あうしぃ@カワイイマンガ
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2021/04/14
残酷な世界は二人を祝福するか?
百合作品には大きく二種類あります。一つは女性ばかりの世界で、女性同士の恋愛が当たり前とされる物。もう一つは異性愛者が多い中での同性愛を描く物。『ささめきこと』は後者です。 2020年代初頭までに百合作品は、前者の割合を次第に増やして来ましたが、理由の一つに現実世界からの「逃避」があると思います(勿論私だってそれは欲しい)。 そして『ささめきこと』は、それとは真逆の作品です。逃避を許さない。 主人公は、女子でありながら空手の猛者で、可愛さとは無縁。そんな主人公が好きになった女子も同性愛者で、その事で傷つけられた過去を持つ反面、「可愛い子が好き」と公言して主人公を傷つける。 更に二人は同性愛に理解の無い人、興味本位な人に傷つき、そして浮かれた味方・同族にもかき乱されてしまう。しかしそんな人々は決して「悪い」とは描かれません。 一方傷つきたく無くて相手に踏み込まない二人はもどかしいけれども、その大きすぎる代償を考えれば致し方ない。臆病な二人もまた「悪くない」のです。 誰も悪くないが、無理解と無遠慮に満ちた現実世界を描く、残酷な作品です。でもその残酷さは、恋のカタルシスへの道。苦しみの果てには、どんな恋愛漫画よりも大きな感慨と、本当は「悪くない」周囲の人々の祝福が待っているのです。
あうしぃ@カワイイマンガ
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2021/04/09
休むも歩むも自分で決める
仕事を失った34歳の女性、バツイチ子供と別居……その「無職さん」は、一年間「何もしない」と決めて、安アパートで一人暮らし。 この作品は物語というよりは、生活の描写をひとつひとつ積み重ねる。それは淡々としていながら、かなり心が痛くなる。 仕事の無い平穏なはずの生活は、気楽さの中に意外な程の腹立たしさ。何度も描かれる、ぼんやりした無職さんの小さな失敗。それを見てモヤッとする私も、実は同じ事を日々している事に気付けば……ああ、無職さんは、私だ。 無職さんに大きなカタルシスは望めない。小さな喜びと不幸がランダムに訪れる日々。しかし彼女は暮らしをきちんとしようとして、それが達成できた瞬間「ちゃっ」とポーズを取る。この時、妄念に満ちた私の心に、リアルな身体感覚が蘇る。これは殊の外、清々しい。 ただ普通に生きる事が難しい……無職さんはそう嘆く。独り身でも〈一人で〉生きている訳では無く、人との関わりに苦しむ事からは逃れられない。それでもなるべく自分の在りたい様に、休むも歩むも自分で決める。 そうして人生を自分の物にして脱力している無職さんの在り方は、私の肩の荷を少し、降ろしてくれた。