にわか2019/02/12ゆったりとページをめくって味わうちいさこという小人のような不思議ないきものを題材にしたファンタジー・オムニバス。恋をまだ知らないか、死の間際にいる人にしか見えないという設定が秀逸。小人は子供にしか見えないという言い伝えを巧みにオリジナリティに昇華させた。それぞれの話もうまくまとまっており、オムニバス特有のさりげない前後の物語のつながりも味わえる。満足度の高い一冊ちいさこの庭小玉ユキ3わかる
にわか2019/02/12WEBでも読めるよ! サウナに100倍興味を持つようになるマンガ読みきり版もネット公開されていたので読んでみた。カラーが使われているのもあり、キャッチーな導入。話としてもよくまとまっていた。ただ、これ単体だと、ちょっと『ととのう』の感覚は伝わりきらないかもなぁと思った。とはいえ、面白いのでぜひ読んでほしい。 http://morning.moae.jp/lineup/468マンガ サ道 ~マンガで読むサウナ道~(読切)タナカカツキ
にわか2019/02/12ネタバレサウナへの関心が数百倍になる日本にたった二人しかいない『サウナ大使』のマンガ家の描く、HOWTOサウナ本。 なんともいってもこの本のすごいところはサウナにめっちゃ行きたくなるところ。あんまり興味なかったのにいますぐサウナに飛び込んで、水風呂入りたい。中毒性のないドラッグと言わしめるサウナトランスとか、絶対に最高でしょ。 サウナ大使というよくわからないものの実態にも触れているのも面白い。本場のフィンランドのサウナに入りいく話がとくに堪らない。吹雪の中、サウナを目指し、マイナス20度の中での水風呂とか信じられない。カルチャーショック。そんな未知の世界の知的好奇心を存分にかきたててくれる一作。サウナに興味がない人こそ読むべしマンガ サ道~マンガで読むサウナ道~タナカカツキ2わかる
にわか2019/02/11ネタバレ58歳差。二人をつなぐ絆はBLマンガ年の差、58歳。BL漫画という共通の趣味を持つ老婦人と女子高生の話。 主人公のおばあちゃんの「おばあちゃんらしさ」をが巧みに描かれているため、BLにハマる過程が独特の面白みを持っているのが面白い。特に、残り寿命を単行本の刊行ペースで割って、「あと6巻分ってことかぁ…」と考えるシーンは絶妙な説得力があって、笑ってしまった。いい作品メタモルフォーゼの縁側鶴谷香央理
にわか2019/02/11石黒正数ファン必見。才能の原石が詰まった宝箱石黒正数の2000-2004年頃の短編をまとめた一冊。 荒さもあるが、やはり才能の片鱗を感じざる負えない。個人的にはその中の一作「カウントダウン」に注目した。どことなくそれでも町は廻っているの登場人物の原型がちらほら。話自体が特段際立っているわけではないが、掛け合いや、キャラのリアクションも小気味がよく、楽しい。こういうネタが積もっていって、探偵奇譚のようなものと結びついて、それ町は誕生したんじゃないだろうか。ジョセフィーヌぽいのもいた。フーンPresent for me石黒正数1わかる
にわか2019/02/11ポテンシャルを感じる面白い作品設定の面白さと展開の広げ方が魅力的で話にグイグイ引き込まれた。謎が謎を呼び、展開がひっくり返されるのは楽しい。惜しむらくは終盤が駆け足すぎたこと。ただ次回作のガンニバルが面白いだけあって、面白い作品を描ける作者のポテンシャルを感じる一作だった。鳥葬のバベル二宮志郎1わかる
にわか2019/02/07ネタバレ読者を引きずり込むような構成3巻まで読んだ。 スゴイ構成だよな、この漫画。母親との対立とか、絵への道への転換とか、受験生の時期にとってはすごい大きな出来事だから作品を通して、消化していくテーマのはずなんだけど、この漫画は1巻でそこらへんを大体綺麗に終わらせる。すごい急な展開なのに主人公のめっちゃストイックな姿勢に納得するし、いきなり流す涙の存在で、それが嘘くさくないと感じちゃう。 この時点でもうブルーピリオドという作品に魅了されてるんだよね。その土台があってからの藝大への挑戦。予備校での灰汁の強いけど憎めないキャラとの絡み、どれも魅力的。 あとはもう既に好きになった作品が動いていくのを見ていればいいだけってわけだ。これからもホント楽しみ。ブルーピリオド山口つばさ4わかる
