校舎のうらには天使が埋められている

こわくてサスペンスでちょっとだけ百合

校舎のうらには天使が埋められている 小山鹿梨子
mampuku
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 第1話から恐ろしいいじめの嵐が吹き荒れ、読み進めるほど(しかもかなりのハイペースで)絶望が深まっていく。この物語に希望はないのかと思われた矢先、2巻でついに真の主人公が現れる。これまでの悪意がどろりと渦巻くホラーから、光本菜々芽という聡明で高潔な少女がクラスの悪意を束ねる"白い悪魔"蜂矢あいと対峙する構図へと変貌をとげるのだ。 (これを読み返して気づいたのですが「校舎の天では悪魔が嗤っている」の作者・蜂矢あいというのは「校舎うら」の彼女の名だったんですね)  ときに大人すら欺き利用し、勇気ある告発者をさらなる悪意で踏みつぶす。いや~~蜂矢あい、悪役として完成度高すぎて小学生とは思えない!wいっそ格好いいとすら思えてしまう。相対する光本菜々芽もイケメンすぎる!そんじょそこらのヒーローよりかっこいい…  間違いなく思うのは、「この先どうなってしまうんや!??」と頁をめくるスピードを速めるにはキャラクターを好きになるのが一番いいということ。とりわけこの「校舎うら」は、冷静に俯瞰しながら作品の粗削りなぶぶんを見とがめつつ読むよりも、思いっきり感情移入して没入しながら読んだほうが絶対に面白い。

KILLER APE

戦争と死のリアル

KILLER APE 河部真道
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

第一話読んだ。 前作「バンデット」の勢いとかキャラの強さ、圧みたいなものの描き方が好きなので、この新連載も楽しみ。 2199年。 AIや機械に頼り戦争にも人間を必要としなくなっていたが、「大断絶」が起き、文明は若干の退行を見せ、再び人の生身が必要になっているという時代。 主人公は「配信者」で有名になることを夢見ているが、復興が目の前に横たわった世間の状態では白い目で見られている。 社会が裕福で許容できる時代じゃないと立場が低そうだ。 そんな彼が兵士になるため、圧倒的にリアルな仮想現実の中で、肌で過去の戦争を体験することになるのだが、その様子がなかなか痺れる。 偶然だろうが、たった一発の銃弾が向かった先に人がいればあっさりと命は摘み取られるのが戦争のリアルだ。 戦争、死の現実感を目の前でまざまざと感じ、ちゃらんぽらんな生き方をしてきた主人公はどうなってしまうのか。 過去の戦場と未来の戦場を横断する感じになっていくのか。 「12モンキーズ」という映画で、未来では囚人が過去の戦争に参加したり、重大な事件を阻止するために過去に送られるというシーンがあって、それをふと思い出した。 映画「マトリックス」然り、圧倒的な現実感を持った仮想現実は現実とほぼ変わりない。 最近でも、VRと自覚したうえで斬首を受けた人が、体調に異変を生じてしまったという話がある。 リアルすぎて痛みを感じられるほどの仮想現実の戦場での死は、精神が死を感じ取って現実の死に直結してしまうのではないかと勝手に変な心配をしてしまった。 大作になりそうな予感がビンビンするので、ぜひ最後まで描き切ってほしい。

宇宙家族カールビンソン SC完全版

演じる家族の笑いと儚さが染みます

宇宙家族カールビンソン SC完全版 あさりよしとお
なかやま
なかやま

あさりよしとお 氏の代表作品 氏の作品を読んだことのない方に、どの作品をオススメするかと考えたら この 宇宙家族カールビンソン を挙げると思います。 80年代から00年代まで続いた作品で、初期の絵柄は THE 80年代っぽいですが、 あさり氏が80年代の絵柄を作ってきた一人だと私は考えています。 基本的には一話完結のストーリー あらすじにあるように、 宇宙船同士の事故を起してしまった宇宙の旅芸人たち 事故相手の宇宙船で生き残った赤ん坊をコロナと名付け、迎えが来ても自分の星での生活に困らないように、残った資料からその星の「家族を演じ」ます。 コロナの星は「地球っポイ星」なので、どことなくズレた日本っぽいやり取りがクスりときます。 かなり濃ゆいメンバーが出てきますが、やはり「おとうさん」が自分は好きで 彼の「過去の話」は今でも強烈に覚えています。 一話一話、ギャクテイストではありますが、全体を通して少し儚さがあります。 壊れてしまいそうな部分をみんなが必死に支えている感じが、とっても染みます。 全11巻との表記がありますが、明確に終わっているわけでは無い作品です

