチナ・M・マヤコフスカヤ少尉です。 食料や衣類や武器など、必要な物資を必要なところへ届ける手続きをする兵站軍。 兵站軍の士官学校を卒業し、アゲゾコ市にある補給廠に配属されるところから、物語は始まります。 四角四面すぎる主人公が、生真面目すぎて当初は疎まれつつも、その個性を大切にされているのが印象的です。 部隊の人たちもよくみれば、みんな個性的です。そしてアットホームです。 使えるものは使えるところで、うまく使えばいいという感じがします。 トラブルに巻き込まれた場合、主人公は銃で打ち合いなどは苦手なようで、かわりにクソ真面目な知識を元にした知恵で切り抜けます。 軍隊内の事情は、パワーでねじ伏せるのでなければ、決まりで乗り切るのが効率的なようです。 読んでいて混乱したのですが、登場する国は、主人公が属する「大公国」、そして占領したアゲゾコ市でともに連合軍を組んでいる「帝国」、敵国である「共和国」の3国です。 長い戦争のせいか、どの国も疲れています。 なぜ戦争をしているのかわからないのですが、振り上げた拳を下ろすのは難しいようです。 ちなみに、物語冒頭に毎回描かれている、緻密な兵器などの紹介も圧巻です。

たいほうとすたんぷ
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大砲とスタンプ(7)
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