ひさぴよ2020/02/21本当にネコが山を登ってる〜!猫が山登り・・? またまたご冗談を… と思ったアナタ、まずは最初のページを読んでみてください。 これが証拠写真だ!と言わんばかりに、実際に山登りしているミケの写真が載っています。なんと通算60以上の山に登ったのだとか。 その上、世にも珍しい三毛猫のオスとあっては、マンガになるのも不思議ではないでしょう。 とりあえずネコが好きだから、という理由で読みましたが、何もネコだけを取り上げた漫画というわけではなく、長野で暮らす家族の物語が中心となっています。ミケはその中でマイペースに生きているだけで、山を登るようになったきっかけは、何となくパパとミケが一緒に散歩することが習慣になっただけなのです。 実に心温まる優しいストーリーになっていて、家族それぞれの仕事や病気の悩み、青春の悩みを抱えているところへ、ミケがスッと入ってくる。そして山へ登り、雄大な景色がパァーーーっと広がる光景で心が浄化されるのです。山登りねこ、ミケたきむらりゅう 岡田裕
ひさぴよ2020/02/20筒井康隆 作品群を豪華作家陣がコミカライズ1995年に発売されたアンソロ本。古本でしか持ってなかったのですが、2019年に文庫化され、さらに電子書籍化されていたとは知りませんでした。 個人的に筒井康隆作品はちょっと苦手意識があって、熱烈なファンというわけではないのですけど、それでも買うだけの理由がこの作家陣を見ればわかります。 【筒井漫画涜本 収録作品】 相原コージ「死にかた」 吾妻ひでお「池猫」 いしいひさいち「大富豪刑事」 内田春菊「ムロジェクに感謝」 蛭子能収「傷ついたのは誰の心」 加藤礼次朗「TROUBLE」 喜国雅彦「鏡と薬と正義と女」 けらえいこ「妻四態」 三条友美「亭主調理法」 清水ミチコ「傾斜」 しりあがり寿「樹木 法廷に立つ」 とり・みき「我が良き狼」 ふくやまけいこ「かいじゅうゴミイ」 まつざきあけみ「イチゴの日」 南伸坊「禁花」矢萩貴子「セクション」 山浦章「星は生きている」 【筒井漫画涜本ふたたび 収録作品】 明智抄「幸福ですか?」 いがらしみきお「北極王」 伊藤伸平「五郎八航空」 折原みと「サチコちゃん」 雷門獅篭「落語・伝票あらそい」 菊池直恵「熊の木本線」 鈴木みそ「あるいは酒でいっぱいの海」 大地丙太郎「発明後のパターン」 高橋葉介「ラッパを吹く弟」 田亀源五郎「恋とは何でしょう」 竹本健治「スペードの女王」 萩原玲二「弁天さま」 畑中純「遠い座敷」 みずしな孝之「フェミニスト殺人事件のようなもの」 Moo.念平「うちゅうを どんどん どこまでも」 山浦章「ウイスキーの神様」 以上。 なんとも、本棚に並べたくなるような本なのです。筒井漫画涜本筒井漫画涜本2わかる
ひさぴよ2020/02/20実はこれがデビュー作📷新久一家と飼い猫たちの日常を素朴に描いたエッセイ&4コマ漫画。 本のあとがきに書いてあり知りましたが、実質このネコまんががデビュー作なんですね。言われてみればワカコ酒とはどこかタッチが違うなあと思いました。(目の感じとか) はじめの4話はエッセイ風の漫画で、残りページは4コマという構成になってます。たまに斬新な角度のシーンが出てきたり、いきなり画面が狭くなったり、「おおっ!?」という場面があって、色々と試されてた時期なんだなぁという感じも味わい深いです。同時にネコへの愛も非常に感じました。 ちなみにスペシャルサンクスとして、『またタビ』の市川ヒロシ先生、『片桐くん家に猫がいる』の吉川景都先生からの寄稿ページも載っていますので猫マンガ好きは要チェックです。新久千映のねこまみれ新久千映
