あうしぃ@カワイイマンガ
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2022/09/28
奥に仕舞われた理不尽のために #読切応援
この作品を紹介する百合好きさんのツイートが流れてきた時に、ちょうど私は『おばあちゃんのガールフレンド』という台湾中高年レズビアンのインタビュー集のクラファンを応援していました。 その時に日本の高齢セクシャルマイノリティの方が「私はずっとクローゼットに、息を潜めて隠れてきた」というツイートをされていたのが、とても心に残っていました。 誰にも言えない苦しみ、切なさ、理不尽をじっと耐えて本当の自分を隠す場所としての「クローゼット」。 読切『クローゼットガール』の主人公は小学生の女子。彼女はクローゼットの中で、兄の秘密を見てしまう……その秘密の一端である、兄の同級生女子との遣り取りはちょっとハラハラしますが、その先には二人の連帯が待っている。 主人公もまた「クローゼットの住人」であったことが明かされるスリリングなやりとりと、二人がお互いを助けようとして生まれるシスターフッドに、震えが止まりませんでした。 「クローゼットの住人」と連帯するために、まずはこの作品を読みましょう……そして目の前の人への想像力と優しさを。
あうしぃ@カワイイマンガ
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2022/09/14
月の兎人は自由を求む! #1巻応援
人々はAIに全てを監視され、生活を任せ、提示された選択を受け入れる、安心で快適な人生を選んだ。しかしそんな人生を拒む個体が現れる…… とここまで書くと、なんだか『ハーモニー』みたいですね。 平凡を好む兎の遺伝子を掛け合わせた従順な「兎人(うじん)」。月で暮らす兎人の集団から逃げ出した女の子?兎子(うこ)は、地球でもう一人の兎人女子・跳(はね)に助けられ、一緒に暮らすことに。 好きなだけ肉を喰ったり、自分で好きな物を選ぶ楽しさの反面、生活はAIがやってくれなくてメンドクサイ。でも全てが新鮮な兎子は表情が晴れやか。一方、意外と寂しがりの跳が、マーキングの習性で兎子にアゴすりすりするのはとっても百合。百合ですわ……。 新鮮な異世界を楽しむ感じは『メイドさんは食べるだけ』に近い感覚も。兎型AI(劣化版)のおもちも含め、たくさんの「カワイイ」に満ちていて、最初「ハーモニーみたい」と思ったのは何だったんだ……というくらい明るく楽しいお話でした。 しかし、どこまでも付き纏うのは「兎人であることが、バレてはいけない」こと。この設定、シリアスに振れるのか、それともコメディになるのか……。
あうしぃ@カワイイマンガ
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2022/08/24
キラメキ高齢女子! #1巻応援
おばあさんがカワイイ。なんてこった、マンガでこんな体験初めてだ! ほうれい線やまぶたのたるみなどは最低限描きながら、シャンとして涼やかな描写は、ちょっとあり得ないと思われるかもしれない。でも、これは見ていて楽しい! 思えば若い女性の漫画表現だって、現実はあんなに目は大きくないし巨乳じゃないし腰は細くない。「カワイイ」は作者=読者の欲望の果てに作られた、実はあり得ない描写だと思えば、この「カワイイ高齢女性」表現もまた、作者=読者の欲望なのかもしれない。 ではその欲望とは……「年老いても輝いていたい」だろうか。 凛とした化粧品店の女性と、彼女に憧れる夫を亡くした主人公、二人の高齢女性に恋が生まれるかもしれない物語。それはオシャレと吉屋信子『花物語』を挟んで進んでゆく。 時々主人公の心に生じる、楽しく生きることを阻む夫の声。幸せだと思わされてきた自分に、本当は抑圧があったのだと気付かせてくれる女性同士の交流に、胸熱くなる。 そしてどんどん美しく、しなやかになってゆく恋する主人公。老いてからだって変わってゆける、というメッセージは、男性の私の心も明るくしてくれた。
あうしぃ@カワイイマンガ
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2022/08/03
とある出版人の戦後台湾史 #1巻応援
本作は台湾で伝説的児童雑誌『王子』を創刊した、蔡焜霖さんの人生を描いたノンフィクション。戦前の日本統治時代から白色テロ時代、そして現代の民主化した台湾までを通して描く作品は、おそらく今までにないのではないか、と『綺譚花物語』翻訳者の黒木夏兒さんはおっしゃっていました。 全四巻のうち1巻と2巻が同時発売。両方を通して読んでみると、この二冊が同時発売された意味が分かる気がします。 1巻は戦前。台湾語を喋りながら日本語を学ばされる時代を、それでも大家族の中でおっとりと優しく育つ焜霖さんの少年時代は、穏やかなタッチで描かれます。 しかし1巻末、世界は暗転します。 2巻では、謂れのない罪を着せられた、政治犯としての過酷な10年が、暗く・痛々しいタッチで描かれます。 登場する人物も皆、焜霖さんが出会った実在の人物。さまざまな出会いも、大切な人も、容易に奪われてゆく。その悲しみ……とりわけ彼らを失ったのは自分のせいかもしれない、という焜霖さんの苦しみは、巻末の一人ひとりの解説を読むと、いっそう強く伝わるのです。 失われた者や時への焜霖さんの思いが、3巻以降、どのような形になるのか……続きを待ちたいと思います。
