放課後ていぼう日誌

部活で始める、釣り道楽。

放課後ていぼう日誌 小坂泰之
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

本作の舞台のモデルは熊本県葦北郡芦北町。県南部の海沿いの町。 広い空、美しい海、誰もいない堤防。 そこで女子高生達が釣りに興じる……。 この空気感、例えば『ゆるさば』や『東京のらぼう!』のような、爽快でゆったりした気持ち良さがある。 父の故郷に引っ越して来た、女子高生の鶴木陽渚。手芸が得意で生き物大嫌いな彼女だが、『ていぼう部』の部長に半ば強引にていぼう部に入部させられる。 昔よく遊んだ同学年の夏海、2年の大野を加えた四人の部活は、堤防側のプレハブを部室に(これがまた、憧れの秘密基地感!)平日の無人の堤防やサーフ、川などで活動する。 部活での釣りは、手軽なものが中心。 釣りにガツガツしない部長も、釣りガチ勢の大野も教え上手。初心者の陽渚に釣らせるため、部長は様々な策を(悪巧みしながら)考え、陽渚にミッションを与える。 苦手な生き物に卒倒しつつ、毎話新たな釣りの喜びと、魚の美味しさに目覚める陽渚は本当に楽しそう。 部活という枠組みは、釣り人にとって意外と嬉しいかもしれない。みんなが知識を持ち寄り、上手な人が初心者に教え、部の備品として道具を共有する。時にみんなで同じ魚種を狙い、時に分担してその日の食材を集める。なんかいいな……。 釣り以外の話題も、着衣泳、環境問題などの真面目要素、そして夏海とのテスト勉強や陽渚得意の手芸回と充実。キャラの性格が出ているエピソードに、ぐいぐい読み進めてしまう。 陽渚が釣りに夢中になっていく過程を追いながら、生き物嫌いとどう折り合いをつけるのか……若干心配だが、5巻でまだ夏休み前。これからもっと成長する、はず!

スローループ

フライフィッシングと女子の友情問題

スローループ うちのまいこ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

近年数多い「釣り女子漫画」。大抵の作品は様々な釣法を紹介してくれるが、この『スローループ』という作品が他と違うのは、 「フライフィッシング」 これがメインである点だ。 しかも最初が「海フライ」。 マニアックすぎる……。 そんなマニアックな釣りを亡き父に教わった女子・ひよりは、突堤で料理が得意な女子・小春と出会う。互いの親の再婚で姉妹となった二人は、釣りと料理を通じて仲を深める。 ★★★★★ この作品では、「釣り」と「女子の友情」の微妙な問題が描かれている。 ひよりは人見知り故、孤独に釣行していた。 また、ひよりの親友の恋は、ひよりの父が亡くなった時、海に独り居るひよりの側にいなかった事に後悔を残す。 彼女達は小春の積極性に触れ、変化していく。そのストーリーは確かに「小さな春」のような暖かさだ。 そして釣り船屋の次女・小学生の二葉の悩みに、前向きになったお姉さん達が力を貸す。 二葉は釣りや外遊びが好きだが、そのせいで周囲の女子との関係に悩み、自分らしさを押し殺してしまう。それに対してひよりと恋が提示した解決法は、彼女達の変化と優しさを感じさせ、胸熱くなる。 女子には理解されにくい「釣り」という趣味を女子が続けるには、孤独に極めるのも良いだろう。だがもし、同性の「釣り仲間」がいたら……それは意外と楽しいかも。だからちょっと声かけてみようよ、と明るく誘うこの作品、とても優しく心に響く。 それにしてもフライフィッシング、女子の釣りとしては合っているかもしれない。 何と言っても生き餌が要らないのが大きい!毛針を色々揃えたり、自作するのも楽しいだろう。釣れなくてもじっと待つことはなく、常に考えポイントを変えて動き回るのも、飽きが来なくていい。(尤もサビキ釣りなどの爆釣の興奮には敵わないかも……と作中でもあったけれど) 2巻までに突堤、管理釣り場、キャンプ場、釣り船、ときて、3巻いよいよ渓流へ……ここからが本番!?