にわか2019/02/07ネタバレ凄まじいポテンシャルをもってる傑作SF漫画マンバ通信から気になって読んだ。めっちゃ面白かった。 物語のあらすじは「家出をした少年が宇宙人二匹とロケットで星を巡る話」と、少年心をくすぐるものだが、「金」や「死生観」などのテーマが強く「子供向けの雑誌で連載したのか、本当に⁉」と思うくらいのブラックユーモアが飛んできたりもする。そういう意味ではたしかに大人も楽しめる(大人のが楽しめるといっても良いかもしれない) 星々での出来事もワクワクさせてくれる話が多く、ジュラシックパートをSFに落とし込んだような話や、スターウォーズ1のレースを宇宙でやったような話、注文の多い料理店のパロディを活用した狼人間の暮らす星、寿命をとらなくなった娯楽に飢えた惑星など、羅列するだけで楽しくなるような設定が多い。そして、この出来事を支えてる中身の面白さが、その星で暮らす住人がそれぞれの倫理観をちゃんと持っていることである。つまり主人公と他星の住人とのコミュニケーションの絶妙な取れてなさ具合がリアリティを担保しているのだ。いやぁ、面白い作品だった。もっと多くの人に読まれてほしい モジャ公藤子・F・不二雄8わかる
にわか2019/02/07ネタバレただただ気持ちよく振り回されてしまうやられたなぁってなるのは、やっぱり主人公の吉乃がいきなり腎臓を400万で売ってきて、札束入りの袋を深山の机に叩きつけるシーン。 序盤、吉乃はビジュアルからもヤクザの娘っていう設定からも明らかに強気で性格悪そうな女の子だろうなって思うんだけど、深山と比べると、発言や在り方が常識的。だから読者は吉乃の方に共感しながらも「案外普通の娘なのかな?」って思いながら読み進める。 だから深山のヤバさに気を取られているうちに、いきなり主人公が、「腎臓売ってきた」と紙袋を叩きつける。そりゃぁ深山も読者もシビれるわ。 深山のキャラが全然読めないのもいいし、いきなり啖呵を切る主人公はカッコいい。読者を気持ちよくノセたり、裏切ったりしながら物語を魅せてくれる。面白いなぁ…来世は他人がいい小西明日翔3わかる
にわか2019/02/07ネタバレ2巻のアプローチがとても面白い率直な感想は「みつどもえ……、いやみなみけ……いや欅姉妹の四季だ、これ!」って感じ。というのは一巻のノリは面白いんだけど、どこかで見たことあるやり取りだなぁという印象。 ただ2巻になると、ぐっとオリジナリティが出てくる。姉妹間の絆の強さや過保護な面、四女の恋愛要素など、この作品独特の色が出てくるからだ。とりわけ2巻の終わり、長女の睦によって「両親の死」が語られることで、姉妹の結束の強さの根っこが見えてくる。 作中では初夏から物語が始まり、いまは夏真っ盛り。四季というタイトルがついている以上、季節はぐるりと巡るだろう。この作品が冬を迎える時「両親の死」からチラリと見えたシリアスが訪れるのか。そうして春のような暖かさの中で物語が終わるのか。いまから先が気になって仕方がない。欅姉妹の四季大槻一翔1わかる
にわか2019/02/06生きている人間がいるめっちゃ面白かった。 ねむようこ作品はキャラにすごい惹き込まれることが多いんだけど、この作品もまさにそれ。なんというかただのキャラクターじゃなくて、本当にこういう世界が存在していて、生きているんじゃないかって信じられる。 主人公のフタバの真面目なのにどこかちゃっかりしてて、でもそんな自分に嫌悪感を覚えたり、冷蔵庫にバレンタインの余りのチョコを見つけて無邪気に喜んじゃったり、漫画に対する情熱を持ちながらも怠惰でいたい気持ちもあったり、最初はこき下ろしてた秋元さんの手の中骨が気になっちゃったり。様々な感情を持ちながら、ブレながら生きているのがいい。「こういうキャラです」って一言でいえない。そういうところに強い魅力を感じる。 最後はすごい駆け足というか、時間が飛んじゃったのだけが残念だった。ペンとチョコレートねむようこ1わかる