ひさぴよ2020/02/19『新線西部軌道』は傑作初期作品を中心に、これまで単行本未収録で長らく入手困難となっていた読切ばかりで、伊藤悠ファンにとって待望の短編集でしょう。 中でも2008年ウルトラジャンプに掲載された『新線西武軌道』は、『皇国の守護者』連載終了後に描かれた傑作と言っていい読切ですので、ファンならずともぜひ読んでほしい一作です。 話のあらすじとしては、戦争によって東京の街が巨大な外郭で隔てられた世界を舞台に、荒廃した西東京から線路を復興し、未知の壁の中へ列車を走らせるという、もうロマンの塊みたいな鉄道ドラマです。ちなみに、この本の冒頭に収録されてますので、試し読みで途中まで読めますよ。歌屑 伊藤悠初期短編集伊藤悠
ひさぴよ2020/02/19一人の零戦乗りから見た等身大の戦争エッセイ表紙とタイトルの雰囲気で、愛国的な戦争漫画なのかと勘違いしていました…。読んでみたら表紙の印象とはまったく逆で、イデオロギーも美談も関係なく、純粋に一個人が見てきた戦争体験が飾りなく描かれている作品でした。 登場人物たちの言葉使いや仕草は、あえて現代の若者文化に合わせてあって、堅苦しくなくて読みやすかったです。戦争の話は敬遠しがち、、という人にこそ読んで欲しい漫画。 零戦少年葛西りいち1わかる
ひさぴよ2020/02/08何ごとも経験した方がいい?漫画家・小山健に数々のチャレンジ企画をやらせて、その体験談をマンガとエッセイ文で、ゆるい感じに綴った本。 ざっと内容を書くと、バーに行く、サバゲー、ナンパ、ラヴソングを作る、ヒッチハイク、キャバクラ、ハロウィン仮装、女装、フリーハグ、リアルファイト、スカイダイビング…。 いざ実行に移すには恥ずかしかったり勇気がいるチャレンジばかり。作者にとって苦手なチャレンジが多い中、恥を捨てでも半ば強引に楽しむ様子が可笑しかった。また、エッセイでは後日譚が書かれ、妙に冷静な視点でやったことを振り返ってるのも面白い。 途中で、まんしゅうきつこ先生とのエピソードが少し出てくるのだけど、おそらくまんしゅう先生がこの企画やったら余裕でクリアするだろうな…と思わせてくれるバイタリティの差を感じた。死ぬ前に1回やっとこう小山健
ひさぴよ2020/01/23実におもしろいビブリオマンガ #1巻応援毘武輪凰(ビブリオ)高校…。そこは行き場のないヤンキーたちが集まる底辺不良校!と見せかけて、本を読みさえすれば入学でき授業料もタダの本好きにはたまらない学校。本を愛すヤンキー達のギャップを楽しむコメディ作品です。 特に本が好きな人におすすめな漫画ですが、とにかく一度試し読みして雰囲気の合う合わないを確認しておくのが良いです。ヤンキー文化が苦手な人もいると思うので。 どれだけ本を愛しているかで、ヤンキー同士の格が決まる世界観になっていて、強いヤツほど純文学を溺愛してたり、SF小説を極めていたり何かしらのジャンルへのこだわりがあって面白い。 格の低いヤンキーは、弱そうなやつにブッカツ(本のカツアゲ)をするなど、本好きを冒涜する行為をしがち(笑) 基本はヤンキー文化とビブリオネタをかけ合わせたあるあるネタが多いですが、読んでいて果たしてインテリジェンスが上がってるのか下がってるのか、よくわからなくなります。 一話ごとのオチで本編のストーリーに合わせた本を1冊、さりげなく紹介してくれるので、何だか得した気分になれますね。どくヤン!カミムラ晋作 左近洋一郎3わかる
ひさぴよ2020/01/06まんがでよくわかる!公務員のおしごと作者の古林海月先生が1993年〜2002年まで、県職員として働いた実体験を描いた漫画です。 最近のお役所では、非正規職員の雇用が増加し、全体の半分近くを占めているそうですから、職場事情は変化していると思いますが、それでも末端公務員の仕事の大変さは、時代に関係なく、そんなに変わらないのかもしれない…と読んでて思いました。あと公務員と聞くと、長年勤めているイメージありますけど、意外と転職も多いのだとか。 作者は、さまざまな課を経験していく中で、生活保護のケースワーカーとなり、精神的にも肉体的にも負担の大きな仕事のため身体を壊していきます。 |彡サッ(あわせて読みたい →『健康で文化的な最低限度の生活』) そして、ある事をきっかけにプロの漫画家を目指すことになるのです…。 最終章では、退職してから漫画家デビューするまでの自伝的なエピソードとなっており、これはこれでとても面白いお話。 ちなみに漫画家エピソードの中で、デビュー作の話が出てくるものの、この本には収録されていません。デビュー作の読切は「米吐き娘」の巻末に収録されていますので、もし読みたい方はそちらをどうぞ。 話が逸れましたが、この漫画が伝えているものは「公務員は決して楽な仕事ばかりではない」という点と、言われなき公務員バッシングに対しての憤りも結構込められているのではないかなあ。わたし、公僕でがんばってました。古林海月
ひさぴよ2020/01/03いい読切スペリオールのバックナンバーを読んでて、良いなと思った読切。 お財布売り場の販売員の仕事を描いたもので、作者の実体験を元にしているとのこと。なんとなく私がたまに行く「ハ◯ズ」のお財布売り場に近い雰囲気だコレ…。売り場に訪れる客層の幅広さ、商品の多様さ、意外と知られてないNG行為など、財布というアイテムが持つ特殊性が非常におもしろおかしく描かれています。(とりあえず財布を触るときは水滴や手脂には気をつけような…) 普通のお仕事マンガであればそれほど心に刺さらない話だったのですが、マンガ的な画そのものと表現が、どこか懐かしくも新しい…これはもうこの人にしか出せない味わいみたいなものを感じたので、今後もぜひ新たな作品を読んでみたいと思った作家さんでした。店番紅御ちゃん藤原緋奈子
ひさぴよ2020/01/02まんが日本昔ばなし以前📷日本の昔ばなしを、永島慎二が独自のアレンジを加えて漫画にした「シリーズ民話」の一冊。 素朴で哀しい雰囲気が、アニメの「まんが日本昔ばなし」の世界を彷彿とさせます。しかしこの作品が描かれたのは1960年代後半(雑誌はガロ)とのこと。アニメが始まる70年代以前から既に描かれていたと知って驚きました。 あのアニメの世界観はいろいろな絵本やら漫画のイメージを掬い取って構成されていると思うのですが、もしかしたら永島慎二作品も少なからず影響を与えていたのかもしれない…と思えてしまうほど何か通じるものを感じました。 (当時の時代の流れを知らないので全く的はずれなものかもしれませんが…) まぁとにかく、永島慎二の作風と民話との相性の良さは異常でした。 <収録作> うらしま/さるかに昔/ふるやのもり/つる/はなたれこぞう/かさこじぞう/げんごろうのたいこ/おむすびコロリン/野原のはなし/ゆきおんな/草笛童子/風っ子 ところどころ、現代で使われるタイトルと異なるものもありますが、ストーリー自体にそこまで大きな変更はないです。ちょうど小学校低学年くらいの子供でも読める内容ですね。ただ、「うらしま」は飛び抜けて救いが無く、後味の悪い話になってるので注意が必要です。あと「草笛童子」などは少年心にグッとくる話で良いですね。初めて読んだお話でしたが、漫画で読むことであらためて昔話の良さを再確認しました。うらしま永島慎二
ひさぴよ2019/12/30大人向け御伽話世界の古典や民話をモチーフにした全4話の短編集。 「いまさら面白くもなんともない…」と思われがちな古典作品を、 漫画界のストーリーテラー・戸田誠二(←私が勝手に呼んでる)が、現代にも通じるヒューマンドラマとして鮮やかに生まれ変わらせています。 <収録作> ロシア民話 『大きなかぶ』 李氏朝鮮の古典 『春香伝』 アイヌ民話 『金の刀』 中国の古典 『化けの皮』 奥付によると、2002年から2003年にかけ「まんがグリム童話」シリーズに掲載された読切とのこと。 グリム童話を集めた短編集「唄う骨」も別にありますので、興味のある方はそちらも是非。 どの話も出色の出来ですが、やはり表題作『化けの皮』がすばらしいです。 原典は蒲松齢の「聊斎志異」。 道教の思想に基づく、独特の世界観のある作品です。 読者が想像もつかないような展開が多く、非常に絵に落としにくい場面をマンガにするのは物凄い想像力が必要だと思うのです。化けの皮戸田誠二1わかる
