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『ひとりの夜にあなたと話したい10のこと』から2年。久々のカシワイさんの新刊です。
………………沁みます。
美しい絵を眺めているだけでも、ここではないどこかへと旅立つことができて幸福を得られます。ただ、カシワイさんの作品は選ばれる言の葉もまた素敵なのが大きな魅力です。
「こんなにさ 美しいものが世界に既にあるのに描く意味って何だろうな
しかも時間が流れればほとんど忘れ去られる」
といった問い掛けに対する描き方。
「雨音は
雨粒が地上で何かと出会ったときたてる音だ
雨音に耳を澄ませるとここにいる手触りがするんだ」
といった、世界の切り取り方。
凪のように静かに、極めて静かに紡がれる物語ですが、普段刺激されない心の奥底の部分にまで沁みてきて感情を揺り動かされます。
読んだ後には、読む前より今自分がいる世界が素敵でかけがえのないものであるとすら思わせてくれる、意義深い一冊です。大好きです。
「107号室通信」「光と窓」のカシワイ最新作。大切なものをわかちあう、かけがえのない日々ーー。やさしい眼差しで描かれる老人と少女、真心の物語。(全ページオールカラー)