にわか2019/02/01ネタバレ最高にこじらせてるシスコンラブコメ主人公が姉に依存的な恋をしてる漫画。面白いのは姉がハイパー鈍感かつ弟としてしか完全に見てないところ。主人公のことを好きな幼馴染の女の子もいるけど、やっぱ主人公は姉じゃないとダメ。恋愛漫画でよく使われる細かな感情表現が、決して報われない恋へと使われることで、感情の行き場のなさが強調されて良い。 姉への依存が気持ち悪いけど、そこが癖になって続きを読みたくなる。にしても幼馴染の女の子、可愛そうだなぁ…僕は叶わぬ恋をする岡野く仔2わかる
にわか2019/01/28ネタバレ小さな町の呪いと幸福花井沢町は小さな町だ。変わった人が住んでいるわけではない。なにか特別なものがあるわけでもない。だけど、隔絶されている。 透明な膜に丸ごとすっぽりと閉じ込められた町。そこで暮らす人は、町の中からは出られない。そんな普通の人が暮らす小さな町には、法律すらも届かない。 どこにも行けない、小さな町だからこその苦しみと喜び、ちょっとした幸せ。花井沢町で暮らす様々な人の感情が瑞々しく描かれている。そして、ある女の子のバラバラに描かれた時系列が、この漫画の魅力を引き立てる。何度も読み返したくなる作品。花井沢町公民館便りヤマシタトモコ1わかる
にわか2019/01/25ネタバレ巧みな表現に目を奪われるデンパの高い塔の上で一人の少女。他には誰もおらず、近くにはゴミの山がある。話し相手は砂嵐の流れるテレビから聞こえるおじさんの声だけ。必要な物資はアマゾンが届けてくれるという謎だらけの状況。 ただ少女は「決して降りられない」ということだけを知っている。それでも少女は幸せの景色を見つけて、明るく生きようと思い、紙飛行機を飛ばす。その墜落と共に少女の視点は消えて、全ての真実を知っている地上にいるおじさんへと切り替わる。 特殊な設定の魅力もさることながら、表現も巧み。幸せと絶望を行き来しながら、その本質を考えさせてくれる。少し大味にも感じるが、たしかな才能を感じる。この作者の次回作がとても楽しみだ紙飛行機とデンパ塔のお話川崎朝木1わかる
にわか2019/01/24人の弱さを精緻に、自然に、表題作「サタニック・スイート」を含んだ六編の短編をまとめたヤマシタトモコの短編集。静かにさり気なく描写される表情や動き。六つの短編はどれも不思議な魅力に溢れている。 「妖怪」の友人だろうが、「超能力」をもった女の子だろうが、あるいは先生を手玉にとる女の子だろうが、自然と感情移入し、気がつけばヤマシタトモコの世界にどっぷりと浸かっている。なぜそうも遠い人々に感情移入させられるのだろうか。読み返すと、どの作品にも「人の弱さ」が描かれていることに気付く。つまり人の弱さを精緻に、自然に、描いている。そこでは誰もが弱さを抱えて、生きているからだ。だからヤマシタトモコの作品は面白い。サタニックスイートは、そんなことを教えてくれる貴重な短編集なのだ。サタニック・スイートヤマシタトモコ
にわか2019/01/18しみじみと、けれど陰気にならないように「アイアムアヒーロー」の花沢健吾が、亡き父のことを描いたエッセイコミックの読切。 強烈な感情表現をせずに淡々と語っているのが印象的。しみじみと回顧しているけど、陰気にならないように工夫が凝らされており、人物を猫のようにデフォルメしている。やはりいい漫画を描く父のこと花沢健吾
にわか2019/01/18鬱作品の大御所が描く、爽やかな短編集「ぼくらの」や「なるたる」で有名な鬼頭先生の初期短編集。グロやエゲツない展開でよく知られているが、この短編集では「いい話」が多い。 読後感に残る余韻のようなものはしっかりあるけど、どこかに爽やかさがある。デビュー作の「残暑」もよかったが、個人的には「華精荘に花を持って」が寂しくて美しくて好きだった。 鬼頭先生の作品を鬱で重たい作品ばかりだと思っている人にはぜひ読んでほしい。鬼頭莫宏短編集 残暑鬼頭莫宏2わかる