ひさぴよ2019/12/27サスペンス将棋マンガ両親を惨殺された少女・安岡紫音は、犯人を見つけるべく将棋界へ足を踏み入れる…。 将棋マンガとは思えない物騒な設定ながら、サスペンス要素と将棋の相性は、そこまで悪くないなと感じた。 主人公の紫音がとても良い子なので、純粋な将棋マンガ要素だけで充分な気もする。あと、羽仁真名人が格好良しです。 作画の柔らかいタッチの絵柄の時は好きなのだけれど、ちょいちょい劇画っぽい絵になるのh、あまり合ってない演出のように思えた…。しおんの王安藤慈朗 かとりまさる
ひさぴよ2019/12/25悩みを抱えた人に何をしてあげられるかとあることで人を呪ってしまったが為に、「人の幸せを叶え続けなくてはならない呪い」を受けた男。 そして、幼い頃から人には見えないものが見え、いつまでも漫画家になる夢をあきらめられない男。 二人の悩みと葛藤の時間を描いた物語。 もし自分が同じ呪いを受けたとしたら、どうするだろうか。 たとえ魔法のような力を持ったとしても、表面的な問題しか解決できないかもしれない。 本当の意味で人に優しくするのはなんと難しく、心が痛くなる行為なんだろう。 あと、少しでも漫画家を目指したことのある人にとっては、読むのが辛いシーンの多いかもしれない。僕だけに優しい君に浦部はいむ
ひさぴよ2019/12/25「ちゃんと考えていらっしゃいますか?」価値観を揺さぶってくる執事 #1巻応援留学から帰ってきたら、家族が執事に洗脳されており、屋敷全体が主従逆転した状態となっていた───。 恐ろしいサスペンス風の立ち上がりから一転、主人公の茜と、執事である九鬼清十郎とのコミカルな掛け合いが繰り広げられる。 九鬼いわく「私に依存し、何事も私に答えを求め、最後には私の操り人形になってしまうのです。」あくまで洗脳はしていないのだと、複雑な表情で語る。うーん、意味深。 九鬼の仕事ぶりは完璧そのもので、相手が少しでもスキを見せれば洗脳できてしまうほど、人間心理を知り尽くしてそうなタイプ。一方で「友人」絡みの話題となると少年のような明るさを見せるなど、全く掴みどころのない人間なのだが、一体何が目的なのか。 九鬼の人生観が気になる。洗脳執事浅山わかび1わかる
ひさぴよ2019/12/16裁判員制度導入から10年「アストライア」とは、ギリシャ神話に登場する正義の女神。善悪をはかるために手に持った天秤が、てんびん座の元となったとされています。 裁判員制度が導入された2009年頃、(私のような)よく理解ってない人向けに啓蒙的な裁判漫画がいくつか作られていました。「サマヨイザクラ」「裁判員の女神」などがそうです。その内の一作が、この「アストライアの天秤」になります。(最近だと「イチケイのカラス」でも取り上げられていました。) 作画は中華一番!の小川悦司先生。これまで料理マンガのイメージしかなかったのでとっても意外ですが、最初見た時は劇画タッチすぎて、誰の絵か一瞬わからなかったほど気合が入っています。 緊迫した面持ちのキャラクターばかり登場する娯楽要素の少ないマンガなので、「もし自分に裁判員の通達が来たらどうすれば良いか」などと考えながらシミュレーションして読むのが良いでしょう。いつか、裁判員に選ばれる日が来るときのために…。アストライアの天秤小川悦司 竹内一郎
