sogor25
sogor25
1年以上前
ヒューミント(英: HUMINT、Human intelligence)とは、人間を媒介とした諜報のこと。合法活動や捕虜の尋問等も含み、スパイ活動のみを指すわけではない。 (出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』) 肉体労働のアルバイトをしながらその日暮らしをしている、見るからに訳アリな感じの男・本田は、同じく訳アリな雰囲気の女性・姫宮が男性に半ば強引にホテルへと連れ込まれる所に遭遇する。2人が入った部屋に本田が乗り込むとそこには… という導入から始まる、姫宮が所属する"ヒューミント"を裏稼業とする組織・雨霧警備会社とそこに籍を置くことになった本田との物語。 本田と姫宮を始め、登場人物の誰もが素性の見えない中で粛々と実行される諜報活動の数々。騙し合いあり、アクションありと緊迫感と疾走感を併せ持った独特の雰囲気で物語が展開していく。 だが、1巻の最後、本田に謎の女から電話が掛かってきた辺りから様相が変わってくる。徐々に明かされる本田の過去、そして物語は本田と雨霧警備会社、そして謎の女・ハナイとの三竦みの対決構造へとシフトしていく。 誰が味方で誰が敵か分からないまま物語が進んでいく様は、ロベルタ編以降の「ブラック・ラグーン」を彷彿とさせる。ここからは私の私見だけど、アクションや知略を巡らせた頭脳戦も確かな魅力の一部だけど、この作品の一番の肝は本田の"人間性"にあるように感じている。初登場時点から存在自体が不安定な感じのあるキャラだったが、それが姫宮や雨霧警備会社との出会いによって、またハナイの接近によってどう揺れ動いていくのか、そしてその都度どのような決断をするのか、そこにこの作品の魅力が凝縮されているような気がする。 前述した「ブラック・ラグーン」もそうだけど、「亜獣譚」や「魔女と野獣」などの作品が好きな方には相性が良さそうな作品。 3巻まで読了。
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
いじめを受けるその前段階に存在する名状し難い大きなストレス。それによって不登校に至る感覚というものを、これだけ端的に言語化して見せたマンガはそうそうありません。 筆者の実体験を元に描かれた本作は、一つ一つの主人公の心理の動きに非常にリアリティがあり説得力を持って語られます。 また、心に傷を負った経験があってもちょっとした切っ掛けで自分がいじめを行う側に回ってしまう、誰しもが立場や環境次第でそういった行為に容易く及んでしまうという現実にも触れられています。 人生では多くの先生に出逢いますが、そこには自分で選べない「当たり外れ」があります。本作では良い意味でも悪い意味でも「この先生に会わなければまったく別の人生を送ることになったのではないか」という数多くの先生との出逢いと交流が描かれます。全くもって理不尽なことですが、先生は自分で選ぶことが極めて難しいのに対して人生に与える影響は絶大です。なので、先生もそれ以外の部分も含めてあまりに酷い環境にある場合は逃げることはむしろ推奨されると個人的には考えています。 かつて自分が師事を受けていた先生のことや、子供の頃の感情を読みながら喚起させられずにはいられませんでした。その時に覚えた苦味は大人になった今、子供たちに伝えていくべきものなのでしょう。 筆者は幸いなことに、大好きなドラゴンボールの作者である鳥山明先生が母親と同級生だったという縁で鳥山先生に会い、自分の描いたマンガを見て褒めてもらうという掛け替えのない経験を果たします。私も幼少期はドラゴンボールに没頭していたので、その時に鳥山先生にもし直接会えていたらどれだけ興奮しただろうと大きな共感を覚えながら読みました。 「おおげさじゃなくて 生まれてきて良かったと思った」 最終的にそんな言葉が筆者の口から出てきたことには心から安堵しました。人生は辛いことも多いですが、生きていればそうした無上の幸福を感じる瞬間も訪れることがあるものだと思います。 今現在不登校であったり、それに準じた状況にあったりする子が読めば大いに勇気付けられる部分のある作品です。そうでなくとも、様々な示唆に富んでおり一読の価値がある素晴らしいマンガですのでぜひこの機会に一人でも多くの方に読んで頂きたいと思います。