あうしぃ@カワイイマンガ
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2021/02/20
駄目プロ絵師と世話焼き腐女子
最初タイトルを見て、メンヘラ的内容なのかなぁ、と思ったのですが、そこまで重い物は無かったです。 〈不安定さん〉は、プロのイラストレーター。締め切りに追われ、筆が乗らず、自信も持てなくて……と、クリエイターっぽい苦しみに、布団を被って落ち込むかソシャゲに逃避。その上極度のコミュ障で、打ち合わせの外出すらままならない。 そんな不安定さんと同居する〈しっかりさん〉は、かなり年下のOLで腐女子。世話好きの彼女は同人活動に勤しみながら、不安定さんを支える。 構図としては『2DK、Gペン、目覚まし時計』が近いですが、不安定さんはかえちゃんがコミュ障な感じ、と言うと、その救いの無さが伝わるでしょうか。一方しっかりさんは奈々美ちゃんよりずいぶん幼く見えても、甲斐甲斐しいのは似ている。 不安定さんを叱咤激励しつつ、つい甘やかし、お世話することに喜びを見出し、そして男装した不安定さんにときめいてしまうしっかりさん。腐なのにちゃんと百合しててよろしい! 同居に懐疑的な家族が出て来るのですが、それに対するしっかりさんのアンサーは、なかなか度胸があって、これが推しへの愛なのか……と感激のラストでした。
sogor25
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2021/02/06
悪意の介在しない"たった2人だけ"の日常 #1巻応援
サラリーマンの定井光臣は自らの命を絶つために山の奥深くに足を踏み入れていました。 彼がしめ縄の巻かれた大樹の側を死に場所に選んだそのとき、高い木の枝に縄を掛けようとする少女を発見します。 「彼女が首を括ろうとしている」と咄嗟に思った彼はその少女を助けようとしますが、実はその少女は単に干し芋を作ろうとしていただけでした。 ただしその少女・アエカは自分のことおただの人間ではなく、その土地の山の神に嫁入りしたため800年間生き続けている"八百比丘尼"(やおびくに)だというのです。 この作品はそんな2人の出会いから始まる異類婚姻譚のような物語です。 『ホーキーベカコン』を描かれていた笹倉綾人さんの新作。 仕事の多忙さに疲れて死を決意した定井でしたが、天真爛漫で朗らかなアエカに接するうちにいつしか生きることに対し希望を見出していきます。 一方のアエカも、山の神が去り、元いた村も滅び、150年もの間たった1人で過ごしていて、久々に接する人間であり、謎多き彼女にも優しさを見せる定井に徐々に絆されていく様子が描かれています。 作中で描かれていく、悪意の介在しないたった2人だけの日常は何気ない日々ながら心に染み入るものがあります。 ただこの作品、2人の日々を描くにはやや変則的な導入をしていて、それが今後の物語にどう関わってくるのかも気になるところです。 1巻まで読了
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2021/01/30
役を生きる、私が生まれる。
恋が分からない侑と、彼女に初恋を覚える先輩・燈子、そして燈子の親友・沙弥香。彼女達の心は、難解だ。 恋を知る私は、恋が分かない侑に感情移入しにくい。燈子の完璧さが隠す物も見えないし、沙弥香の燈子への心もどこか胡乱だ。 侑に甘えながら心を開き切らない燈子。燈子を受け止める侑の優しさ・苛立ち・変化。二人を見る沙弥香の複雑な心情。それを表現する彼女達の言葉は、時に鋭いが時に遠回り。 相手の事は思い遣れるのに、自分の心は掴めない三人。そのモノローグを追ううち、私は彼女達の本当に言いたい事を、未だ形にならない心を、考えずにはいられなくなる。 まるで人の複雑な心に踏み込む舞台の脚本の様な、彼女達の心理描写。そこには私を考え込ませ、よろめかせる強い引力がある。 ☆★☆★☆ 物語は、彼女達の心の変遷と生徒会劇の製作とをシンクロさせて進む。元々は燈子が自分の「人生の役」を完成される為に仕組んだ生徒会劇。図らずも燈子の内面と重なってしまった台本を巡り、三人の心は絡み・切迫し・圧縮されていく。 燈子のために侑が望んで変更した結末。そこに込められたメッセージを受け取った燈子は、舞台で役を生き切った時、「人生の役」から解放されていく。 舞台の完成と、燈子の新生。それが同時に表現される時、難解だった心情はシンプルになって私の心に届く。6巻まで積み上げた先に広がる光景は、凄い創作物を見た喜びと、燈子への祝福に満ちていて、脳が焼けつくような多幸感で煌めいている。 凄い創作物を見た時に、新たな発明品の目撃者である事と、純粋に描かれた内容に感激する事は、両立する事もあるし、そうで無いこともある。そして『やがて君になる』は、確実にそれらが両立する作品だ。 切ない人達の心の解放と新生を描いた、心に残る創造物が、創られ届けられた事に、深く感謝したい。