ひさぴよ2019/12/09まーるい緑の山手線♪📷で、おなじみの山手線。読み方は「やまてせん」か「やまのてせん」か、どちらが正しいのか?なんて知識はネットで検索すれば一発で分かるでしょうが、この漫画を読めばより身近なものとして感じられるかと。 山手線の全29駅を舞台に、駅と同じ数の29話のエピソードが入っており、1駅1話、駅にまつわる小さなドラマが、鉄道トリビアを交えて描かれます。 時代背景は昭和30年代でちょうど戦後10年経った頃。 当時の山手線を利用していた人達が、さらに過去を振り返る視点というのが、読んでいて何とも不思議な感覚を与えてくれます。 単にノスタルジックな鉄道漫画というだけでなく、苦い戦争の記憶と向き合うエピソードも少なくないのですが、物語の水先案内人・山野照美の性格が明るいので、読後に悲壮感はそこまでなく。ただ、駅にも戦争の記憶が深く刻まれていたのだ、という事は覚えておきたいです。 ちなみに山野照美のお兄さんが、山手線の運転士でして、二人の屈託のない仲の良さも見所の一つです。山野兄妹は、作品通してホント良い働きしてました。山手線ものがたり池田邦彦2わかる
ひさぴよ2019/12/03え!? 絵が下手なのに画家に?(施川ユウキ先生のタイトルをモジッてみた) この作品、雰囲気でビッグコミック連載の漫画と勘違いしてましたが、2000年代前半のスーパージャンプで連載してた作品だった。主人公が風俗嬢という設定が引っかかってましたが、掲載誌の影響もあったのかも。 「ゆきのいろ」は、絵の下手な主人公・青木ゆきが、とある画家と出会い、本格的にプロの画家として成長していくストーリーでなんとなく朝ドラのような雰囲気を感じるマンガ。画家といっても、都会的でモダンな画家の世界とは程遠い、とても純朴な感覚と、人と自然の中にある美しさを大事にするタイプの絵描きの物語。漫画の絵と、画家の絵をいかにして融合させるか、非常に難しい部分に果敢に挑まれている作品。ゆきのいろ石川サブロウ1わかる
ひさぴよ2019/11/28カラスヤサトシの上京物語カラスヤサトシ先生が、まだ駆け出しの漫画家だった頃のお話。 時期的には『COMICアレ!』や『アフタヌーンシーズン増刊』に投稿していた2000年あたりの頃でしょうか。 30歳手前で一大決心をし、会社を辞めて上京。漫画家として独り立ちすべく、右往左往しながら奮闘する日々を描いています。 カラスヤ作品お得意の、プライベートで起きたしょうもないことを面白おかしく紹介しながら、どんな大変な状況でもネタにして笑い飛ばすスタイルは、上京の苦労も吹き飛ばすほど明るいです。 ただ、父親が病に倒れてからは、とても切ない展開でした。 さすがに笑いにはせず、珍しく?真面目に正直な気持ちを込めたシーンだったと思います。 カラスヤ先生の人生そのものを応援したくなるような、素敵な一冊です。おのぼり物語カラスヤサトシ
ひさぴよ2019/11/24地味だけど堅実な面白さのあるサッカー漫画80年代後半から90年代にかけて連載していたサッカー漫画。 古くはキャプ翼、最近ではアオアシと、数多のサッカーマンガが生み出されてきましたが、この作品は長期連載だったにも関わらず、あまり知られてない名作かと。 巻数が長い上に、お世辞にも絵はサッカー向きとはいえない絵柄(失礼!)なので、サッカー漫画好きの自分もなかなか手が出なかった覚えがあります。 しかし、ふとした機会に読んでみたら、これが読み進めるほどに面白い。 主人公・青葉茂の堅実でひたむきな努力と、熱い心に引っ張られるように、気付いたら夢中になって読んでました。 スポーツ漫画でよくある「海外挑戦編」的な展開が、このイレブンにもあるのですがこの章がとにかく熱い。 サッカーで海外挑戦といえば普通はヨーロッパか南米ですが、主人公は自分に足りないものを得るために、なんとアフリカの地を選びます。 何のサポートもなく、単身アフリカに赴き、ど田舎でどうやってサッカー修行をするというのか…? 一見無謀とも思える、泥臭い挑戦の連続がイレブンの面白さなのです。 進化した現代のサッカー界の状況と比べると、やってることが違いすぎる感があるのは確かです。 でも、サッカー初心者がプロにまで登りつめる成長物語として読むのであれば、まだまだ色褪せることのない名作だと思うのです。 イレブン七三太朗 高橋広10わかる
