怪盗レシピ

作っちゃう凄い人たち

怪盗レシピ 若林健次
名無し

味わった料理を再現するとなると当然だが 味覚や料理知識・経験・技術がいずれもハイレベルで 備わっていないと出来ないわけで、 チェーン店のメニューから老舗名店の味まで そっくり再現してしまうトモくんチュウさんは とてつもなく凄い人だと思った。 きっちりと同じ原材料を使って作るわけではないので、 あくまでもそっくりな味にする、ということだろうけれど、 それでも凄いというか、むしろそれのほうが凄いかも。 それと自分がこの漫画を読んで好印象を強く感じた点が二点。 一つは、各有名店の味をあっさりと再現して見せながらも、 トモくんやチュウさんに、けして素になった料理を軽んじたり、 こんなのたいした料理じゃないから、みたいな 自惚れているとか奢っているとかの感じが全く無いこと。 それぞれの素メニューを尊重しつつ、 味の再現のチャレンジを真剣に楽しんでいる感じがイイです。 もう一つはSガキヤのラーメンの話。 漫画の中でチュウさんが 「中部・東海の中高生の誰もが青春を  共に過ごしたソウルフードよ!」 と言っていますが、私も東海地方出身なので まさに同感。 ただし、あくまでも青春時代の思い出補正があるから 美味しく感じる味であり、だれもが食べて絶賛するような 味では無いと思っています。 ところが名古屋飯が話題になったアタリからか、 Sガキヤのラーメンをやたらと絶賛する食レポとか 多いんですよね。 そういう絶賛食レポとか見るたびに、 なーんか違うんだよなーという想いを感じて いたんですよね。 この漫画のSガキヤ回は、そんな私の想いを ジャストミートした内容でした。 (残念ながら恋バナ的思い出はSガキヤには私はありませんが) 多分、作者の若林先生もそこまで考えて Sガキヤ回のオチを描いてはいないでしょうけれど、 自分としては、あーSガキヤのラーメンを美味いと思う 中部東海の中高生達の心理までもしっかり再現しているなあ、 と感じて嬉しくなってしまいました(笑)。

僕×スター

異色のボクシング漫画?

僕×スター 肥谷圭介
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

『ギャングース』『マーダーボール』の肥谷圭介先生新作! ある程度は読まないと何の話か分からなそうだけど、最初のカラーページとタイトルからしてきっとボクサー漫画に違いない!“巨弾拳闘新連載”だからきっとそう! けど、異色!始まり方はあまりに異色! いじめられっ子と思われる高校生が駅で不良に絡まれるかわいい女子高生を助けるよう命じられヤバそうな奴らから助けようとするが・・。 主人公の力は果たしてラッキーなのか?それともセンスの塊なのか!? いつボクシングをやってくれるのか!? 基本的に逃げてるだけにしか見えないが・・? 話がどう転がっていくか既存のボクシング漫画と違いすぎてずっとワクワクしながら読めちゃう! 何をやってもうまく行かないこんな世の中で、平凡で友達もいなく才能もなく兄は引きこもりでどうしようもない毎日を過ごしていると思っている彼にはおそらくボクシングの才能があるのだ、それもとびっきりの! このなかなか分かりやすくは才能を自覚させない焦らしてくれる展開がたまらない。 普通は1話目で自覚してスタート切りますもんね。 普通は、主人公が不良だったり強さに憧れだったりがあったりしますもんね。 それがないんだなー。いいなあ。 代わりに、主人公のずば抜けたしぶとさと図太い根性を提示してくれる。 物理的に「戦う」ことが日常にほとんどなくなってきた社会だからこそ、戦う状況が起きる必然を話の流れで持ってきてくれているので、すごく違和感ないのと、戦いが単純な肉体の暴力だけじゃないというのも魅力。 現代的な武器としてSNSを使うのがいぇーいという感じ! ラッキーパンチなのかそうではないのか、見る人が見れば分かる! 血が沸く!肉が踊る! これからの展開が楽しみすぎます。 タイトルは『僕xスター』 僕がスターダムにのし上がる話でしょうきっと! スペルが「BOXSTER」なので、誰が見ても分かるように、X(エックス)はカケルの記号としても使われていて、「僕」と、星のスター「STAR」とボクサー「BOXER」を混ぜた造語でまたいいタイトルですねー。 順調に行けば2020年2月末に発売かも?とのこと! https://twitter.com/hiyagoose/status/1206424738320408576?s=20

ワンナイト・モーニング

「朝ごはん」という名の最後の審判

ワンナイト・モーニング 奥山ケニチ
いさお
いさお

「ワンナイト・ラブ」というテーマがあります。恋人でない男女が一夜限りの関係を持つ。一夜限りであるがゆえに激しくて、はかない。だからドラマが生まれるのです。 本作は、そんな男女の特別な夜ではなく、その翌朝に2人がともにする朝ごはんを描く短編集です。 夜って不思議な時間です。世界が暗がりに沈むと、人は社会的動物であることから解放されます。大いに食べる、大いに飲む、大いに遊ぶ… 自分の本能に従って生きることを許されるのです。 そして、男女が2人になったら… 夜は時にその暗がりに紛れて、2人の背中を様々な形で、半ば強引に押してくれます。ずっと言えなかった想いを伝えることができたり、大切な人に救いの手を差し出す勇気を持てたり、はたまた体の関係を持ったり… しかし、再び朝は来るのです。そして、2人が朝最初にともにする行為が、「朝ごはん」です。 朝ごはんを自分のために、あるいは他人にために作り、そして食べる姿。それは、暮らしをともにする人にしか普段は見せない、無防備で、かざらなくて、現実的で、そしてあたたかな生活感にあふれたものです。 そんな朝ごはんの食卓でそれぞれの一夜を振り返りながら、おいしいね、とか、眠いね、とか、とりとめのない会話を紡ぐ。 そんな時間の中で、日の光に強く照らされながら、2人は試されるのです。 わたしたちは、特別な一夜のおかげで少しの間だけつながれた、かりそめの関係なのか? それとも、昼の世界をともに生きていける、かけがえのない関係なのか? 朝ごはんとは、ある特別な一夜を過ごしてしまった2人の関係を試す、神聖な最後の審判なのです。 卵雑炊、ハニートースト、コンビニの肉まん、梅干しのおにぎり…本作の描く朝ごはんはほんとうにおいしそうで、あたたかで、リアルで、彼ら彼女らの生活感にあふれています。 そんな朝ごはんが、2人の関係に先がないことを暴いてしまうなら、そのはかなさに想いを馳せる。 朝ごはんが2人の明るい未来を予感させるなら、お互いを見つけることができた2人を祝福する。 「朝ごはん」から人の関係の機微に心うばわれる、すばらしい作品です。 ぜひ、ご賞味あれ!