課長島耕作
改めて読んで感じる 島耕作の真の魅力
課長島耕作 弘兼憲史
六文銭
六文銭
社会人1年目の時、尊敬していた先輩に勧められたマンガがある。 「ゴルゴ」と「ブラックジャック」そして、この「島耕作」である。 ゴルゴとブラックジャックは、まだわかる。 どんなに辛いミッションでも、卓越した技術とプロ意識で達成させる姿勢を学べるからだ。 ひるがえって、この島耕作はどうだろう? 当時の自分は、前者2つよりも、日和見というか、なんともご都合主義だなぁと感じてしまった。 有りていにいってしまうと、 関係をもった女が抱えている問題のキーマンで、彼女の助けを借りて自体は好転してく という展開が多い印象だった。(実際多い) 主人公としても魅力が薄く、なぜこれを推したのか疑問であった。 あれから10年経った今、ふと思い出して再度読み直してみた。 もう、目からウロコであった。 ゴルゴ、ブラックジャックよりも見劣りしない確かな魅力が島耕作にはあったのだ。 それは、、 ・個人として卓越した能力をもっていないこと ・誰にも嫌われず、多くの人に好かれることで周囲から助けられる存在であること ・結果、組織(チーム)を率いることで大事をなすこと という点で、多くのサラリーマンにとって大変参考になることだと思う。 サラリーマン、というか、自ら事業を起こしている人でもない限り、 組織に帰属する人間は一人で何かをするなんてことはない。 仮に、一人でやったとしても、大きなことはできない。 島耕作は、場面場面で色々な人と出会い、もれなく彼を支える存在となる。 彼自身も、励まし、助け、結果として人に好かれる。 それが過去から連続していくと、大きな流れをつくっていくのだ。 そこに気づいた時、後に社長まで上り詰める彼の器の大きさを感じ取れたのである。 ゴルゴやブラックジャックのようなスバ抜けた能力のあるプロフェッショナルではない。 むしろ能力としては一般的なサラリーマンなので、いたって平凡だ。 だからこそ、真似るという意味での学ぶことが、前者二人よりも多いと思う。 自分はそう思う。 なにはともわれ、10年越しで読んだ島耕作に真の魅力を感じたおっさん一匹、ここにあり。 とりあえず社長の令嬢(隠し子)を探して、よろしくすることからはじめようと思う。 (結局、何も学んでない)
Y氏の隣人
いままでの人生に影響あったかもしれない
Y氏の隣人 吉田ひろゆき
ひさぴよ
ひさぴよ
中学生の頃に出会って、今でもたまに読み返す漫画。この漫画に登場する無数の人生が、20年以上経っても自分の中で物事を判断するときの支えの一つになっているかもしれない。読み終わってふと我に返ると現実の自分を見つめることができるので、メンタル弱くなったら読む、御守りみたいな作品。 作品を少し紹介すると、1988年から2002年までヤングジャンプで連載していた現代のお伽噺風のヒューマン・ドラマです。 悩める人間たちのもとに、胡散臭い神様や天使・悪魔といった存在が現れ、謎の秘密道具を与えては、人間たちの運命を大きく変えていく・・・という1話完結型の短編漫画で、「笑ゥせぇるすまん」に近いテイストです。喪黒福造みたいな際立った不気味さはありませんが、Y氏の隣人には、ザビエールをはじめとしたバリエーション豊かな妖しげなキャラクターが揃ってます。 作者・吉田ひろゆき氏は、元銀行員という異色の経歴を持っており、これがデビュー作になります。作品には、銀行員時代に見てきたと思われる人間模様が至るところに登場します。(余談ですが矢口高雄も元銀行員) 悩みやトラブルの原因で一番多いのが金銭関係だったり、 神様が渡すアイテムにしても、無限に使えるわけではなく、使用する度に「貯金」や「利息」といった制限が必ず付いてまわります。 そして人間の善行・悪行を「積み立て」として捉えて、その勘定が合わなくなったときに破滅が訪れる。 まさに因果応報!という感じで大好きな世界観なのですが、 この作品の凄いところは、「自分は、善人になるぞ!」と意気込んで善行を積んだとしても、必ずしも思っていた通りの結果にはならない、というところ。 この不条理さと、因果のバランス関係がほどよくて、人生ってヤツは一筋縄ではいかない…と読む度に思わせてくれます。ハッピーエンドになるのか、バッドエンドになるのか、一話一話のオチを予想しながら読むのも一興。 1巻から読み通すのは時間がかかるので、まずは「Y氏の隣人~傑作100選~」から読んでみては。
妻をめとらば
バブル絶頂期の若者の恋愛観を描く
妻をめとらば 柳沢きみお
マウナケア
マウナケア
この作品の連載が始まったのはバブル絶頂期。そして主人公・高根沢八一は証券会社の営業マン。そんな華やかなりし時代の花形職業という浮ついた設定なのに、話はどんどん陰鬱になっていく。あの時代のサラリーマン漫画にしては異色の作品。しかしながら当時の若者の恋愛観がしっかり描かれていて、そんなところがヤングサラリーマンには人気だったと記憶しています。テーマはタイトル通りの理想の結婚相手探し。八一はさまざまなタイプの女性と付き合うのですが、うまくいかずに破局、の繰り返し。なぜダメなのか、その答えは読者にはよくわかるように描かれていて、逆に劇中の八一はそれに気づかないという、なんとももどかしいストーリーが延々と続きます。八一の恋愛下手っぷり、そして八一に関わる女性たちの行動。恋愛に対する価値観が変わりつつあった時代の中、まわりはそれに乗っかって成長していくのに、八一は変わることができない。いつの時代もこういう人っていますよね。こういう側面だけ見ると人間ってあまり変わっていないのかもなあ。30歳前に結婚で焦る、ってことはさすがになくなってきたけれども。