課長島耕作

改めて読んで感じる 島耕作の真の魅力

課長島耕作 弘兼憲史
六文銭
六文銭

社会人1年目の時、尊敬していた先輩に勧められたマンガがある。 「ゴルゴ」と「ブラックジャック」そして、この「島耕作」である。 ゴルゴとブラックジャックは、まだわかる。 どんなに辛いミッションでも、卓越した技術とプロ意識で達成させる姿勢を学べるからだ。 ひるがえって、この島耕作はどうだろう? 当時の自分は、前者2つよりも、日和見というか、なんともご都合主義だなぁと感じてしまった。 有りていにいってしまうと、 関係をもった女が抱えている問題のキーマンで、彼女の助けを借りて自体は好転してく という展開が多い印象だった。(実際多い) 主人公としても魅力が薄く、なぜこれを推したのか疑問であった。 あれから10年経った今、ふと思い出して再度読み直してみた。 もう、目からウロコであった。 ゴルゴ、ブラックジャックよりも見劣りしない確かな魅力が島耕作にはあったのだ。 それは、、 ・個人として卓越した能力をもっていないこと ・誰にも嫌われず、多くの人に好かれることで周囲から助けられる存在であること ・結果、組織(チーム)を率いることで大事をなすこと という点で、多くのサラリーマンにとって大変参考になることだと思う。 サラリーマン、というか、自ら事業を起こしている人でもない限り、 組織に帰属する人間は一人で何かをするなんてことはない。 仮に、一人でやったとしても、大きなことはできない。 島耕作は、場面場面で色々な人と出会い、もれなく彼を支える存在となる。 彼自身も、励まし、助け、結果として人に好かれる。 それが過去から連続していくと、大きな流れをつくっていくのだ。 そこに気づいた時、後に社長まで上り詰める彼の器の大きさを感じ取れたのである。 ゴルゴやブラックジャックのようなスバ抜けた能力のあるプロフェッショナルではない。 むしろ能力としては一般的なサラリーマンなので、いたって平凡だ。 だからこそ、真似るという意味での学ぶことが、前者二人よりも多いと思う。 自分はそう思う。 なにはともわれ、10年越しで読んだ島耕作に真の魅力を感じたおっさん一匹、ここにあり。 とりあえず社長の令嬢(隠し子)を探して、よろしくすることからはじめようと思う。 (結局、何も学んでない)

浜咲さんなら引いている

東京「釣魚」女子高生!

浜咲さんなら引いている 瀬戸内ワタリ 水谷ふみ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

東京臨海部は、その人工的な姿の足元に、意外なほど豊かな自然を宿している。 運河や海沿いの公園で水面下を覗くと、壁面にはごちゃっと貝類が貼り付く。大河川の河口には水際に蟹やら海老やらを見つけられる。栄養が豊富で、魚影も濃い。ボラが跳ねるくらいの事は、日常の光景だ。 そんな東京臨海部のあちこちに出没し、釣りをする女子高生、浜咲さん。黒髪ロングのお人形のような彼女は、釣り道具を剣道用具に偽装し、周囲に憧れと謎を振りまきながら、一人マイペースに釣行する。 都会の風景と女子高生→分かる。 そこにプラス、釣り→意外と良い! 釣りは自然の遊び、という概念を軽く覆してくれるこの三者の取り合わせ。というより、こんな都会の足元に、管理されない生の自然がある事への驚き、惧れ。そこへ果敢に飛び込んでいく小さな浜咲さんの図は、萌えるというより、燃える! 浜咲さんの釣りは、都会に残された自然への、冒険なのかもしれない。 様々に工夫して都会の水辺を攻略していく、浜咲さんの釣行記&クラスメイトとの不器用な交流、そして何で周りに内緒で釣りをしているのか……その可愛い理由もお楽しみに! 「(魚が)きた……ぎゅん!!」の表情に、こちらも思わず食い付くぜ!

いいなりゴハン

いやホルモン多すぎ〜!

いいなりゴハン 森繁拓真
nyae
nyae

最強の姉・東村アキコを持つ漫画家・森繁拓真は、姉と編集の言われるがままにグルメレポ漫画を描くように指示される。 はじめは姉が店を決め、姉と編集と三人で食べに行き、レポートをするというスタイルだったが、ご存知の通り東村アキコは超多忙。そのうちに店だけ指示されてひとりで行かされたり、時には「たまにはお前が店決めろ」と無茶振りされたり…本書の趣旨の通り、いいなりゴハンだ。 他のグルメレポ漫画と違うのは、料理ジャンルに偏りがあること。バランス良く色んなジャンルのお店を紹介!という気持ちは微塵もない事が読むとわかるはず。 しかしそれで成立しちゃうのは東村アキコの力だと思う。たとえ連続でホルモン屋を紹介されても、全部美味しそうだから行きたくなる。 あとは、広くて濃い人脈を使ってゲスト作家も多数呼ばれている。弟の方も清野とおるや押切蓮介など癖の強い方面の作家と仲がよく、それによりマンネリせずに2冊いっきに読み切れる。 一部を除きお店情報もちゃんと載ってるので、単純に美味しいお店を知りたいという人にもおすすめできます。 個人的には、弾丸で韓国旅行に行くエピソードが好きで、本気で韓国まで焼き肉とフライドチキンを食べに行きたくなりました。近々実現させる!