ひさぴよ2019/11/23たのしくたくさん食べよう!たまにテレビでやってる大食い番組。人間離れした競技としか思えません。ずっと観てると、驚きとワクワクと恐怖が入り混じった畏敬の念みたいな気持ちが起きてきます。特に小柄な女性選手に対しては。この漫画はそんな大食い競技で女子高生たちが奮闘するスポ根漫画です。 たくさん食べることが何より好きな女の子春風天子が主人公で、高校生になってからは大食いをやめようと決意したものの、大食い競技の部活「食い道部」の面々に出会ってしまい、最初は嫌々ながらも次第に大食いの道にのめり込んでいきます。 てんむす(漢字で書いて天娘)という言葉は、その昔、豊穣の神への祭祀として、巫女たちが大食いを競った歴史から、現代の大食い競技として続いている設定になってます。なので参加者は女子のみ。 大食い勝負は一対一だったり団体戦といった形式の試合で、単純にたくさん食べた方が勝ちなんですが、テクニックや基礎体力を必要とする、しっかりとしたスポーツ競技として描かれているので、大食いできる身体づくりも学べます。 かわいい絵柄なので最初はもっとゆるふわなテイストかと思ってましたが、勝負所では荒々しいタッチに変わり、手に汗握る迫真の試合が繰り広げられます。わりと王道のスポ根展開が多くて、少年マンガ好きにはたまらない熱さがあります。 特に、長野女子体育大学付属との試合などは、 多くの「大食いマンガ」の中でも屈指の名勝負になるんじゃないでしょうか?全国出場までの勝ち上がり方やライバルチームの描き方は見事です。 あと、名古屋弁がめっちゃ出てくるのもほっこりします。当然、大食いの料理には名古屋メシが出てきたり、対戦相手のご当地料理だったり地域の特色も楽しめました。 ラストに近づくにつれ話にまとまりがなくなってきて、終局を感じる雰囲気になってきますが、ここまで読んだらぜひ最後まで読んでみて下さいな。わんこそば戦での、天子の突き抜けた表情は忘れられない場面だと思うんですよね。「たのしく、たくさん食べる」って素晴らしい。 自分もわんこそばの大食いにチャレンジしてみたくなりましたよ。てんむす稲山覚也1わかる
ひさぴよ2019/11/21お嬢様スクールギャグが復刊「山賊ダイアリー」の作者・岡本健太郎氏が、猟師になる以前にヤンマガで連載していたギャグ漫画。お笑いに慣れてないお嬢様同士が漫才するというシュールなノリが好きでした。単行本もいまだに持っていて、1巻以降の続きがいくら待っても出なかったんですよね。ずっと復刊を望んでいた作品なので本当に嬉しい。表紙から①の数字が消えてなくなりましたが、未収録回が追加されページ数も増え、完全なる復刊がなされました。もう感謝しかありません。とりあえず未読の人は、一話試し読みしてみて、このノリが合うか確かめてから買うのが良いでしょう。笑える子羊<完全版>岡本健太郎
ひさぴよ2019/11/20リアル一休さん!📷「一休さん」の愛称で親しまれ続けてきた一休宗純の人生を、誕生から亡くなるまでの生涯を描いた作品。一休さんといえば、頓知話が有名ですが、いずれも小坊主だった時代の説話であり、一人の修行僧となって以降は、どのような人生を送っていたのか?いろいろと知らない事だらけです。この本を読めば、生涯をかけて「禅宗」と向き合い続けてきた一休さんのリアルな姿が見えてきます。 一休さんを描いた自伝的作品は他にも坂口尚の「あっかんべェ一休」など、いくつかあり、どの作品を最初に読むか迷いました。電書化されてない「あっかんベェ〜」は、古本で買うしか無いということで、まずは小島剛夕先生の「一休伝」を最初に読んだ感想になります。 「一休伝」では、幼い一休が天皇の実子であった、という説をベースにしています。血統が良いどころの話じゃありません。