ストラテジックラバーズ

汝は女狐なりや?なハーレム人狼

ストラテジックラバーズ 三色網戸。
えっちな名無し

愛人の子として日陰の人生を送っていた主人公が、父の危篤に伴い唯一の男の後継ぎ候補として、チェスで培った頭脳で愛人候補5人から毎週一人を入れ替え優秀な人材を見抜く目を養っていくという物。 しかしこれ読めば読むほど変則的な「汝は人狼なりや?」である。 ハーレムデスゲーム系作品自体は近年見かけるジャンルだが、この作品は明確に人狼を意識した設定で、複雑ではないので元ネタを知っていればかなりすんなり頭に入ってくる。 まず主人公は投票権を唯一持ち、一人の愛人候補を追放できる。 しかし集まった愛人候補は、巨大企業の後継ぎである主人公の愛人になる事を望んでいるので当然追放されたくない、そこで人狼のように1週間の会話タイムがある訳だが、ここで出るのが「色仕掛け」によるえっちシーンである。 どのヒロインも三色網戸。氏の画力が大いに振るわれ実に色っぽいのだが、どうやらどのヒロインも大なり小なり裏がある女狐のようで、メインヒロインである斑鳩はどうやら「人狼」らしく、主人公が元々寄せている好意を最大限に利用し自分以外を追放させ、自分に依存するように仕向けて行く。 しかし変則的というかあくまでハーレム物という点を大事にしているようで、非人狼ヒロインが追放されたからと言って前作「おしおきエクスキュート」後半のように空気が重くなり過ぎないように配慮していて、追放されたヒロインが復帰する展開等も有り、この辺は作者の成長を感じる。 2巻で入れ替え登場したヒロインは正に女狐で、肢体も話術も駆使して主人公を操ろうとする為、遠慮なく追放してしまえと言いたくなるようになっていて中々面白い。 後書きなどでも、あくまでハーレム物に徹し、ヒロインの艶姿で楽しませる、展開を重くするのは自分の悪癖と挙げていて、前作後半を知っているだけに作者の成長を感じさせエンタメとしてもお色気としても非常に期待している。 メインヒロインの斑鳩に関しては、詳細が明らかにされていない分、ほぼ間違いなく人狼とはいえどうにも可愛さよりエロさと不気味さが先に立つのだが、それ以外のヒロインは財産目当てにしてもしっかり人間臭く、肢体を駆使してでも成り上がろうとするやる気も感じられ、却ってそこも魅力的だし、なにより存分に画力が振るわれていて最高にえっちい。 特にヒロインの一人である読モ同級生ギャルの山田アキは、元々主人公をイジメていたグループだったのが後継者と分かった途端、手のひら返して媚び媚びな色仕掛けを仕掛けてくる姿がなんともエロく、強気の姿勢を崩していないが主人公にやり込められたり実に可愛い上、予言者ポジというか、他ヒロインの情報を集めてきたりと出番が多く、存在感的な意味で他のヒロインを食いかねないキャラに仕上がっている。 まだ2巻なので、他のヒロインの出番が増えてきたら分からないが、他もこれくらい見せ場があるならハーレム物としても期待大。

怪獣になったゲイ

人それぞれのアイデンティティ

怪獣になったゲイ ミナモトカズキ
さいろく
さいろく

大人になった今、振り返ると子供の頃は視野が狭かったことがわかる。 それは色んな生き方を知り、憧れや妄想、時には挫折なんかを味わい、知識を得て世界が広がってきたから今と比べたらそうだ、というだけなのだと思う。 LGBT(Q+)が今では自由として認める風潮があり、良いことであると思う反面、わからないものに対する人の態度までを制限するのは違うんじゃないかという気持ちもちょっとあるんだけど(強く思うわけでも議論したいわけでもないし、擁護したいわけでもないですが)これは自分がもう大人になってしまっているからに他ならない。 実際に"ノーマルではない"ことを苦にしている子たちは視野を広げる事が出来ない狭い世界に閉じ込められてしまっているのかもしれないと思うと、子供の頃の残酷な無邪気さは命に関わるぐらい大きな問題なのだろう。 最近は幸せなBLばかり読んできたんだなーと非常に強く感じる、心に刺さる作品だった。 添付は愚かな男の例としてわかりやすいシーン。最悪である。上の言い方でいうとこいつは視野が広がることも、広げる必要性も感じずに生きてきた大人になるのだろう。