にわか2019/01/11ちゃんこを前に人はひれ伏すしかない力士の熱い戦い、それを支えているのは思えばなにより食事。腹が減っては戦は出来ぬという言葉が表すとおり。腹が減っては相撲はできない。主人公はちゃんこを使い、力士の胃と心を掴んで投げ飛ばす。アホっぽいけど、勢いがあって面白かった。銀 シロガネ水上あきら
にわか2019/01/11優等生から飛んでいく瞬間不良ってものに憧れてしまう時期はある。けどそれっぽいことをしても、なんだか授業のことが頭から離れない。この主人公の思考はそういうリアル感が描かれていて、共感できた。 彼のレイアップを打った時の飛翔は、そうしたこれまでの自分からも飛んでいった瞬間だったのだろう。物語のラストでは、ハーレーを知らない主人公は扉絵で、それに跨っている。それがはっきりした就職などの現実的未来には繋がっていないだろう。けど、彼にとってこの1ページはかけがえのないものとなるに違いない。そんな青春を瑞々しく感じ取れた。良作a fly boy48円3わかる
にわか2019/01/07後ろ向きだけど、背筋は伸びてる独特な後ろ向きの感性から生み出されたエピソードと語りがとても面白い。トマトの話は爆笑したし、猫のコロちゃんの話は胸にくる。読みどころしかないエッセイコミック。押切蓮介ファンは必読。猫背を伸ばして押切蓮介
にわか2019/01/07ネタバレ整のトーク、どれ好き?まるで屁理屈のようなことも言うけど、妙に人の心を揺さぶるし、本質的な話だなぁと言いくるめられてしまう。そんな彼の言動が面白いなぁと思う。 個人的には「人を殺しちゃいけないって法はない」からの「みなが人を殺したいわけじゃないから殺してない。そういうことがしたいならそういう場所に行けばいい」の切り返しが好きだったミステリと言う勿れ田村由美
にわか2018/12/21ネタバレ「ミニスカート」を奪われた女の子の話アイドルの語源は「偶像」からだったと思う。また、アイドルの「~はみんなのものです」的な台詞はよく聞く。そういう意味で考えると、アイドルって職業は「人」である前に「アイドル」みたいな意識が生まれやすいものなのではないだろうか。ファンのほとんどはそんなことは考えてないと思う。けど、中にはまさに「モノ」みたいに接するヤツもいる。 この物語は、元アイドルの女の子が過激な男性ファンにより傷つけられ、異性に対しての恐れから男っぽい格好をし、学校生活を送っているという設定が肝にある。表面的には隠しているが、異性に対しての恐れは根深い。そこには彼女が傷つけられたという事実そのものもあるが、それ以上に思い通りにしようとする男性への恐怖が描写されている。そんな彼女は、ある男の子に出会う。この物語はそうした男性への恐怖と、その乗り越えを自分でしようとする弱くて、とても強い女の子の物語だ。 さよならミニスカート牧野あおい1わかる
にわか2018/12/21少年少女の過ごすディストピア日常を描いた、傑作SF漫画謎の現象ファントムによって人類のほとんどが消えてしまった世界で、少年一人と少女三人が過ごす日常を描いたSF漫画。 めっちゃ面白い。誰もいないことをいいことに楽しく日々を過ごす四人だがが、裏には不安や恐怖がある。一方で、何気ない描写の中には幾重にも張られた伏線が……。これだけ広げた大風呂敷を見事に畳む力は、さすが吉富先生!の一言。石黒正数の世界とかが好きだと合うかもしれない。最高なのでぜひ読んでみてほしい地球の放課後吉富昭仁
にわか2018/12/21寂しい日の夜に読む漫画なんというか町田洋という作家が描く空間は、人の心象風景から紡がれた物語を描く作家という印象がある。ちょっと変わった世界なのに、そこに抵抗感を一切覚えない。むしろそういうものもあるんだと、するりと頭に入ってくる。建物が聞こえる男も、夏休みの街にいた男も、島と話していた少年もどこかにいる気がする。そう考えたとき、なんだか気持ちが落ち着く。夜とコンクリート町田洋