あうしぃ@カワイイマンガ
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2022/07/29
百合は廃墟への入口
まず百合作品としては、男性が一切出てきませんがエロは多めです。ワードとして出てくる男性は一切姿を見せないので、男性を見たくない百合好きには安心の作品です。 主人公のオンナノコ好きな女子が、包帯美少女に誘われて通称「廃墟部」に入るお話。 部室のある半廃屋や活動で訪れる場所等、廃墟だらけの高校生活……なのですが、最初は廃墟よりもどうしても、女の子達のエロに引き摺られます。 廃墟に興味薄な主人公と包帯少女、先輩達や変態先生の強烈な百合にときめきながら、廃墟への思い入れや訪れた場所にまつわるエピソード等をインプットするうちに、主人公と共にふと、その廃墟を愛おしいと思う、そんな瞬間がやって来ます。 廃墟マニアの世界は「考えるな」てはなく「考えろ、感じろ」です(私が今、考えました)。 そこがどういう場所だったか、その場所で誰が暮らしていたか、何故滅びたか……それらを知ってから朽ちてゆくそこを眺めると、儚い滅びの美が何倍にも増幅される。 思い入れを知っていく事で、ある時廃墟の良さに突然気付く。その現場に読者も居合わせる、という体験が本作なんだと思います。 だからどうか、お気軽に読み進めていってください。分かる瞬間が、どこかで来ます。
あうしぃ@カワイイマンガ
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2022/07/06
生々しさは審美眼を拒絶する #1巻応援
絵を見ているだけで、体が疼く。皮膚感覚が、視覚が聴覚が嗅覚が味覚が鋭敏になる。この短編集から得られるのは、そういう体験だ。 いつもの心地よいイラスト体験……白く弾む肌、サラサラした触感、大きな目の愛情表現からは遠い。時に辛い。しかし目を惹く。見るのを止められない。 丁寧に生々しさと向き合った者しか得られない感覚が、心の奥底に残る。 物語もリアリズムに貫かれる。誰かの価値判断を挟まない、どうしようもない物語。絵でも物語でも、美しいものを求める心を拒絶して、そうして絶対的な生の実感を与える。 生半可な審美眼では得られない、恐ろしい強度がここにはあった。 ●裸のマオ…貧しい中学生を美術教師がモデルに誘う。ひどく痩せたマオの体、古い家の質感。まともではない話なのに誰をも責めたくない不思議。百合度★★★★★ ●きしむ家…ボロアパートの大家は、住人の母娘の男性事情をただ見てるだけ。ボロさが音で切実に伝わる。百合度★(男注意) ●あつい皮膚…重度のアトピーの女子は、図書委員の女子の家に呼ばれる。ボロボロの肌の質感はこちらにも痒さを充分に伝える。ラストが重すぎて…百合度★★★ ●推しの肌が荒れた…推しのアイドルのイラストがバズった女子。推しへの想いが増すほど推しの肌荒れを描いてしまい…実は描く方もアトピー。様々な点を踏まえて丁寧に読みたい作品。百合度★★★
あうしぃ@カワイイマンガ
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2022/06/25
女×女の校内活動百合短編集(百合の日2022記念④)
はっとりみつる先生といえば現在『かいじゅう色の島』で重めの百合を、『綺麗にしてもらえますか』では女性同士の様々な友情を描き、また「つぼみ vol.1」への寄稿や『ショコラ (2) 社会人百合アンソロジー』のカバーイラスト等、百合作品を量産しているわけではないのですが百合親和性の高い作家さんです。 そんな先生が『ケンコー全裸系水泳部 ウミショー』から『さんかれあ』の時期までに発表した百合短編集が、この『コンチェルト』です。 「部活動(生徒会含)」縛りのオムニバス。生徒同士から教師×生徒まで。エロ成分高めですが、星やポップな擬音、ミュシャ的枠表現で明るい画面。そして女子同士の恋を肯定する物語は負から正への振れ幅が大きくて、とても気持ちよくドキドキできます。 ●第1話は幼馴染のギター×ピアノのデュオ。演奏が評判の二人は卒業式での演奏を依頼されるが、恋の行き違いで……。 ●第2話は弓道部のエースに恋する後輩。強いはずの先輩の「体格コンプレックス」は後輩にとっては……? ●第3話は調理部女子ハーレムを作る女教師が、好みの生徒をお持ち帰り?……これが1番ヤバい内容。魔法のスパイス、危険過ぎる。 ●第4話は美術部のレアキャラ先輩と遭遇した後輩。才能に惚れた後輩に、先輩は一度限りのモデルを申し込むが……モデルって……。 ●第5話は生徒会の会長と書記の同棲ライフ。とんでもないところを偶然母親に見つかってからの、駆け落ち!