ロリータハウツー本ではない
ロリータ服のハウツー本では全くなかったです。着用の心得とか、立ち居振る舞いのコツとか、メイク方法とかそういうのは一切無いです。ちょっとそういうのに興味があったのです… ロリータ服をきっかけとする、主人公の気づきと成長と出会いの物語とでも言いましょうか… 登場人物の中でもカヤさんは素敵です。毎日酒場(バー)に強めの服を着てやって来てビール類を流し込んでいるお嬢さんです、昼は介護福祉士、夜はバーテン?、働き者のうえ人間の出来た素晴らしいお嬢さんなのです。主人公は偶然彼女と出会いますが、この出会いなくしては物語が成立しませんマジで。全編通して一番好きなシーンはカヤさんちにお泊まりして着せかえごっこ遊びをするとこです。うらやましいぞ。 物語は終盤小澤君を掘り下げて進んでいきますが、羽根をむしって丸裸にしてから建て直しまでの流れの無駄のなさがお見事だと思いました。中盤のSNSで主人公が攻撃される、生徒が改心するまでのくだりも、きつすぎる悪意の描写は無い(ひかえめ)なのが美点だと思いましたが、小澤君の過去と現在の描写も、つらいけど必要最低限というか、過激ではないのが良かった。 ※ここで言いたい過激っていうのは、よく広告である、見た人の興味をひくことだけを特化したような思わせぶりでショッキングで醜悪なシーンの寄せ集めのアレみたいなことです ストーリーの流れありきの、材料の1つとしてのロリータ服なんだな!と勝手に思っていたら、作者インタビューにロリータ服を描きたかったという発言を見かけて今「????」ってなっています。ロリータ服の魅力を伝える的な要素は限りなく薄かったように感じたのですが、、、、???
世間体。キャラクター。あなたはこうあるべき。そんなもんクソくらえ!
生きたいように生きることの難しさ。
しがらみに絡めとられ身動きができなくなっている人にこそ読んで欲しい。
背が高く、クールな見た目で周囲から思われるようなキャラクターを自然と演じてきてしまった主人公が、バイトのヘルプに来た人の世間体度外視の服装を見てハッとする。
着たい服を着て良いんだ、と。
かねてから好きだったロリータファッションに思い切って袖を通してみると・・。
ズシンッ!と脳髄に響いた。
誰より自分を肯定しなきゃいけないのは自分だったのだ。
そしてそれが何より難しい。
多様性の時代に突入したとはいえ、他人と違うことをするのが怖いと思う人は多いだろう、特に同調圧力が強い日本では。
なぜ、やりたいこと、表現したいことを抑え込み、息を潜め、自らの欲求を見て見ないふりして、日常を過ごさなくてはいけないのか。
自分の欲求に素直に生きた方が100倍気持ちがいいのではないか。
他人に迷惑をかけるわけでもなし・・。
しかし、世間にどう見られてしまうのか・・。
こういった悩み、葛藤を丁寧に描き、「自分らしく生きたいように生きる」大切さを分からせてくれる素晴らしい漫画だ。
まだ1巻なのでこれから、さらにどのように向き合っていくのかが楽しみだ。