東京マウントガールズ~女たちのコロシアム~

マウント、それはゆずれない戦い

東京マウントガールズ~女たちのコロシアム~ 星野スミ
六文銭
六文銭

自分が他人に誇れるポイント(マウントとれるポイント)を、カードにして、カードバトルのように展開される様は、コミカルなのですが、実際やっていることはエグい感じが読んでいて楽しい作品でした。 友達同士でそんな練習なぞしてたりしますが、 ホントに友達なのか?と思いたくなることもしばしば。 しかし、SNSみていると、誰と、そして何のためにそんなことやっているのか不明な人いますよね。 特にツイッターとか。 どこどこ大学出身(大体、偏差値高い) どこどこ住み(大体、東京23区の高級っぽいとこ) どこどこ業界勤務(大体、高給とりなとこ) そして、モテる、モテない などなど なんか、疲れないのかな~?  ネットでそんなことしてないでマンガでも読もうぜ! と自分なんかは思っちゃうのですが、 この本を読んで、どうしてそんなことをするのかわかりました。 そう、皆、自分の心を守るために必死なんです。 そうでもしないとやってられない現実と、 自分のイヤな部分と向き合うために必死なんす。 本作はそんなことを教えてくれました。 まぁ、正直、現実でそういう会話には加わりたくはないですけどね。

Jドリーム

Jリーグ開幕30周年。あとがきだけでも読むべき

Jドリーム 塀内夏子
名無し

自分は2006年のドイツワールドカップ辺りからなんとなくサッカー観戦を続けていて、「日本代表が出場していないワールドカップ」を経験したことがない世代だ。なので、この作品で描かれるようなJリーグ開幕当時(1993年ごろ)の「ワールドカップなんて夢のまた夢」というような空気感が正直ピンとこないというか、本当にそんな感じだったのかな?と思うことがままある。 あったわけだが、「前作ではワールドカップを目指すなんてキャラクターに言わせることは出来なかった」という1巻の作者あとがきを読んで当時の雰囲気をズシンと感じた。 まだ読み始めたばかりで偉そうなことを言うのもあれだが、「今となっては」というのは未来からの視点であって、30年後にどうなるかなんて誰にもわからない状況(当たり前だが)で描かれたのが本作というところに重みがある。 自分が当時の空気感にピンときていなかったのは、裏を返せばこの30年間で日本のサッカーが「ワールドカップなんて夢」から「ワールドカップは出れて当然(そこで勝てるかどうか)」に急激に成長したことの証明でもあり、それはまさにドリームなんじゃないかなと、読み終わる前からすでに感動し始めている…というようなことをメモっておきたくて書きました。

母親の娘たち

ズバズバと斬り合うようなシスターフッド漫画「母親の娘たち」

母親の娘たち 樹村みのり
むらの
むらの

専業主婦の上野舞子は、同居の実父母の分も含めた家事を一手に引き受け、忙殺される毎日です。 夫の高男との間にふたりの子どもにも恵まれ、幸せなはずなのに、どこかが、何かが、満たされない。 そんなある日、疎遠にしていた中学生時代の友人、水島麻子に連絡を取ったことから物語は動き始めます。 「好きな人、いるわよ。 男の人ではないけれど」 独身のイラストレーターである麻子の恋愛事情を問うと、返ってきたのはこんなカミングアウトでした。戸惑いながらもそれを受け入れる舞子と麻子は頻繁に会うようになります。 麻子の想いびとは舞子ではなく、ふたりの間に恋愛感情は生まれません。 けれど会うたびにふたりの会話は深いものになっていき、心をえぐるような言葉を投げかけ合う時さえあります。立場が違うからこその優越感、または相手への嫉妬心もあるようです。ここまでズケズケ言い合える友だちがいたら心強いような…いや、恐ろしいような。 そんな丁々発止とも言えるやり取りの中で、ふたりは自分の心の奥底に潜む知らない方が幸せだった真実に気づきます。舞子は、資産家の母に建ててもらった広い家に暮らす自分は、ひとりの自立した人間ではなく、「母親の娘」でしかないことに。そして麻子は、望むように愛してくれなかった母への想いから、女性を求めてしまうという自分の幼児性に。彼女もまた、母という存在に囚われたままの「母親の娘」だったのですね。 1984年連載の作品ですが、舞子と麻子の会話は「専業主婦VS独身キャリアウーマン」の典型のような、今でも十分に通じるものもあります。 昔から人の言うことに大した変化はないということなのか、樹村みのりさんがとても新しい目を持つひとなのか。 さて、舞子と麻子は「母親の娘」だけの自分から脱却できるのでしょうか。 この人間臭いふたりの結末を、是非見届けていただきたいと思います。 (正直、舞子の選ぶ道は共感できないのですが…)

海辺のカイン

悩む百合作品がお好きなあなたへ「海辺のカイン」(百合の日2022応援)

海辺のカイン 樹村みのり
むらの
むらの

母との関係が上手くいっていない展子が新しい街で出会ったのは、おひとりさま女性デザイナーの佐野さん。年上の女性への憧れのような淡い気持ちが、いつしか… 打ち寄せては引いていく波のように、静かにこころを寄せていくふたりの女性の様子が淡々と描かれます。 百合作品に何を求めるか、は読者によって様々だと思います。私が求めるのはズバリ「悩む女性」。 女だからこその生きづらさを抱え、茨の道と知っても自分と同じ身体を持つ女性を愛してしまう。その懊悩に胸を熱くさせているひとりです。 お互いのこと、親のこと、仕事のこと。展子も佐野さんも悩みます(いや、佐野さんも悩んだんだと思うんですよ…)。だから私はこの作品をとても上質な百合作品だと感じていますが、百合が主題ではなく、ジェンダーに悩む少女が自分を受け入れていく話なので、いつの時代でも「刺さる」ひとはいるのでは? ふたりの結末は苦いもので、男性も多少話に絡んできます。 けれど、読後感は海風のように爽やか。(人によって違うかも…) 奥付を確認してみたら、発表年は1980年! これを40年以上前に描いた樹村みのりさんは凄すぎる! 展子が自分と自分の身体を愛せるようになっていれば良いな、と心から願います。