稲川淳二のすご~く恐い話「血を吐く面」

ヤダなー、こわいなー

稲川淳二のすご~く恐い話「血を吐く面」 稲川淳二 (C)株式会社ユニJオフィース 瀬河美紀
マウナケア
マウナケア

あたしねぇ~こう見えて、稲川怪談っていうんですか、好きなんですよ、ええ。毎年ライブをやってるでしょ? おっかねえなぁ~なんて思いながらも、つい行ってしまうんだなぁ。でね、帰ってきて、何かおかしい……、て感じることがある。でもってよーく考えると、語りに熱中していて、ちっとも細かいところを覚えてないんだ。怖かったことは覚えてる。でもそれがどんなものだったかはまるで覚えてない……。でもねえ、これが漫画だと違ってくるでしょ。ほら、この「血を吐く面」。なんだかなぁ~オチまんまだったりするわけなんだけど、このお面の絵みたらば、あーやなもの見ちゃったなぁってなるでしょ。実はあたし、同じ内容の違う作家さんの作品を見たことがある。ところがこれがダメなんだ。まるでお面が××そのまんまで、思わずよせや~い、って叫んじゃいましたよ。ええ。あたし、ここでピーンときたんですよ。この作家さん、瀬川美紀さんの絵って、怪談向きなんだなぁ、って。ねぇ。そんな貴重な体験を夏の終わりにさせてもらいました……。はい。

かしこくて勇気ある子ども

“かしこくて勇気ある子ども”

かしこくて勇気ある子ども 山本美希
名無し

子供を授かった夫婦。ふたりは生まれてくる子供に“かしこくて勇気ある子供”になってほしいと、見本になるような世界中の優秀な子どもたちを雑誌や書籍で調べるようになる。 生まれるまでの日々は、それはそれは夢と希望に満ちていた。 子どもたちのひとりに、マララ・ユスフザイさんがいた。 以下ウィキペディアから抜粋。 『マララ・ユスフザイ(英語: Malala Yousafzai、パシュトー語: ملاله يوسفزۍ、Malālah Yūsafzay、1997年7月12日 - )は、パキスタン出身の女性。フェミニスト・人権運動家。2014年ノーベル平和賞受賞。 2009年、11歳の時にTTPの支配下にあったスワート渓谷で恐怖におびえながら生きる人々の惨状をBBC放送の依頼でBBCのウルドゥー語のブログにペンネームで投稿してターリバーンによる女子校の破壊活動を批判、女性への教育の必要性や平和を訴える活動を続け、英国メディアから注目された。 2012年10月9日、通っていた中学校から帰宅するためスクールバスに乗っていたところを複数の男が銃撃。頭部と首に計2発の銃弾を受け、一緒にいた2人の女子生徒と共に負傷した。』 このニュースは日本でも大きく取り上げられ、マララさんの名前は世界中に認知された。 まさにマララのような子供になってほしいと願っていた矢先に、かしこくて勇気があるがゆえにその主張に反発する人間に命を狙われてしまうという現実を目の当たりにして、若き夫婦は何を思うのか。

ニュクスの角灯

巻が進むごとに重厚感が増す人間ドラマ

ニュクスの角灯 高浜寛
sogor25
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舞台は明治の長崎。西南戦争で親を亡くし、叔父の家で世話になることになった少女・美世。彼女には「触れた物の過去や未来の持ち主が分かる」という神通力があった。その能力を買われて、店主・小浦百年がパリで仕入れてきた最先端の品々を取り扱う道具屋「蛮」で奉公することになった彼女の物語。 当時の長崎の風景を丁寧に表現していたり、実在の人物も登場したりして、基本的には明治時代の雰囲気に忠実な作品なのですが、美世の"神通力"という設定もあり、若干のファンタジー感を漂わせながら物語は進み、そのなかで主人公・美世の人間的な成長が描かれていきます。序盤は"神通力"のファンタジー感もあって不思議な魅力のある作品だと思っていたましたが、巻が進むにつれて美世の人間的な成長を中心とした重厚なヒューマンドラマが描かれ、確かな魅力のある作品に変わっていきました。 また、実は美世の"神通力"にはある秘密が隠されているのですが、その秘密が明かされた時に美世の最も大きな成長が見られ、更にそれが最終盤になって活きてくるという、仕掛けの巧みさも兼ね備えています。 私は単行本を1巻から追っていたのですが、美世の人間的な成長と世界観の広がりを読み取れるため、また時間の流れを作品全体から感じられ、読み終わった瞬間また最初から読み始めたくなる作品なので、ぜひ全6巻まとめ読みで読破してほしい作品です。 全6巻読了。

風雲児たち

連綿と連なる歴史

風雲児たち みなもと太郎
名無し

中学時代、あまりに田舎すぎてエロ本を入手できなかった私は、思い余って図書館で林美一先生の春本解説本に手をだしました。そこには「好色一代男」など有名作品はもちろん、もうタイトルも思い出せないたくさんの作品が紹介されていました。その中で、ひとつだけ『長枕褥合戦』という作品は覚えています。たしか、北条政子と弓削道鏡の血を引く男があれやこれやする話だったように思いますが、この作者が実は平賀源内だったと知ったときはたいそう驚きました。江戸時代にエレキテルを発明して見世物にした、色物親父ではなくて、本物のイロモノ親父だったとは…。もちろん平賀源内の功績はそれだけではありません。多才な平賀源内の具体的な人物像を知ったのが『風雲児たち』です。  『風雲児たち』の連載開始は1979年で、30年たった今も続いています。当初は幕末だけを描くはずだったのが、幕末にいたる様々な伏線を根っこをちゃんと描くため関ヶ原の戦いからはじめたという経緯があります。その結果、260年以上におよぶ江戸時代の通史に『風雲児たち』はなったのです。  そこには教科書の味も素っ気もない、のっぺりした記述では知りえなかった数多くの魅力的なキャラクターが登場しています。保科正之、田沼意次、高山彦九郎、江川太郎左衛門英龍などなど、枚挙に暇がないというのはまさにこのこと。  彼らが魅力的なのは、信念をもっている人間として描かれているからです。その信念が、個人的ものであれ社会的なものであれ、こうしたいという信念をもち、抗う姿に心が動かされるのです。江戸幕府という、全体としては250年以上も続く安定した社会には、細部では様々な矛盾や齟齬や一部の人間の犠牲がありました。変化をとてもいやがる社会の目を気にせず彼らは彼らが思う最善を尽くす…。そのような“風雲児”が描かれた物語が面白く無いはずがありません。  連綿と連なる風雲児を追っていくことで知らず知らずに江戸時代の歴史の“流れ”がわかる。そういった稀有な作品なのです。