星の子どもたち 三星たま短編集

清新な才気がきらきら光る短編集 #1巻応援

星の子どもたち 三星たま短編集 三星たま
兎来栄寿
兎来栄寿
ハルタコミックグランプリ受賞作品である「星の影」を始めとする、新鋭・三星たまさんの8作品を収録した短編集です。 「ひなた家」 「スター・ドリーマー」 「学生ランダ」 「青春フィート」 「魔法使いと弟子」 「星の影」 「涙に隠す」 「ゼラニウムの影」 と、タイトルを並べるだけでも何となく作風が見えてくるのではないでしょうか。ファンタジックなお話が多く、そしてどの作品にもきらきらと星が飛ぶように感情が弾けるシーンがあります。 とにかく三星たまさんの絵が可愛いのが最大の美点で、ペンネームのデザインすら流れ星を模していて可愛く、優しい雰囲気もあいまって読むとぽわぽわと宙に浮かぶような気持ちになれます。 個人的には「スター・ドリーマー」の社会で負った疲れが癒されるところ、「学生ランダ」での熱い学ラン語り、「青春フィート」のコンテンツで結ばれた甘酸っぱい関係性、「星の影」のヒロインのエグいほどの可愛さなどが好みです。 余談ですが、紙版の装丁がとても良いです。デザインも含めて絵の可愛さを何倍にも増幅させる、とても良いお仕事です。ハルタ系の作品はアンケートハガキもかわいいので、紙で揃えたくなりますね。 気に入った方は同時発売の連載作『夜の名前を呼んで』もぜひ。
ノラ猫の恋

濃密なストーリーで最後はしっかりまとまる良い全2巻

ノラ猫の恋 長野香子
nyae
nyae
Fellows! で連載してる時に読んでいたけどなぜか結末を知らなかったので改めてコミックスで読んでみた。正直、連載時は絵柄がそんなに好みじゃないなと思って読んでいたけど、今はとくに気にならなかった。 主人公の女子高生・ななが、失踪した父親・宗一郎を探しに東京から青森まで出向くと、そこで同じく父親を探している後輩を名乗る男性・サワと、元恋人を名乗るオカマ(あえてここではこう呼ぶ)・キヨシと出会って…という話。 ななの父親・宗一郎がどんな人間だったのかは少しずつ少しずつ明かされてゆきながら、しかしそれぞれが持つ宗一郎と過ごした記憶は三者三様で、人物像が固まらないまま進んでいく。 なぜ宗一郎は消えたのか、サワは何者なのか、などミステリーな要素もありつつ、都会にはない田舎独特な空気感も鬱陶しいくらいにリアルに描写されていると感じます。とくに、物語が進むにつれ変化していく3人の関係性が読みどころ。 最初に結末まで知らなかったと書きましたが、こんなに全2巻でしっかり濃密なひと夏の出来事を描いた作品とは知らず、もっと早くちゃんと読んでいたらよかったなと思いました。あまりコンスタントに作品を発表しているイメージがない作家さんですが、最近青騎士に読切が載っていたりしたので今後またいろんな作品が読めることを期待したい。