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あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2021/08/01
匿名で非現実な偏愛はグロテスク
登場人物の「名前」は、キャラクターのイメージ形成の重要要素かもしれないが、例えば関係性の思考実験の様な作品では、その様なイメージは必要ないのかもしれない。 この『倒錯少女症候群』は、まさにその様な作品集である。 登場人物に固有の名前は無い。大抵はA子とB子の物語。キャラのイメージは絵で充分伝わる。名前を思い出す手間が無いと、思い入れは薄まるがかなり読みやすい。 そうして描かれる短編達は、AとBの関係があって、強く求め、踏み込み、反転してゆく非現実的世界が描かれる。 ①『貴女にすべてをささげると私の眼球はそういった。』は、眼球を舐めるというフェチの強さも凄いが、その先の「視覚を分け合う」に至る強い愛着と世界観についての哲学にやられる ②『ショウケースガール』は、家猫と思しき猫と飼い主の関係性と「外の世界」の秘密の話。飼い主らしき人の感情は、動物好きなら分かる? ③『シスタス』は、声の小さな気弱妹がしっかりした姉に依存する関係性。姉は妹の「声」をコントローラーで操作するが……関係性の変化は身体的特徴から。堕ちていく姉が愛らしい……。 ④『ブンレツ・ガール』は、分裂する病気に冒された子と彼女の側にいる親友の話。オリジナルとフェイクの恋と実存を巡る物語はどこまで行っても救いが無く、それでも自己を保つのか……と悲しくなる。 いずれも歪な関係性とグロテスクな愛着に至る時が、至高の瞬間の作品達だ。
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2021/07/25
面倒な人に優しい作品 #1巻応援
『お父さんは心配性』なんて作品もありましたが、心配性・考え過ぎ・嫉妬深い人はマンガにおいては極端なコメディにされるかライバルとして冷遇されるか……あまり自分事として受け入れられない。 なんで?みんなだって、メンドクサイ人でしょ?(暴論) ★★★★★ 大学生のひめちゃんは、思考が後ろ向きで、嫉妬深い。カッコいい彼女がいて幸せそうなのに、とにかく悪い事ばかり考えて落ち込んでいる。 ひめちゃんを不安にさせない様、気遣いの出来る彼女はパーフェクト。でもだからといって、ひめちゃんが不安にならないという事は無いんだよなぁ……不安の種を見つけては堕ちて行く思考回路は同じ「重い」人間として、とても分かる。 そんなひめちゃんを普段から支えるのは、ゲイの後輩。彼とひめちゃんの対話が、とにかく面白い。 どちらかが、普通は引かれるような不安や嫉妬を吐露すると、「わかるわー」と返ってくる。その遣り取りを見ていると、「それ重いって」と突っ込む自分がどれだけ一般論に迎合していたかに気付く。そして二人の「重さ」が自分事として、沁みるように理解出来る。 基本百合マンガでありながら、不安症の二人の相互理解にも心を持っていかれる。最高な彼女がいるひめちゃんには、酷い男に引っ掛かり続ける後輩に優しくしてあげてよ……と思いました。
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2021/07/23
ベルリン・暗い部屋から外へ #完結応援
現実世界の冒険譚は、非現実的ファンタジーに比べて地味でカタルシスに欠ける反面、自分でも同じ事ができそうな、地に足のついた希望があって、私は現実世界を同じ様に歩いてみたくなる。『思えば遠くにオブスクラ』も、そんなちょっとだけ「うずっ」とする感覚が味わえる作品です。 本作は、異国の地での生活と仕事を通じて、一人の女性の「自信の無さ」がほぐされてゆく物語です。 主人公は勢いで越して来たベルリンで、同居人に背を押され、何の準備もなく行き当たりばったりの生活をし、存外いい加減なベルリンに染まっていく。 ドイツの食を堪能しながら時になんちゃって和食に挑戦したり、気候に戸惑ったりワークライフバランスを学んだりするうちに、主人公の顔が緩んでくるのが羨ましくなります。 仕事では一眼レフカメラの「レンジファインダー機」の扱いが面白い。視覚表現者として優秀な主人公ですが、とある理由で自己と周囲の視覚認識にズレがあるらしい事にわだかまる。それ故に正確さ・厳密さを求めてきた彼女が、この曖昧でままならない機材を託されての変化が、何とも興味深いのです。 頭の中の「暗い部屋」で立ち止まっている人が、外に出て(外国に行く事も含め)少しだけ離れて自分を見て、知り、楽になる。そんな地味でも大切な変化の物語は、どんな大袈裟な物語よりも私にとって切実かつ爽快なものでした。 ベルリンはじめヨーロッパの光景は美しく、食や人々の描写等、エッセイ的表現が楽しい。一コマも読み逃すのが勿体ない、何度でも読み返したい作品でもあります。
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2021/07/09
超次元的・未完の片想い
「銀河皇国」に加入し宇宙に進出した地球人類は、とある宙域を巡り二カ国間で戦争状態に突入。皇国の技術を導入した超生体兵器「翔姫」を纏い、少女達は戦場に駆り出される。 訓練中の襲撃で全滅した訓練部隊。ただ二人残された少女達の、存在と恋の物語はスケールの大きさと残酷さ、そして愛らしさに魅了される。 少女の姿を巨大化させただけの「翔姫」が武装して出撃する美しさ。気弱な主人公の成長譚とそれを遥かに超えて行く何者かの思惑。そして今の人類では遥か及ばない技術を辛うじて私達に繋ぎ止める量子力学用語。てんこ盛りの世界観は熱い。 そして、残された二人の訓練兵の「百合」関係性もまた、独特だ。 生き残ったのは、気弱な主人公を支えて来た親友。彼女は第1話で主人公に愛を告げるも、振られている。離れ離れになる二人。秘されたもう一人の自分、更に親友にそっくりな人の登場に混乱する主人公。 この関係性と物語の根幹を知る時、彼女達の思いもよらない過去と恋、そして途方もない存在理由の物語に、物凄い衝撃を感じるだろう。 これだけの大きな枠組みの物語を、3巻で収めるのは無理がある。第3巻はかなり駆け足で、正直物足りない。どこかの並行世界で30巻位の大作として出版されていて欲しい、そんな快作で、問題作だ。