将太の寿司 全国大会編

将太≒ガンジー説

将太の寿司 全国大会編 寺沢大介
野愛
野愛

物語として素晴らしい。 装備ゼロの勇者が敵を倒し故郷を救う物語でもあり 闘いの果てに愛と友情で世界を照らす物語でもあり ひとりの少年が父を超えるイニシエーションの物語でもある。 関口将太くんが立派な寿司職人になるまでの成長物語、というワンセンテンスで片付けてはいけない。 関口将太が寿司を通じて人間力を高め、その清らかな心で病める人々を救う物語なのだ。 第一話から将太くんは間違いなくいい子であるが、困難に立ち向かい寿司の技術を身につけていき、人類がおよそ到達できないような高みにまでのぼりつめている。 ガンジーはピストルで襲撃され命を落とすその瞬間に、あなたを許すという意味のジェスチャーをしたと言われている。 関口将太自身を、関口将太の家族を苦しめ続けた笹寿司に対して何を見せたのか 人の心を失い修羅のように寿司を握った敵に対して何を見せたのか その答えは、ガンジーが死の淵まで提示し続けた許しの心に匹敵するものではないか。 寿司を握るという行為を通じて、ひとりの少年が神の域にたどり着くまでをわたしたちは見届けることができるのだ。 将太の寿司は創世記である。 将太の寿司は神話である。 将太の寿司は…寿司がめちゃめちゃ美味しそうである。芽ねぎ食べたい!マグロステーキ食べたい!お寿司食べたい!!! 煩悩を刺激する神話ってすごくないですか? 地球に将太の寿司が産み落とされたという事実、それがもはや神の御加護なのでは…!? 将太くんが神なのか寺沢先生が神なのかはたまた寿司が神なのかもうわからないけれども、とにかく将太の寿司は全人類に読んでいただきたい漫画であること間違いなし。 全ての人類が将太くんのように常に誰かを思えば世界は変わるのではないか。 隣人を愛せよ、隣人に寿司を握れよ。こんなご時世だからこそ愛を忘れずに生きていきたい。 ちなみにわたしが好きなお寿司屋さんは回らないかっぱ寿司です。新幹線すこ。 というわけでワールドステージ読んできます。

たっくんに恋してる! 番外編 プチデザ

子供ってやっぱり可愛いなぁ

たっくんに恋してる! 番外編 プチデザ 森尾理奈
名無し

妹大好きな小学3年生のたっくんと、おしゃまさんの3歳になる妹、たまちゃん。野球の試合ではドジをばかりして活躍できないし、怖くて泳ぎもできないたっくんですが、たまちゃんを守るために水泳教室に通うという大決心をします。ドジなお兄ちゃんにがっかりしっぱなしだったたまちゃんも、それを見てやっとお兄ちゃんの優しさに気づいてくれてホントに良かった‼︎ 上がお兄ちゃん、下が妹という兄妹は、たいていお兄ちゃんが穏やかで優しい性格、妹ちゃんが男勝りでサッパリした性格、という組み合わせが多いのですが、こちらの作品でもそのパターン。それが故にコメディタッチのギャグ漫画的な作品の中にもリアリティが感じられて、たっくんとたまちゃんが生き生きとした存在として目に写ります。たっくんの天然さ、ドジ加減、優しさ、たまちゃんのおてんばぶり、3歳にしてすでにクールな観察力、お兄ちゃんに近づく女の子へのジェラシー、それらのすべてが微笑ましくて、愛らしくて、子供ってやっぱり可愛いなぁとほっこり、温かい気持ちになります。たっくんと同じく少し天然なママと、愛情豊かなパパも仲が良いのも、とても羨ましい‼︎ 子ども好きな人や、ほんわり温かい気持ちになりたい人にオススメの作品です。