どれが恋かがわからない

5股!どれも本気百合 #1巻応援

どれが恋かがわからない 奥たまむし
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

新女子大生が、入学初日に出会った5人の女性と次々に恋に落ちてしまう物語。そしていずれも両想い!という事で、第一話から大変さと甘さに脳をかき乱されたのですが……。 個性的な5人の女性が、主人公に惹かれるポイントは様々。声、手触り、匂いetc.フェチポイント多彩ですが、それぞれの性的惹かれが強く描かれて、恋というのが理屈じゃないんだなぁ、というのが分かります。 そう理由は無くても、恋は恋。 主人公・空池(そら行け!)メイは、5人の女性に同時に恋し、何なら付き合いたいと思ってしまう「人倫にもとる」状態なのですが、でも、恋が理屈じゃない、と知っている私にはそれも仕方ないことだと分かる。 色々制御できないメイは、どの人とも出会って二ページで恋に落ちる(少し誇張あり)。でも性的・恋愛的惹かれってそういうもんだよね?色々こねくり回した「恋に落ちる」表現より、この作品の"光速恋落ち"描写の方が私には腑に落ちるのです。 後半、学内でメイに群がる女性達。1巻にして大混戦!全員を好きすぎて絶対一人なんか選べないメイ、どうするんだよー!とソワソワして、いてもたってもいられなくなる感じ。 本当に 結末が わからない

真夜中の訪問者 -ハトリアヤコ作品集-

4月お薦めの解像度高め短編集 #マンバ読書会

真夜中の訪問者 -ハトリアヤコ作品集- ハトリアヤコ
兎来栄寿
兎来栄寿

注目の新鋭、ハトリアヤコさんが近年に『アフタヌーン』、『ビーム』やWeb等で発表された作品を集めた短編集です。 家賃1万円の部屋に移住したら幼馴染の生霊が現れるようになった「真夜中の訪問者」は、切れる縁の一方で、繋がる縁もあるということにしみじみと思いを馳せさせてくれます。 絶妙な距離感の高校生の日常が描かれる「根部くん干垣くん」は、自然体が気持ち良くスッと入ってくる掌編。8人しかいない野球部の試合を休んで、本初子午線を見に行くというシチュエーションが好きです。 小学校の同窓会に行くコンビニバイトの女性を描く「カタツムリ溶かす」に宿る若気の至りや歪んだ感情は、人によっては強く共感し刺さるところでしょう。 学校内カーストでは下の方でありながら、とても仲の良い友達との悲喜交交の日常が切り取って呈される「鈴木と山田。」は、それぞれのワンシーンの解像度の高さが光ります。同じクラスの退学したヤンキーの彼は今どうしているのかな……。 田舎の女子大生に生じる微妙な感情が紡がれる「花のつぼみ」には、言語化し難いところを上手く掬った『ちーちゃんはちょっと足りない』を髣髴とさせる部分もあります。 「ミモザより」は読んだ後に心が軽くなり、そしてもう一度最初から読み返してしまう物語。私も3月にミモザを買ってドライフラワーで家に飾ってあります。 「日常ポリッジストーリー」は一番最近の作品ですが、今だと「タコ○○(ピー)」を思い出さざるを得ない宇宙からの来訪者が登場するお話。読了後の爽快感がとても素敵で、更なるマンガ力の高まりも感じられる作品です。 帯には幸村誠さんの「この方の描く漫画には、人の心をかきみだす何かがある!」というコメントが寄せられていますが、良感情・悪感情どちらのベクトルにも引っ張ってくれる確かな力量があり、今後のご活躍もますます楽しみです。