劇画タッチながら、画面全体に高貴な雰囲気が漂っています。 時代は南北朝時代。 母親は南朝の家系で、暗殺を恐れ一休をお寺に預けて育てることに。 出自エピソードが語られ、坊主として修行を積むまでが第1巻。この巻で、橋やら屏風やらの有名な頓知話が登場します。 ここからが本番。 修行僧として成長するにつれ、欲にまみれ腐敗した環境に嫌気がさした一休は、寺院を飛び出します。 そして野生の中で「純粋禅」なるものを探求する”謙翁”という師と出会い、弟子入りすることになります。ここから厳しくストイックな修行の日々が続くわけですが、一休のように謙翁師の思想に感銘を受けること必至です。 師が亡くなってからの一休は、ツテを頼って高名な禅僧の寺へ入ります。そこでも下らない権力争いが横行していることに絶望します。 一休は俗世の中に救いを見出そうと、寺から町へ降りて、いろいろと理由をつけて遊びに通うことに…。 女遊びが激しくなり、ゆきずりで子ども作ったり、修行が大事だから母子は面倒見れないと言い放ったり…とクズ男になってしまい残念。 その後は偉い人に取り入って出世して、沢山の弟子を持ち、権力者になってからは、あまり感動はないというか淡々と展開します。 史実に忠実であるため、後半は読み進めても盛り上がりには欠けるのは仕方ない所。振り返ると、謙翁師と修行していた時期が一番輝いてたと思います。 全体的に堅い内容ですので、歴史、伝記モノが好きな人向けです。一休伝小島剛夕 佐々木守 水上勉
ひさぴよ2019/11/19腹話術の妙技人形遣いの少年・「橘左近」が、童人形「右近」と共に事件解決に挑む推理マンガ。 腹話術によって人形を操り出すと、性格が一変するという設定がなかなか面白く、只の人形であるはずの右近が、まるで本当に生きているかのようです。どういう仕組なんだとか、その辺は深く考えずに「右近」の存在を受け入れて読むのが吉でしょう。ちょっとオカルト的な雰囲気もある推理モノなので。 連載を開始した1995年は、「金田一少年の事件簿」(1992年)や、「名探偵コナン」(1994年)といった推理マンガブームが超盛り上がっていた時期で、このブームに続こうと少年ジャンプが送り出した推理マンガという印象が今もあります。残念ながら大ヒットとはならず、短期連載に終わってしまいました。 ただ、作画・小畑健、原作・写楽麿(しゃらくまーろー)※宮崎克という強力タッグが生み出した、独特の和風ミステリー世界は、とても記憶に残るものだったと思います。そういえばアニメ化もされてましたっけ。 全4巻。スッキリとした終わり方にはなってないので、なにかの拍子で続編企画がひょっとしてあるのではないか…と、いつまでも期待してしまう作品です。 人形草紙あやつり左近小畑健 写楽麿
ひさぴよ2019/11/14こんな将棋漫画、見たことがない!「3月のライオン」や「ハチワンダイバー」が大好きだけど、将棋経験はゼロ!という作者が、棋譜を読めるようになりたいという理由から将棋を学び始めるエッセイ漫画。 同レベルの対戦者との勝ち負けに一喜一憂しながら、体当たりで学んでいく姿が、もう可笑しくて可笑しくてしょうがない! 特に先輩漫画家(伊丹澄一&さぬいゆう氏)とのやりとりはマジで爆笑もの。 序盤こそギャグ多めですが、どんどん将棋の奥深さにのめり込んで行き、次第に真剣さを増していきます。 2巻では、将棋界の実力者達から指導対局を受け、さまざまな対局を重ねていく作者。 自身の内面を描きながら、将棋の本当の面白さに気付いていく描写に、読んでいてこちらも思わず将棋がやりたくなってしまうほどの熱量を感じました。 物語は2巻の時点で一区切りついてますが、もし続きがあるなら読みたい。 「帯の推薦コメントを羽生善治氏にお願いしたら断られた」という、あらすじのエピソードも含めて、笑いも楽しめる漫画です。こんなレベルの低い将棋見たことがない!安藤たかゆき